厩舎という組織が結果を出すには、社長である調教師と社員である助手や厩務員との連携、信頼関係がかなり作用しているのは言うまでもありません。
小島茂師はスタッフに苦言を呈することがありますが、長所にもしっかりを目配りをして「本当に良くやってくれているんですよ」と口にします。 今週もこんなことがありました。ニューイヤーSに出走するフィールシンパシーの追い切りについて話が及ぶと興味深い内容に。
「追い切る前に担当の聖(畠山助手)に“どんな感じで行く?”って尋ねたら、“先週しっかりとやっている(ウッドで5F66秒7―37秒9、1F11秒8)ので、軽めでいいと思います”って言うんで、任せました。なので、先行する馬には追いつかずの格好でゴールしたのは予定通りです」
さらにそこから一歩踏み込んだ話へ。
「上がってきた様子を聞いてみると“指示をずっと待ってくれている感じでした”って。普通は併せて遅れた格好になると見た目に悪いんですが、馬によってはそうではないんです。馬が“(指示が)こないなこないな、いつくるのかな”と気にして。集中して走ってくれているってこと。つまり乗り手とのコンタクトがしっかり取れているんです。その方がレースでは動けることも多いんです。聖はそういったこともよく考えて乗っているんでしょう」
その畠山助手の父は香港国際競走でGⅠ2勝のウインブライトなどを管理した畠山師です。
生まれた時から身近に競走馬がいたからこそ、いかに担当馬の能力を最大限に引き出すか、という点に心を砕き、調教で教え込んで、レースでフィードバックさせることが、後天的ではなく肌感覚でできるのでしょう。
今回も仕上げに狂いはありません。オープン特別でくみしやすくなったここは、勝利をしっかりモノにするとみました。
「ベガはベガでもホクトベガ!」
93年エリザベス女王杯でホクトベガが①着でゴールに飛び込んだ瞬間の実況です。当時、浪人生でフラフラしていた自分にとっては衝撃的であり、今でも予想の根底に根付いています。
ベガはバリバリの良血馬で鞍上が武豊。牝馬3冠にリーチをかけていました。対して、ホクトベガは父がダート血統でベテランの加藤和を配したいぶし銀のコンビ。春2冠でベガに大きく後塵を拝したホクトベガに勝ち目はなさそうでしたが、見事にリベンジ。この“逆転劇”こそが競馬の醍醐味ではないでしょうか。
かつて作家の寺山修司氏は「競馬が人生の比喩なのではない、人生が競馬の比喩なのである」と評したそう。馬も人も生きている間はいつかの大逆転を狙っています。雑草でもエリートを超えるチャンスはあるはずと、きょうもトレセンを奔走しています。