【天皇賞・秋】イクイノックス条件は一気に好転

公開日:2023年10月25日 14:00 更新日:2023年10月25日 14:00

前2走は完勝に見えても完調ではなかった

 イクイノックスは昨秋の天皇賞・秋①着→有馬記念①着で年度代表馬の座を射止めた。

 その勢いは今年に入っても止まらない。3月のドバイシーマクラシック①着→6月の宝塚記念①着とさらにタイトルを積み上げた。

 目下、GⅠ4連勝中。下半期の始動戦は連覇を狙うこの天皇賞・秋。ここを勝って次はジャパンCへ――。連勝なら、2年連続での年度代表馬、さらに歴代獲得賞金1位の座も視野に入ってくる。

 今年の2戦はレースこそ完勝だったが、それまでの道のりは決して平坦ではなかった。

 まずドバイ遠征。美浦にある国際検疫の馬房に入ってから一気に体調を崩してしまう。

 馬房のつくりもあって孤独感から馬が寂しくなり、メンタル面がやられた。食欲が落ちて、負荷をかけるトレーニングができずにいた。さらに長距離輸送で、ドバイに着いた時点で馬体重は480キロ台前半。有馬記念から10キロほど落ちていた。

 ドバイでは馬房環境が改善されたことで食欲は徐々に回復。底を打った状態から何とか上昇傾向でレースに臨んだ。決して完調とは言えない、そんな状況だった。

 だが、結果は逃げて、後続に影を踏ませず、コースレコードで3馬身半差の圧勝。この走りで国際レーティングは129ポンドで世界1位の高評価を受けた。

 その後、世界各国の主要競走が行われ、先日の凱旋門賞を6戦無敗で制したエースインパクトですら128ポンド。この半年間、歴戦の猛者に抜かれることなく、トップを維持し続けている。

 ちなみに、ドバイで②着に負かした英国馬ウエストオーバーは凱旋門賞でも1馬身4分の3差で②着に好走した。

アウェーからホームへ

 続く宝塚記念も、簡単な勝利ではなかった。

 美浦の坂路閉鎖もあったが、木村厩舎は開業以来、阪神開催で思うような結果を残せずにいた。そこで昨年あたりから栗東滞在で臨むパターンを選択していた。

 ドバイから中12週。日本への輸送、着地検疫、放牧、立ち上げ、美浦入厩、そして栗東へ移動しての調整。オーバーホールの時間が圧倒的に足りず、バランスの修正に苦心した。さらに相次ぐ環境の変化に伴い、馬体は減り、背中やトモの筋肉は物足りなく、歩様の乱れもあった。

 そんな過程でも勝つのが希代の名馬たるゆえんか。行きっぷりのいい普段とは違い、行き脚がつかず、ポジションも取れなかった。勝負どころからの反応も悪い。それでも終わってみれば、肩ムチだけ。右手前のまま4角から直線で前にいた十数頭をかわして先頭に立ってしまうほどの能力差を見せつけている。

「決していい状態ではないのに勝ってしまう。でも、宝塚記念はゴールしたらすぐに止まってしまいました。有馬記念やドバイではなかなか止まらず、向正面まで走っていた馬ですからね。難しい状況や問題でも、簡単に解けてしまう。本当に天才肌なんでしょう」と木村師は分析する。

 前2戦はアウェーでの勝利だったが、今度は久々の地元開催。勝手知ったる美浦で調整して、3戦2勝②着1回の“ホーム”東京だ。そう、条件は一気に好転する。

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