気になる馬に対する注目ポイントは記者それぞれ。それこそ千差万別だと思いますが、個人的に馬の個体そのものはもちろんですが、その時々の騎乗者にも注目しています。またがる関係者それぞれで感触が異なるケースがあるからです。
ジャパンCの出走馬の中で、いろんな面でオッズパフォーマンスが高いと思っていたのがスターズオンアースです。
デビュー以来、馬券圏外になったのは前走のドバイシーマクラシックの⑧着のみという超堅実派でありながら、今回は8カ月ぶりの長期休養明けも手伝って、人気は高めに見積もっても3番人気といったところ。ヒモが狂えば高配当は必至です。
なので、中間から調整過程をじっくりと観察してきました。
帰厩直後の10月24日。
鞍上には知己にさせてもらっている小峯助手がまたがっていました。気持ちはもう前向きでしたが、さすがに馬体には少し余裕がありました。
当時の印象をうかがってみると「特に重いという感じはありませんでしたね」と、こちらの感触とはちょっと差異のある答えを返してくれました。やはり見た目と、実際に乗ってみるでは違いました。放牧先で相当乗り込まれて、中身をしっかりつくってきたようです。
そこから調教を積み重ねて、1週前は川田が追い切りをつけて今週へ。小峯さんはウッドでの最終追い切りでリプレゼントに乗って大事な先導役を任されました。
以前のコラムでも書きましたが、併せ馬でメインになる馬以上に大事と言っても過言ではないのが先行馬。指示されたラップを刻んで時計を“つくる”役目だからです。
スターズの時計は5F65秒8―36秒4、1F11秒7。最後は抜群の推進力で突き抜けました。
「追い切りをこなすごとに仕上がった感じで、いつも通りの雰囲気になっていると思います。最終追いも指示通り、うまくいきました。モタれる面もあまりなかったし。何なら自分の方がモタれたぐらいで(苦笑)」
昨年のジャパンCはイクイノックスとリバティアイランドには後塵を拝しましたが、ドウデュースには先着。オークスを勝った舞台でもあり、コース適性は抜群。仕上がり万全なら今年も上位争い可能と見立てました。
「ベガはベガでもホクトベガ!」
93年エリザベス女王杯でホクトベガが①着でゴールに飛び込んだ瞬間の実況です。当時、浪人生でフラフラしていた自分にとっては衝撃的であり、今でも予想の根底に根付いています。
ベガはバリバリの良血馬で鞍上が武豊。牝馬3冠にリーチをかけていました。対して、ホクトベガは父がダート血統でベテランの加藤和を配したいぶし銀のコンビ。春2冠でベガに大きく後塵を拝したホクトベガに勝ち目はなさそうでしたが、見事にリベンジ。この“逆転劇”こそが競馬の醍醐味ではないでしょうか。
かつて作家の寺山修司氏は「競馬が人生の比喩なのではない、人生が競馬の比喩なのである」と評したそう。馬も人も生きている間はいつかの大逆転を狙っています。雑草でもエリートを超えるチャンスはあるはずと、きょうもトレセンを奔走しています。