亀井記者の血統ロックオン

雨馬場が味方したトップナイフより、収穫大は間隔が詰まっても崩れなかったココナッツブラウン

公開日:2025年8月19日 07:00 更新日:2025年8月19日 07:00

 日曜札幌は2Rからかなりの雨が降り出し、芝は4Rから稍重に。この馬場を味方につけたのが札幌記念を制したトップナイフだ。

 父デクラレーションオブウォーは洋芝巧者が多いハービンジャーと同じダンチヒ系の種牡馬。自身も英インターナショナルSなど欧州でGⅠ2勝を挙げた欧州型だ。さらに母系も祖母の半兄が国内の中長距離GⅠで7勝のテイエムオペラオーで、母の父も欧州ノーザンダンサー系のスピニングワールドだから、いかにもタフな馬場向きの中距離馬といった配合だ。

 実際、2年前の札幌記念②着時も稍重で決着時計は2分1秒5。一方⑥着だった昨年は良馬場でノースブリッジの勝ち時計は1分59秒6。今年は稍重2分1秒5。時計を要する洋芝がマッチしたのは間違いない。それだけに今後も力のいる馬場になったときは要注意の1頭といえそうだ。

 ココナッツブラウンがクイーンSに続いて②着。キタサンブラック産駒は重賞で22勝を挙げているが中3週以内では4勝のみ。猛暑の中、前走から中1週での重賞参戦だっただけに正直厳しいかと思っていたが、前走と同様に目立つ脚での連対確保。今、状態がいいことはもちろんだが、本当に力を付けてきている。秋へ向けて収穫が大きかったのはこちらの方か。

 ③着アラタもこの馬場がマッチした印象。祖母バルドウィナが仏二千百㍍の重賞勝ち馬。父がキングカメハメハだからタフな馬場向き。函館で3勝を挙げていることから、洋芝も得意なタイプだった。

 唯一のGⅠ馬ステレンボッシュは⑮着。父、母の父ともに非サンデー系で長くいい脚を使えるタイプだけに、今回の馬場は合いそうなイメージで、ここまで負けたのは想定外。今年に入ってから精彩を欠いているが、エピファネイア産駒にありがちな古馬になっての伸び悩み状態なのかもしれない。

 中京記念は3歳牝馬のマピュースがV。父はマインドユアビスケッツ。父自身がデピュティミニスターの4×5のクロス持ちで、母系にも同馬の血が入っており非常にデピュティミニスター色の強い配合だ。デピュティミニスター系といえばクロフネなどを出したように、スピードの持続力に優れた血。今回もスタートは一息でも仕掛けて2番手へ。内枠で軽量52㌔。スローで前、前が残る流れになったのもこの馬の持ち味を生かすのにもってこいだった。父は米国型でも古馬になり力をつけた晩成型。母の父シンボリクリスエスも成長力あるロベルト系。この秋以降にもうひと成長ありそうなだけに、今後が楽しみになる重賞勝利だった。

 ②着シンフォーエバーは父がフォーティナイナー系のスピード馬コンプレクシティ。母の父がプルピットでシアトルスルの5×4をはじめ、ボールドルーラー系を多く持つ米国型のスピード持続型。前走の関屋記念は前半3F33秒9でラスト失速したが、今回は35秒4とスローの逃げで最後までしぶとさを発揮した。ただ、今回は展開に恵まれた面も大きかったか。

 メンバー最速タイの上がり33秒3を繰り出したジューンオレンジが③着。展開利のなかったなかラストはよく伸びてきている。半弟は京都新聞杯勝ちのジューンテイク。さかのぼれば3代母が桜花賞②着のツィンクルブライドで近親にはシンザン記念勝ちのペールギュントやセントライト記念など重賞3勝を挙げたミッキースワローがいる。今回は休み明けでプラス16㌔で自己最高となる470㌔。ジャスタウェイ産駒らしく古馬り力をつけてきたか。サンデーサイレンスの血の濃い配合で、今回の瞬発力が本物なら今後の重賞戦線でも面白い存在になってきそうだ。

ジャックルマロワ賞で勝敗を分けた直線競馬への適性

 最後に日曜の夜にフランスで行われたジャックルマロワ賞を少し。日本から参戦したアスコリピチェーノは⑥着、ゴートゥファーストは⑤着だった。

 勝負の分かれ目は直線競馬への対応力だったか。勝ったディエゴヴェラスケスはフランケル産駒。同産駒には22、23年とジャックルマロワ賞を連覇したインスパイラルがいる。ディエゴ自身も前走で直線競馬のミンストレルSを制しての参戦。②着ノータブルスピーチも父ドバウィが05年の勝ち馬で産駒には10年勝ち馬のマクフィがいる。ちなみに、ノータブルも英2000ギニーで直線競馬を勝った実績があった。

 日本馬の2頭は今回が初の直線競馬。アスコリはスピード勝負に強いダイワメジャーの産駒だが、国内で意外と苦手にしているのが新潟の千直。通算10勝でオープン以上では勝ち鞍がないのだ。ゴートゥもルーラーシップ産駒で、こちらは千㍍の距離が合わないとはいえ通算2勝。しかもレースはスローで馬群が固まり、最後は地力が求められる展開。本質的な直線競馬への適性の差が出た一戦だったかもしれない。


亀井辰之介

 競馬好きの父親の影響もあり、子供のころから競馬中継を一緒に観戦。最初は父親が馬券を当てるともらえる臨時の小遣いが目当てだったが(ただし、父は穴党だったため、あまり的中した記憶はない……)、ある日、シンボリルドルフといういかにも強そうな名前の馬が、強く勝つ姿に魅入られたのが競馬ファンになったはじまり。
 その後はテレビゲームの競馬ソフトにどっぷりハマり、今までに遊んできた競馬ゲームは数知れず。その時に競走馬の配合の奥深さを知り、血統に興味を持ったのが今の予想スタイルの根幹か。現在でもたまにゲームをたしなみ、好きだった競走馬の産駒を活躍させることが小さな喜び。
 予想スタイルはもちろん“血統”。各馬の血統を分析。得手、不得手を見極め得意条件に出走する時に狙い撃ち! 好配当を目指します。

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