【リゲルS】ケガからの復活を目指す3頭 カレンシュトラウスは蹄鉄のある変化に期待を寄せる

公開日:2023年12月7日 14:00 更新日:2023年12月7日 14:00

難しい走る馬の「無事是名馬」、そして「復活」

 復活への道──アスリートには長く、険しくもある道のりとなる。

 勝ち負けを競うスポーツはどれも同じで、ひとつの怪我が、競走生命を左右する。競馬サークルには「無事是名馬」という格言があるが、健康体で競走生活を過ごすことの大変さを示すものだろう。

 実際に、走る馬ほど故障のリスクを抱えることになる。速く走るとこうことは、極限近くまでスピードが上がるということ。物理的に筋肉、腱、骨と負担がかかってくる。人のケアを超えてしまうのは想像に難くなく、故障という症状として表れてしまう。治ったとしても少なからず尾を引くケースは多い。プロ野球の投手が肩、肘を壊し、以前の球速に戻らない。似た現象だろう。

 近しい例を挙げるとすれば、20年の無敗3冠牝馬であるデアリングタクトか。快挙から次の1勝が遠かった一頭かもしれない。4歳春の香港遠征後に右前肢の繋靱帯炎を発症。牧場、陣営、獣医師と苦悩し、様々な工夫を凝らして第一線に戻ったが、優勝には届かなかった。実際に、コンビを組んでいた松山から「走るフォームも少し変わった」というフレーズを何度も聞いた。ただし、復帰Vへの努力はファンに伝わり、応援する声は大きかった。

 GⅠ馬ではスプリンターズS勝ちのピクシーナイトはアクシデントが襲った。21年の香港スプリントで落馬事故に巻き込まれて転倒、骨折。1年3カ月もの休養を余儀なくされた。目下、復帰5戦目となる阪神Cに向けて帰厩して調整中だ。調教内容や調教ルーティンを変化させ、よりベターなものが見つかりつつある。

試行錯誤の末に見えたカレン復活への蹄鉄の減り方

 土曜阪神のメイン・リゲルSでは復活にかける3頭がいる。

 まずはディープ産駒のエスコーラ。有馬記念②着サラキア、GⅠ馬サリオスの弟で4連勝中だが、今回は屈腱炎明け。1年4カ月ぶりの実戦となる。コルテジアもそう。20年のきさらぎ賞勝ち馬だが、日本ダービー後に骨折、脚部不安が重なり、計1年以上もの休養を余儀なくされた。

 もう一頭がカレンシュトラウス。こちらは、前記ピクシーに似る形で不慮のアクシデントで肩跛行のケガを負った。

 それが昨夏。東京・メイSを快勝し、いざ、函館記念という矢先。函館に入厩し、ウッドコースでの調教中に放馬馬に絡まれ転倒。当初は復帰も困難とされる大きなケガとなった。

「正直、ショックは大きかったですね。自分の中で、重賞を取れるんじゃないか、と思っていた馬だけに。ただ、乗っていた助手さんに怪我がなかったのは何よりでした」

 担当の高阪助手はこう心中を吐露する。

 当然、復帰は簡単なものではなく1年3カ月もの長い休養となった。戦線復帰は今年の夏。小倉日経オープンで⑨着。入念に乗り込み出走したことで反動もなく、ひと月後のポートアイランドSでは0秒6差の⑧着。直線では一瞬、鋭い脚を見せたから、徐々に軌道に乗りつつある。

 復帰3戦目の今回は、とある箇所に変化がみられたという。それが蹄鉄だと。高阪さんが説明してくれた。

「トモの鉄の減りがゆっくりなんですよ。復帰2戦は脚を擦る感じで2週間ともたなかった。でも、今回はちょっと違いますね。貴志(藤懸騎手)とトモをしっかりと上げ、歩かせるように取り組んできた。相撲でいえば、四股を踏む感じ。綺麗に後肢が踏み込めているからこそ、蹄鉄の減りが遅いんじゃないかと。いい方に出てきていると思いたいですね」

 復活に向けて試行錯誤を繰り返す。もちろん、前2戦を無事に走り切れたからこそ、できるステップアップした調整でもある。少しでも馬に変化が表れることが担当者にとっては嬉しいものなのだ。先への希望、期待と繋がる。

「悔いが残らないようにやれることをやり切るだけ。僕らにはそれだけしかできませんから。これが正解かどうかも、結果でしか分からないので。まずは無事に」

 阪神の土曜メインはGがつかないリステッド競走だが、出走各馬には苦労を越えたバックボーンがある。次戦への期待を抱かせる走りなら、関係者は一様にホッとするだろう。そして喜ぶ。再発のリスクがある馬には〝次〟こそが希望となるからだ。

 3頭はどんな走りを見せるか。この一戦はギャンブルベースでない競馬の見方をしてもいいのかもしれない。

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