【ドバイ現地情報】海外関係者が語る日本馬の強さとゴドルフィンの先行き不安

公開日:2023年3月23日 14:00 更新日:2023年3月23日 14:01

 1年ぶりのドバイは今年も砂塵に煙っていた。

 コロナ禍以前は赤道直下の激しい陽光を反射してまぶしいほどだった砂上のガラス張り高層ビルは、昨年と同じく砂にまみれている。

「ドバイは相当苦しいようだね。だからビッグチャンスなんだよ」

 名はあえて伏すが、某国某調教師がウインクしてみせた。

 産油量僅少のドバイが現代のエルドラドへと転じられたのは、元首であるシェイク・モハメドの号令一下、観光、不動産開発と金融への特化が成功した結果だ。

 しかし、コロナ禍で訪問者数世界4位を数えたドバイへの観光客は途絶え、上客中の上客で巨額の観光収入をドバイにもたらしたロシアのオリガルヒは姿を消した。

 コロナ禍以前はピカピカに磨かれたガラス張りのビル壁が砂塵に覆われているのは、苦しいドバイ財政を象徴している。

 窓拭きの外国人労働者も確保できなくなっている。そしてコロナ禍以前に着工したビルの建設現場は今もそのままに放置されている。

 馬と競馬をこよなく愛するシェイク・モハメド殿下の大本営“ゴドルフィン”に関しても、いい話を耳にすることができない。

 米欧豪ではセリで高馬の成約がめっきりと減って、ビッグレースでの活躍が少なくなっているゴドルフィンの先行きを危ぶむ噂が飛び交っているという。

「日本馬は去年、5勝した。日本馬が強くなっていることは認めざるを得ないが、それだけではない。ブルーのシルク(ゴドルフィンの勝負服)の存在感が全く薄れているだろ。だから今年、ドバイに来たんだよ」

 前出の調教師はドバイの厳しい財政が競走馬と育成への投資を絞らざるを得なくなった。これがゴドルフィンの凋落につながり、昨年の日本馬5勝につながったのだと指摘する。アウェー有利が決定的になった今年、ドバイに賞金を稼ぎに来た、というのだ。

イクイノックス、ジオグリフの木村師がきっぱり「土曜深夜、侍JAPANと同じように日本を沸かせたい」

 日本勢は今年27頭が名乗りを上げ、昨年の出走頭数レコードを更新。今年も堂々の主役も張る。

 22日(水)、昨年の年度代表馬イクイノックス、同厩のジオグリフら日本勢の主力が最終追い切りを行った。

 イクイノックスは芝コースで単走、残り5Fから加速すると馬なりのままラスト2Fはスッとギアを上げ、推定11秒3―11秒1でフィニッシュした。

 ジオグリフはダートコースで軽めの調整。2頭の調教をしかと確認した木村師はすぐに報道陣に囲まれ威風堂々。緊張を微塵も感じさせない。

「イクイノックスはいい動き、追い切りはうまくいった。美浦にいる時と同じくいい状態で、仕上げは計画通りにできた。ドバイの芝への適性は未知数だが、昨日午後、雨が降って、その後も相当散水している。馬場も押し固めているようだ。気候、環境ともドバイは日本よりも良好。心配はしていない」

 サウジC④着からの転戦となるジオグリフに関しても「着順は残念だったが、香港での学習効果があって環境にも適応している。ドバイ到着後も順調です」。

 本番まで3日、さらに細やかな調整にあたるという。

「午後に厩舎で見て、このあと勝つために何が必要なのか、しっかりと確認して当日までしっかりとこなしていきます」

 報道陣に囲まれている最中に、アメリカから侍JAPANのWBC優勝の朗報が伝わった。

「土曜深夜、同じように沸かせたいですね」

 若き名伯楽は自信のほどを静かに垣間見せた。

 イクイノックス、ジオグリフ2頭の手綱を取るルメールは2頭には乗らなかったが、UAEダービーに出走するデルマソトガケの最終調整に騎乗した。

「サウジでは③着だったけど最後はしっかりと差を詰めたね。今回は乗り替わりになるけど、ドバイの方が合っているんじゃない?」

 筆者の“自信あり”は日本では発売されないUAEダービーのこの馬である。
(売文家・甘粕代三)

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