【日経新春杯】4度のケガを乗り越えて──。再度の復活Vを目指す8歳ヴェルトライゼンデ
公開日:2025年1月15日 14:00 更新日:2025年1月15日 14:10
骨折、屈腱炎、両前浅屈腱炎に。屈腱炎は走るがゆえの故障
競馬サークルに「無事是名馬」の格言がある。
能力が多少劣っていようとも、ケガなく無事に走り続ける馬は名馬であるという考え方だ。
裏を返せば、サラブレッドは故障との戦い。速く走ることを可能とする馬は勝利に近いが、比例して走る速度が上がれば上がるほど、筋繊維や腱、靭帯などに負荷がかかってくるからだ。四肢の前後左右のバランスを極力、均等にし、故障の少ない馬づくりを常にしているのが牧場、トレセンでのホースマンでもある。
この日経新春杯に出走するヴェルトライゼンデは、兄に菊花賞馬ワールドプレミアがいる血筋で、新馬→萩Sのデビュー2連勝からGⅠホープフルS②着。能力の高さは折り紙つきでもあった。ただし、走るがゆえに脚元の故障が多い一頭でもある。
一度目は、③着と好走した日本ダービーの後。骨折が判明した。戦列に戻り、秋の神戸新聞杯(②着)、菊花賞(⑦着)、年明けのアメリカJCC(②着)と3戦した後に今度は屈腱炎が判明した。1年4カ月の長期休養を余儀なくされたが、5歳となった復帰戦の鳴尾記念で鮮やかな勝利。ロングシュートを決めている。その後もジャパンC(勝ち馬ヴェラアズール)で僅差③着と実力を見せ、明け6歳となった2年前の日経新春杯で2度目の重賞タイトルを手にした。
山あれば、谷あり。順調かと思われた矢先に3度目のアクシデントが襲った。同年の大阪杯(⑨着)後に今度は両前浅屈腱炎を発症した。右回りの競馬では右手前で走ることが多い癖ゆえの反動が両前脚に出てしまったのだ。またも1年超と戦列を離れることに。7歳となった昨春のエプソムC(⑨着)でカムバックし、秋には毎日王冠を目指していたが、放牧先で右前肢に熱感(屈腱炎)が見つかり、その休養を延ばすことに。
「8歳でも若々しい。本来の感じが戻ってきています」(橋口調教助手)
今回は7カ月半ぶりの一戦となる。
「帰厩後は順調です。プールを併用し、普段も坂路で、脚元に高負荷をかけないように。とにかく脚を冷やしてケアし、調整してきました。8歳とは思えないくらい若々しさもありますね」
4度目の長欠明けも、担当の橋口助手は手応えを感じている。
「良化がスローだな、と感じていたエプソムCは、競馬でも動き切れなかった。久々が影響していた感じでした。そこよりは動きも良く、本来の感じが戻ってきています」
8歳といえば、3冠馬コントレイルが頂点にいた世代だ。そのクラシック3戦すべてを走った現役馬はこのヴェルトのみとなった。ハンデ59・5㌔とはいえ、ベテランの意地、不屈の闘志で再び大きな舞台へ──。
レースへ向けての最終追い切りはあす16日に行われる。