第1回の秋華賞は1996年。長浜厩舎ファビラスラフインが制した。同時にその後、女帝と呼ばれる1番人気エアグルーヴがカメラのフラッシュでパニックに。イレ込んでしまい⑩着と実力を発揮できなかったことも有名な年だ。厩舎が解散し、各所に散る元長浜スタッフに聞く昔話は、経験の重みを感じると同時に今後のための知識となる。共通して聞くことは「走る馬は間違いなく大きく変わる」だ。
【京都11R・秋華賞】 過ぎ行く月日の早さに驚くばかりの30回メモリアル戦はカムニャックに◎を打った。
父ブラックタイド譲りの長い後肢を持つ一頭である。後ろ脚が長い馬はそれを速く動かす筋力がなければ、単なるワンペースタイプとなってしまう。カムニャックの場合も同じ。過去の6戦のパドック映像を見ても、⑥着の2歳アルテミスS、3歳初戦のエルフィンS④着は後肢が流れ気味で、勢いよく踏み込んできていなかった。レースもハミに頼る感じの走りとなっていた。
そこから2カ月で課題克服、成長へとつなげたのは、さすが友道厩舎というところ。マイルからの距離延長もプラスに働き、フローラS、オークスと33秒台の脚を繰り出して連勝した。
春より明らかに良く感じるのがこの秋だ。肩、腰回りが筋力アップし、四肢が連動して動いている。「筋肉が乗り、よく動く。走りのクオリティーが上がりました」と大江助手も表現するが、実際に、前哨戦のローズSがそうだ。もともと、父似で牝馬離れした骨格にプラス8キロ以上のボリューム感が出て、前後の伸縮性も抜群だった。
レースがひと成長を証明し、千八で6番手の追走と春より前でポジションを取れている。本番での内回り二千㍍への形をつくりつつ、1分43秒5で差し切った。この1馬身半差は、オークス時よりもスケールアップした勝ち方と言っていい。
「体はすぐに戻り、負荷をかけることができた。春もGⅠへはいい形で向かえましたが、それよりも良く感じますよ」
中3週の東京遠征を続けて勝った樫の一戦を考えれば、今回は中4週で3本の坂路、2本のコース追いを消化でき、歩く姿に弾みもある。2冠を手中に収めていい。
1974年、愛知県で生を受ける。名前の通りのザ・長男。
大阪での学生時代、暇な週末は競馬場に通い、アルバイトをきっかけに日刊ゲンダイへ。栗東トレセンデビューは忘れもしない99年3月24日。毎日杯の週で、初めて取材した馬は連勝中だったテイエムオペラオー。以降、同馬に魅せられ、1勝の難しさ、負けに不思議の負けなしと、学ばせてもらったことは実に多い。
グリーンチャンネルでパドック解説をさせていただいているが、パドック党であり、大の馬体好き。返し馬をワンセットで見たい派。現場、TV観戦でもパドックが見られなかったレースの馬券は買わないと決めている。
余談だが、HTB「水曜どうでしょう」の大ファン。こんこんと湧き出る清水のように名言を連発する大泉洋氏を尊敬してやまない。もちろん、“藩士”ゆえにDVD全30巻を所持。