【小倉競馬】落馬の少ない障害へ──。関東馬の活躍、競走中止の少なさから分かる障害界の意識改革

公開日:2026年2月25日 12:00 更新日:2026年2月25日 12:00

〝西高東低〟を変えたスクーリングの大切さ

 6週続いた小倉競馬、通称〝フユコク〟が今週末で幕を閉じます。

 小倉を支えるレースのひとつが障害戦。毎週、3鞍と番組が組まれ、予想する側にとっても外せない、また面白くもあるジャンルです。今年の開催で、ある傾向がみられました。開催が進むにつれ、関東馬の活躍が目立ったのです。この要因は──。

 ご存知のとおり、障害戦はJRAの全10場のうち、8場(他に福島、新潟、中山、東京、中京、京都、阪神)で施行されています。

 この8場で唯一、滞在型の専用障害コースが小倉競馬場。

「いけ垣、いけ垣にも両面から跳ばすことができる幅の広いものも。襷(たすき)、緩やかながらもバンケットがあり、置き障害も。あらゆる障害が揃って、練習を含め、馬の経験値を高めるには最高のコースですね」(難波騎手)

 障害戦は「人と馬のコンタクトをいかに取ることができるか」が最重要課題。人馬の密度を上げるに最適なのが、6週間の冬の小倉開催でもあるのです。

 特に、小倉に滞在しながら調教を進める関東馬にとっては大きな利があります。長らく〝西高東低〟時代が続きましたが、ここにきて関東勢の勝ち星が増えました。フユコクのみでも、長らく西軍が強かったところから、24年には栗東11勝、美浦13勝と東が勝ち越し、昨年は12対7も、今年の5週は6対8(1鞍が雪で中止)と美浦組優勢で最終週を迎えています。

 その美浦勢は、5週で行われた14戦で最低一頭が馬券に絡み、①~③着独占は3度ありました。冒頭でも触れたように、フユコク2戦目の〝折り返し美浦組〟が2勝、③着3回。成績を上げる馬が目立っています。

 ここに〝滞在型障害馬づくり〟のメリットが表れていました。

 これはスクーリングの大切さを唱えてきた高田騎手が解説してくれます。

「馬は生き物ですからね。機械ではなく、メンタル的な部分に影響されやすいんです。小倉に滞在すれば連日、障害コースをスクーリングでき、慣れさせ、馬を安心させることができる。滞在で輸送の影響もない。直前の輸送で前日にスクーリングさせるだけとは、馬とのコミュニケーションで雲泥の差があるんですよ。他場もそうですが、スクーリングの効果は出てきていると思います」

昨年の競走中止は58頭と最少の頭数

  ここ数年のフユコクでの美浦勢活躍の要因ひとつかもしれません。年間を通しても美浦勢の勝ち鞍が増えてきています。

 実際に、スクーリングの重要さはある数字にも表れています。それが、競走中止の数。ひと昔前の障害といえば、〝行け行けドンドン〟の雰囲気もありました。年間での競走中止数は落馬を含めて100頭を超えることも多く、99年には125頭、08年は123頭、10年には最多となる126頭が完走することなくレースを終えています。それが年々、減少して昨年は58頭。最少の頭数となりました。

 今では、遠征競馬でもレース数日前に競馬場へと移動。翌朝にスクーリングすることが常となっています。厩舎サイド、馬主さんの理解、協力があってこそ可能となることですが、1週前に当該場へ出向き、練習しに行くことが通常に。人馬の呼吸を合わせてレースへと向かっているのです。

 これは障害騎手の意識改革、努力による〝落馬しづらい障害馬づくり〟のたまもの。

「高田さん、加矢太君(小牧加騎手)と馬術の技術を取り入れた事は大きい」(小野寺騎手)

「高田潤さん、小牧君が結果を出し、普段の馬の跳ばせ方、踏み切りの姿勢ひとつと練習方法から変わってきた」(難波騎手)

 レースに向かう馬づくりが安定した飛越へとつながっているのです。高田騎手は昨シーズンに41年ぶりとなる大台の障害20勝に到達しました。そして、こう話します。

「皆が意識を持つことで効果はあると思います。ただ、自分本人が結果を伴わないと意味がないので、実践するように努めています」

 人馬の安全のため。この意識改革が浸透し、障害ジョッキーが同じベクトルで歩んでいるのが今の障害界でもあるように思えます。

安心して馬券を買える障害戦に

 ひと昔前は「障害レースの馬券は買わない。落馬したら元も子もないでしょ」とよくこんなセリフを聞きました。今は違います。平地競走馬に人馬の呼吸を教え、ひとスキルを身に着け、完走率をグンと向上させたことで、安心して買える障害戦となり、馬券的な面白さまでもアップしているのです。

 障害レースはレース映像や、パトロールVTRで案外、飛越の上手さ、安定感に個々の癖まで分かり、また一戦ごとの上達ぶりに各騎手の努力が垣間見えるもの。平場より分かりやすいケースもあります。

 フユコクの障害戦は残すところ3鞍となりましたが、東西どの馬に票を投じるか一度、熟考してはいかがでしょう。そこから〝ハードル愛〟が生まれるかもしれませんよ。

勝羽太郎

 1974年、愛知県で生を受ける。名前の通りのザ・長男。
 大阪での学生時代、暇な週末は競馬場に通い、アルバイトをきっかけに日刊ゲンダイへ。栗東トレセンデビューは忘れもしない99年3月24日。毎日杯の週で、初めて取材した馬は連勝中だったテイエムオペラオー。以降、同馬に魅せられ、1勝の難しさ、負けに不思議の負けなしと、学ばせてもらったことは実に多い。
 グリーンチャンネルでパドック解説をさせていただいているが、パドック党であり、大の馬体好き。返し馬をワンセットで見たい派。現場、TV観戦でもパドックが見られなかったレースの馬券は買わないと決めている。
 余談だが、HTB「水曜どうでしょう」の大ファン。こんこんと湧き出る清水のように名言を連発する大泉洋氏を尊敬してやまない。もちろん、“藩士”ゆえにDVD全30巻を所持。

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