GⅠ常連騎手はドバイ遠征中! 人にもビッグチャンスがある今年の高松宮記念(ネットオリジナル)

公開日:2023年3月22日 14:00 更新日:2023年3月22日 14:59

 今年の高松宮記念は、波乱ムードに満ち満ちている。

 確たる主役馬がいないのがその要因。GⅠ勝ち馬でいえば、グレナディアガーズ(21年朝日杯FS)に、昨年のこのレースの覇者ナランフレグ。もう一頭がピクシーナイト(21年スプリンターズS)の3頭だけ。他の15陣営は初GⅠタイトルを狙っている。

 馬だけではない。騎手もそう。みんな「チャンスあり」と目の色を変えている。実際に、名を挙げる確率の高いGⅠでもあるからだ。要因となっているのがドバイワールドカップデー。日本馬がこぞって参戦することで、今年はコンビを組むJRA騎手も渡航。川田、坂井、武豊、三浦、吉田豊にルメールの6名がドバイに渡った。さらにもうひとり。福永の引退で、もうひと枠、空きが出た。

 実際に昨年からのGⅠ25戦では、川田、ルメールが3勝し、坂井が2勝。武豊、福永が1勝だから4割を占め、また、近年の高松宮記念で言えば、川田、福永が各2勝ずつ。鬼の居ぬ間の大殊勲が狙えるわけだ。

 2年前は松若がモズスーパーフレアが①着繰り上がり。デビュー7年目にして栄誉を掴み、昨年は丸田がナランフレグで制して、苦節16年目で涙のGⅠ制覇となった。この形が近年の高松宮記念の特徴ともなっている。

 人にスポットを当てると、今年の18頭の鞍上で、最もGⅠを勝っているのはメイケイエールの池添。重賞94勝のうち、27勝のビッグタイトルで、勝てばもちろん、馬自身が初GⅠとなり、そこに池添自身の腰椎破裂骨折からの復帰後初GⅠVという見出しが間違いなくつくから、気合の入る一戦となっている。「中身の部分では完成の域に達してきた」がメイケイ評だった。

 続くのは、ベテラン・岩田康。重賞109勝は手綱を取る中で最も多く、GⅠは池添に次ぐ25勝。このレースでは13年にロードカナロアで制しているが、GⅠを最後に勝ったのは18年の天皇賞・春(レインボーライン)だから5年もGⅠのお立ち台はご無沙汰。昨年の②着馬ロータスランドには期するものがあるだろう。

 そして、9勝でピクシーナイトの戸崎、ナムラクレアの浜中。勝てば、前者は21年秋華賞(アカイトリノムスメ)、後者は19年の日本ダービー(ロジャーバローズ)以来。もちろん、大台のGⅠ10勝へ乗せたい気持ちは大きいはずだ。

 キルロードと初コンビとなる和田竜はGⅠ8勝。うち、ミレニアム無敗を誇ったテイエムオペラオーで7勝。18年宝塚記念(ミッキーロケット)以来、ここが50戦目のGⅠとなる。

 デアリングタクトで牝馬3冠騎手となった松山に、ソダシとのコンビが有名が吉田隼はGⅠでは5勝。4歳世代のウインマーベル、ウオーターナビレラとの各コンビで挑む。

 昨年にタイトルホルダーとのコンビで天皇賞・春、宝塚記念を勝ったのは横山和で、4勝中とと最も勢いのあるアグリと挑む。坂路49秒8の1週前の追い切り後には「使って芯が入った」と好感触を掴んでおり、同じくGⅠ2勝でダディーズビビッドが回ってきた秋山真は「以前は掛かるイメージがありましたが、折り合い面は大丈夫。いい馬です」とこちらも手応えあり。キョウエイマーチとのコンビで活躍した印象が強い秋山真だが、桜花賞勝ちは松永幹。12年のNHKマイルC(カレンブラックヒル)、阪神JF(ローブティサージュ)以来の美酒を狙っている。

 そして冒頭でも触れた、丸田はナランフレグとのコンビで連覇を狙う。

 現在、ディヴィナシオンの鞍上が未定であるため、初GⅠを狙うのは岩田望、川須、鮫島駿、丹内、団野、西村淳、武藤の7名なる。

 岩田望は昨年、103勝で福永(101勝)を上回るリーディング6位の成績を残し、今年もすでに29勝で4位につけるデビュー5年目。若手の有望株だ。GⅠ騎乗は31回。昨年のこのレースではロータスランドで首差の②着。「勝ちたかったです」と悔しさをにじませた。今年は前走の阪急杯(⑦着)に続く、GⅠ馬グレナディアガーズとのコンビ。本番でアジャストさせられるかに焦点だ。

 川須は昨年の北九州記念勝ち馬ボンボヤージで挑む。33秒台の末脚を使える一頭で、31歳の鞍上は13年NHKマイルC(レッドアリオン)、昨年の朝日杯FS(キョウエイブリッサ)でのGⅠ④着越えを狙う。

 9年目の26歳は鮫島駿。昨年は80勝でキャリアハイを達成した。21年にはフェブラリーSのエアスピネル、昨年は菊花賞ノジャスティンパレスで0秒1差の②③着。京阪杯勝ち馬トウシンマカオでGⅠ23戦目での悲願となるか。

 GⅠ未勝利組では、丹内が一番のベテラン。デビュー20年目を迎える37歳だが毎日、多数の馬の調教をつけ、厩舎関係者の信頼は高い、真面目で努力家。重賞は191戦、GⅠでは11戦で手綱を取ってきた。今回は鮫島駿からスイッチしたトゥラヴェスーラとの初コンビ。昨年は0秒1差の④着だから、キャリア豊富な37歳が〝デビュー20周年〟で昨年の丸田同様、歓喜の涙を流すのだろうか。

 団野はデビュー5年目。GⅠ騎乗は9回あり、21年阪神JFのラブリイユアアイズで②着。8番人気馬で穴をあけている。今やGⅠ常連の斉藤崇厩舎の所属で〝走る馬〟の背中は十分に知る。今回はシルクロードSを10人気で連対させたファストフォースで本番での大金星を狙っている。

 団野よりひとつ上の先輩は西村淳。21年から金鯱賞(ギベオン)、中京記念(ベレヌス)で勝ち、今年はダイヤモンドSのミクソロジーでレコード勝ち。京都開催の天皇賞・春の有力馬とのコンビが決まっている。その前にはずみをつけることができるか。ルメール不在でオーシャンSを快勝したヴェントヴォーチェの依頼が舞い込んだ。「若手、先輩騎手が勝っているので、GⅠを勝ちたい」と話す。ビッグチャンスの到来だ。

 そのひとつ先輩は武藤で重賞経験は70戦。GⅠ5戦はこの中では最少キャリアとなり、オパールシャルムで勝てば、初重賞初GⅠになる。

 馬も接戦だが、騎手も意欲満々。今年もゴール前で各馬が肉薄した桶狭間電撃戦が期待できそうだ。18頭の人馬。その頂点に立つのは──。

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