小島良太のおふも~どでゆるっトーク

今週出走するマピュースの新馬勝ちには裏話が

公開日:2026年3月17日 12:00 更新日:2026年3月17日 12:00

 今週末は3つの競馬場で4重賞が組まれています。注目は何と言っても伝統のGⅡ阪神大賞典! という定番過ぎる話題はちょっと置いておいて、一番は日曜中京で行われるGⅢ愛知杯ということにしてもらいます。

 理由は簡単。僕が調教しているマピュースが出走するからです。

 3歳時は桜花賞、NHKマイルC、秋華賞とGⅠ路線を歩みつつ、夏にはGⅢ中京記念で重賞初制覇。そして前回はダートに初挑戦した根岸Sで⑤着とまずまずの結果でした。実はこの馬、ダートでデビューする予定だったのです。

 牝馬にしては筋肉質な体形、そして何より母馬はダートのみの出走で4勝をあげ、父マインドユアビスケッツも産駒の成績はどちらかと言えばダート寄り。となれば、新馬戦は〝ダートで〟というのは自然の流れになりますよね。

 ところが、話はデビュー週の水曜日の追い切り後に変わりました。「まぁ、ダート馬なのは間違いところ。だけど、今後いつ芝で出走させられるかわからない。それなら、せっかくだから新馬くらい芝を使ってみようか」ということで芝でおろすこととなりました。

 そして迎えた初戦。僕は札幌に滞在中で、このレースは生産者の社台ファーム・吉田照哉社長を筆頭に牧場スタッフ数人とテレビ観戦でした。

「芝で大丈夫なの?」とみんなに言われる中、僕は「普通はダートですよね~。まぁ今回は新馬戦なので記念の芝出走。次からはダートですよ」と。

 ところが、みんなの予想をいい意味で裏切るデビュー勝ち。当然僕は「ほらほらほら、ねっ!勝ったでしょ!勝てると思ったから芝でおろしたに決まってるじゃないっすかー!」と手のひら返し(笑)。それもあり、以降は芝路線を歩むことになりました。

 そんな中で迎えたのが待望のダート戦だった前走の根岸Sです。調教で乗っていても間違いなくダート向きの走りでしたし、実際のレースでも⑤着と今後、ダート馬として歩んでいくには十分な走りでした。

 そして今回が愛知杯。はい、芝です。というのも、みんながいろいろと考え、辿り着いた答えは「二刀流でいきましょう」でした。

 一般的に新馬戦を迎えるにあたり、芝、ダート、距離……。その馬に合った適性を見極める時、血統がもちろん最重視されますが、「乗った感覚」も考慮します。

 これ、どうやって見抜いてると思いますか? よく陣営のコメントで「手先が軽いので」「手先が重いので」なんて言葉を目にすることがあったはずです。

 これ、別に馬の蹄が重いわけでも、軽いわけでもなく、フットワークの素軽さを指しています。その違いはスケート選手の足の回転と、柔道選手の背負い投げくらいに大きな違いがあります。素早い回転のスケート選手寄りなら芝、力強い柔道選手寄りならダート、と言った感覚でしょうか。

 また脚の長さなども参考にしています。脚が長めなら一完歩で軽やかに推進するし、短足気味なら重戦車のように走る。これらを総合的に判断して、芝なのかダートなのかを考えるわけですが、どちらもこなせてしまう馬も存在します。

 僕が昔調教していたイーグルカフェはNHKマイルCとジャパンCダートで芝とダートのGⅠを勝ちました。イーグルカフェはアメリカのダート血統でかなりの短足タイプだった割に、跳びは大きく素軽さもあり、二刀流を実現していました。マピュースはそのイーグルカフェに近い体形をしていて、恐らくこの先も二刀流の道を歩んでいくことになるでしょう。こういった馬がいると「何十年、乗っていても馬ってわからないなぁ」と面白く思います。

 2週続けて追い切りに騎乗した田辺騎手は毎度「普通」しか言ってくれませんが、彼の辛口評価は東西合わせても1、2位を争うほど。彼とコンビを組む機会も多く、追い切りもよく一緒に乗りますが、乗った後のコメントは「普通ですね」か「イマイチですね」しか聞いたことがありません。目下の目標は彼に「いいですね~、絶好調ですね~」と言ってもらうこと。

 まぁ僕が定年する残り10年でその言葉を聞ける気はしませんが、定年までの目標のひとつでもあります(笑)。ということで、今週の愛知杯でのマピュースを是非、注目してみてくださいね。

小島良太

調教助手
美浦トレセンで30年以上、馬をつくってきた職人。サクラローレル、マンハッタンカフェ、イーグルカフェなどのGⅠ馬に携わってきた。競馬一族の出身で、交友関係は調教師、騎手、馬主、牧場関係者と東西問わずに幅広い。また、長年に渡って札幌、函館、小倉と長期間の滞在競馬もこなしている。

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