あの馬は今こうしている

障害GⅠ9勝 オジュウチョウサンは今 「今年は3頭に種付け。ステイゴールド産駒らしくいたずらっ子です」

公開日:2025年10月23日 14:00 更新日:2025年10月23日 14:00

デビューは秋の東京開催だった

 中央競馬の障害の歴史を塗り替えた名ジャンパー・オジュウチョウサンがデビューしたのは2013年10月19日。ちょうどこの時季の東京開催の芝千八だ。平地は2戦でパスして障害に回ると、4歳で勝ち上がり、続く障害OPも連勝。5歳に素質を開花させると、障害重賞13連勝のほか、JGⅠ中山グランドジャンプを5連覇するなどJGⅠ9勝の絶対王者に君臨。3年前のJGⅠ中山大障害を最後に引退した。今どうしているのか。

 競走馬を引退すると、生まれ故郷・北海道沙流郡日高町にある坂東牧場を経て、同じ町にあるYogiboヴェルサイユリゾートファームで繋養されている。担当者に話を聞いた。

「今はウチで種牡馬として暮らしています。23年の初年度は8頭に種付けし、昨年は5頭、今年は3頭。種付け頭数は多くありませんが、馬は14歳と年齢を重ねてもまだまだ元気で、種付けも上手。オーナーの長山(尚義)さんも所有する繁殖牝馬を種付けしていて、今後もほそぼそと種牡馬を続けていく方針です」

 種牡馬は、芝やダートの平地で活躍した馬が人気だが、障害で名をはせた馬が種牡馬になるケースもある。1963年秋から65年春まで中山大障害(98年までは年に2回施行)を4連覇してフランスの障害も2勝したフジノオーや、74~75年にかけて同レースを4連覇したグランドマーチス、同レース5勝で史上初の3年連続最優秀障害馬に選ばれたバローネターフ、そして2000年と01年の中山グランドジャンプを連覇したゴーカイだ。ゴーカイは、産駒のオープンガーデンが11年にJGⅡ阪神スプリングジャンプを勝ち、史上初の障害重賞父子制覇を達成した。オジュウもゴーカイに続くか注目だろう。

 種牡馬にとって今はオフシーズン。どんな生活なのか。

「種牡馬なので1頭で午前7時くらいから午後3時くらいまで放牧しています。あんまり歩き回ったりせず、集団放牧されている隣接する放牧地をながめていることが多いですね。元々、馬は群れで生活しますから、仲間を見ることで寂しさを紛らわせて、安心するのかもしれません」

 収牧して馬房にいるときは?

「ステイゴールド産駒らしくやんちゃで、いたずらっ子です。私たちが手入れに行くと、帽子やジャンパーを狙って噛もうとします。でも、注意するとやめるから、指示がきちんと分かるんです。手入れのときに暴れたりすることもありません。賢いですよ」

放牧地に隣接する宿泊施設に近づいて来る

 この夏は日高も暑く、日中は32度の真夏日になったそうだ。

「強めの虫よけスプレーをかけたり、アブを吸い取るアブキャッチャーを敷地のあちこちに設置したりして、アブに注意しながら放牧していたのですが、虫から逃げようとしていつもより走ったせいか、体が少し細くなりました。ですから、これから種付けシーズンに向けて体を増やさないといけませんね」

 現役時代からファンが多く、種牡馬になってからも一目見ようと遠くから牧場にやって来る人が絶えない。種牡馬生活初年度だった2年前のゴールデンウイークは何と1日500人に上ったが、「自己中心的というかマイペースというか、多くの人に囲まれてもあまり気にならないみたいです」という。そんなオジュウファンにとってたまらない施設も牧場に誕生したそうだ。

「オジュウチョウサンの放牧地に隣接したトレーラーハウスを宿泊施設に改装しました。オジュウは元々、ハウス前のウッドデッキがお気に入りの場所なので、『だれかいるのかな?』と近づいて来ることもありますよ。8月20日にオープンすると、おかげさまで好評で、夏休みシーズンが終わっても、2日連続で空室になることはありません。ぜひ、いらしてください」

 1室3人までで、料金は平日5万円、金・土・日祝は5万5000円。大自然の中で過ごすオジュウの姿をたっぷりと楽しめて、この料金はありがたい。

 牧場には、ほかにエポカドーロやローズキングダム、ジェネラーレウーノ、グランプリボス、クリノガウディーなど数多くの引退した活躍馬が在籍する。

 そんな馬たちが健やかに余生を送れるように放牧地の整備や第4厩舎の建設などを目的としたクラウドファンディングを開始。当面5000万円を目標に500人近くから1000万円以上が集まっているという。そのリターンには、オリジナルグッズのほか牧場での特別体験も用意されているというから、オジュウとともに引退馬の生活にも目を向けてみるのもいいかもしれない。

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