亀井記者の血統ロックオン

マイラー母系の一瞬の切れが生きた皐月賞

公開日:2025年4月22日 07:00 更新日:2025年4月22日 07:00

 牡馬クラシック初戦の皐月賞は1分57秒0で決着。昨年のジャスティンミラノの勝ち時計を0秒1上回るレースレコードだった。ただし、千㍍通過は59秒3。昨年が57秒5だから、思ったほど道中はペースが上がらなかったなの印象。史上初のCコース使用で前半からレースが流れると読んだのだが…。結果、前後半の3Fは34秒5=34秒8と中山二千としては決め手が求められるレースになった。

 勝ったミュージアムマイルは上がり34秒1で差し切り。父リオンディーズはキンカメ系らしい万能型の種牡馬で、天皇賞・春を制したテーオーロイヤルや、地方交流重賞勝ちのリプレーザなど、母系の特徴によってガラリと産駒の印象が変わってくる。

 ミュージアムマイルはハッピートレイルズにさかのぼる牝系で、この血はコディーノ(父キングカメハメハ)、チェッキーノ(父キングカメハメハ)などキングマンボ系と相性がいい血でもある。ミュージアムマイルの母ミュージアムヒルはマイルで3勝。上がり33秒台を連発するような切れ切れのマイラーだった。息子もその影響が大きく、デビュー戦から上がり3F34秒1をマーク。京都内回り二千の黄菊賞を33秒7で差し切ったように一瞬の決め手に非常に優れている。父がその長所を引き出し、今回のレースに見事にマッチした形だ。そのストロングポイントをフルに生かした〝雷神〟モレイラもさすがと言うしかない。

 とはいえ、ダービーはと言われると正直疑問が残る。前記したように母系はマイラーで一瞬の決め手に優れるタイプ。大箱東京の二千四百はキャラクター的にちょっと向かない印象だ。

 クロワデュノールは初めて土がついたとはいえ好位から勝ちに行く競馬で②着に残したからさすが。勝ち馬とは決め手の差が出たが、こちらは次が楽しみになる1戦。母ライジングクロスは英オークス②着で愛オークスの③着馬で、父キタサンブラックなら距離は延びていい配合。しかもキタサン産駒はフットワークが大きく大箱コースを得意とする馬が多い。実際、東京スポーツ杯2歳Sを勝っており、東京替わりはかえってプラス。順調に出走してくれば当然、本命候補の1頭となる。

 ③着マスカレードボールも配合は勝ち馬と似たイメージ。父がキンカメ系のドゥラメンテで、祖母が千二~千六で10勝を挙げたビハインドザマスク。祖母も現役時代は鋭い決め手を武器としていた。こちらは半姉にローズSをレコード勝ちしたマスクトディーヴァがおり、勝ち馬よりもやや距離をこなせる印象はある。それでも二千四百はギリギリもつかどうか。なにより、祖母、半姉もそうだったように、晩成傾向のある血。本当に良くなるのは夏を越してからではないか。

 自身の◎サトノシャイニングは⑤着。土曜発行のコラムでも書いたように血統的にはスピード寄りの血が多く入った配合で、きさらぎ賞のようなハイペースでの競馬でこそ持ち味が生きるタイプ。それだけに、もう少し流れてくれればの思い。実際、レースでは行きたがるような面も見せていたし(他馬と接触する不利もあったよう)、あれが本来の実力ではないだろう。ただ、この馬も東京二千四百より中山二千の方が合うイメージだけに……。

 残りの2重賞はともに1番人気が勝利。土曜阪神で行われたアンタレスSはドレフォン産駒のミッキーファイトがV。半兄にチャンピオンズC勝ちのジュンライトボルトがいる血筋で、ミッキー自身もデビューから8戦全てダートで5勝②着1回③着2回とオール馬券圏内をキープ。3代母にエアグルーヴがいる血なのだが、祖母ソニックグルーヴの父がフレンチデピュティの影響かエアグルーヴの牝系でもダート向きの仔を多く出す血筋だ。

 フェブラリーSでは1番人気③着だったが、当時の血統回顧でも書いたように千六はやや短い印象。というのも父ドレフォンはBCスプリントを勝つなど短距離路線で活躍したが、産駒は意外と距離をこなす馬が多い。ミッキーは母系もエアグルーヴ牝系だから距離はあった方がいいタイプ。今回は距離延長で本領発揮といったところ。母系の成長力を考えても4歳の今シーズンはかなりの活躍が期待できそう。

 福島牝馬Sは3勝クラスを勝ったばかりのアドマイヤマツリが重賞初挑戦でV。同馬もデビュー戦で⑦着だった以外は8戦全てで連対と抜群の安定感。血統的にはサンデーサイレンスの3×4+4と非常に濃い血を持っており、デビュー当初は気難しい面もあったようだが、近走は精神面も安定している。

 サンデーの近親配合の例としては同じキタサンブラック産駒のラヴェル(サンデーの3×3)がアルテミスS、チャレンジCと重賞2勝。他にも3×3のアスクワイルドモアが京都新聞杯をレコード勝ちするなど、意外と重賞でも結果を出している。今回の皐月賞で③着のマスカレードボールも3×3だ。血が濃いからといってそこまで過敏に反応する必要はないのかもしれない。

亀井辰之介

 競馬好きの父親の影響もあり、子供のころから競馬中継を一緒に観戦。最初は父親が馬券を当てるともらえる臨時の小遣いが目当てだったが(ただし、父は穴党だったため、あまり的中した記憶はない……)、ある日、シンボリルドルフといういかにも強そうな名前の馬が、強く勝つ姿に魅入られたのが競馬ファンになったはじまり。
 その後はテレビゲームの競馬ソフトにどっぷりハマり、今までに遊んできた競馬ゲームは数知れず。その時に競走馬の配合の奥深さを知り、血統に興味を持ったのが今の予想スタイルの根幹か。現在でもたまにゲームをたしなみ、好きだった競走馬の産駒を活躍させることが小さな喜び。
 予想スタイルはもちろん“血統”。各馬の血統を分析。得手、不得手を見極め得意条件に出走する時に狙い撃ち! 好配当を目指します。

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