父の父ダイワメジャーが克服できなかった〝壁〟を初年度産駒から越えてきたアドマイヤマーズの可能性
公開日:2025年10月21日 07:00 更新日:2025年10月21日 07:00
秋華賞はエンブロイダリーが桜花賞との2冠を達成した。
このレースを振り返るうえで重要なポイントはアドマイヤマーズ産駒が二千㍍のGⅠで勝ったことだろう。
エンブロイダリーの父アドマイヤマーズはダイワメジャーの直子。ダイワメジャー産駒といえば、サンデサイレンス系のスピードタイプ。JRAの重賞で55勝を挙げているが、勝ち鞍があるのは千八まで。中距離以上の重賞では明らかに〝距離の壁〟があるのだ。
その血を引くマーズも現役時代はマイルGⅠで3勝。産駒もここまで千二、千六で最多の12勝ずつ。牡馬が二千㍍で3勝を挙げているものの、牝馬は二千では10戦して掲示板に載ったことすらなかった。メジャー同様、中距離以上では厳しいかの傾向だった中での勝利。それも道中は早めに動いて勝ち切ったから、しっかり距離に対応できていたということ。メジャー産駒が長年克服できなかった壁を初年度産駒が越えてきたことは非常に価値が高い。
血統的に見てもメジャーと比べてマーズは母系のサドラーズウェルズの血を持っている分(祖母の父がシングスピール)、メジャーよりも距離の融通性があるというのも納得ができる。加えてエンブロイダリーは母ロッテンマイヤーが二千㍍の忘れな草賞勝ち馬で、近親にブエナビスタがいる血筋。メジャー産駒と違い、母系が中距離型ならマーズ産駒は距離をこなす馬が出てくる可能性が高いとみていいだろう。
②着エリカエクスプレスは父エピファネイアで母の父ガリレオ。自身はサドラーズウェルズの4×3のクロスを持つ。ここまでマイルで2勝も以前から距離が延びていいタイプだと思っていた。加えて、レースは前後半の3Fが35秒6=35秒3、5F59秒4=58秒9。前半から流れる傾向の強いレースとしては思ったほどペースが上がらず、ほぼイーブンペースで逃げを打てたこともこの馬には有利だった。今回の内容からもやはり小回りの中距離戦がベスト。配合的に晩成傾向のある血だけに、ここからもうひと成長あっていい。
③着パラディレーヌは後方追走から4角でも10番手。そこからメンバー最速の上がり3F34秒4で外から一気に伸びてきた。内回りコースで今回の流れでは差し切るまではいかなかったがいい決め手は見せた。母パラダイスガーデンは6F戦で4勝。母の父クロージングアーギュメントでスピード色の強いインリアリティの系統だ。ここまでは全て千八以上を使っているが、父キズナは母系の特徴を引き出す傾向もあり、もう少し短いところでも見てみたい気はする。
④着はエフフォーリアの全妹ジョスラン。父がエピファネイアで母の父がハーツクライだから直線の長いコースで瞬発力を生かす競馬が合うタイプか。前走の紫苑S②着に今回と直線の短いコースでやや決め手を生かし切れなかったか。ただ、全兄が3歳秋に本格化したように、妹もこの秋は使いつつ馬体を増やしてきており、確実にパワーアップは感じる。
1番人気のカムニャックは⑯着。3代母にオークス馬ダンスパートナーがおり、母系にはサドラーズウェルズの血も入る配合。中距離以上がいい血だけにの距離延長はプラスだと思っていたのだが……。ゲートではイレ込んで立ち上がり、レース前半も前進気勢が強かった印象だった。前走のローズSが二千四百から千八への距離短縮。そこでも落ち着いて走っており、春先に見せていた気性面の難しさもマシにみえた。それがこの内容。もともとサンデーに似て気性が勝ったタイプの多いブラックタイド産駒。結果論にはなるが、前半からレースの流れた千八を使ったことでかえって闘争心に火が着いてしまったか。今後もレース前の雰囲気の確認は大事になるが、ひとまず今回は力を出し切ったとはいえない。
富士Sはデピュティミニスター内包の安田記念①②着馬が入れ替わりワン・ツー
土曜に東京で行われた富士Sは①着ガイアフォースで②着がジャンタルマンタル。結果的に同じ舞台で行われた春の安田記念の①②着馬が入れ替わる形に。①②着馬は2㌔の斤量差があったから、その分か。
ただ、安田記念後のこのコラムにも書いたのだが、この2頭の共通点はデピュティミニスターの血を持っていること。今回9番人気で④着と好走した昨年の勝ち馬ジュンブロッサムも母の父クロフネだから、やはり東京マイルの重賞ではデピュティミニスター内包馬は無視してはいけなかった。
約3年ぶりの勝利となったがガイアフォースは成長力のあるノーザンテーストのクロス持ち。今年で6歳でもまだまだ衰えはない。これでマイルCSへの優先出走権を手にしたことで、次走はそこが目標か。マイルCSは父が中距離型の馬が意外と勝っており、キタサンブラック産駒の同馬もイメージは合う。悲願のGⅠ制覇も十分あるとみている。