秋山真騎手は2%のアンラッキーで青森の空からトンボ帰りも乗り替わりに。騎手の節内移動の難しさ
公開日:2023年6月28日 15:00 更新日:2023年6月29日 15:20
「騎手人生で初めての経験」(秋山真)
先週日曜、函館競馬に関してJRAよりある乗り替わり発表があった。
「函館1Rのアイアンムーンは秋山真一郎(56㌔)から内田博幸(56㌔)に乗り替わる」
秋山真は、前日土曜に阪神競馬で4鞍に騎乗。10Rメイショウベッピンを乗り終えた後、同日に函館競馬場へと向かう予定であった。直線距離で約7㌔。競馬場から発着の様子が見える伊丹空港から青森空港へ。そこから、列車を乗り継ぎ、函館入りするはずが……。
「青森まで飛びましたが、濃霧で着陸できずに結局、伊丹まで引き返すことになって。午後4時40分頃の離陸で戻ってきたのが夜8時でしたね。騎手人生で初めての経験。正直、疲れましたよ」
まったく楽しめない往復1000マイル(約1620㌔)もの空の旅をして帰阪。
善後策として、その日のうちに新幹線で東京入りし、一泊して翌朝一番の函館便で羽田空港をたつプランとなったが、1Rの前検量(レース50分前まで)に間に合わないために、乗り替わりを余儀なくされたという話だ。
春~夏時期の青森空港は、オホーツク海気団からの冷たく湿った東風・やませが要因で霧が出る。また、前線通過時や低気圧が日本海を北東進する時も濃霧が発生するケースが多々ある。
対策として青森空港では、2012年より計器着陸システム「CAT-Ⅲb」を導入している。視界が悪い時にも地上からの電波で航空機を誘導するシステムに、航空灯火を増強(高カテゴリー化)して、滑走路視距離が最低100㍍まで運行可能となっている。就航率は97~98%と上昇しているから、今回の秋山真は運悪くその残り2%にハマってしまった形だったのだ。また、新千歳空港や仙台空港にダイバートできていれば、この乗り替わりは回避できた可能性もあった。騎乗予定のアイアンムーンも②着(5%で騎手の取り分は11万円)でアンラッキーであったとしか言いようがない。
「飛行機代は返ってきましたが、新幹線、宿代は自腹。その分を頑張らなきゃいけないですね(苦笑)」
最近では、天候不順や、それによる交通機関の乱れで騎手が移動できないケースは増えている。
昨年9月にはM・デムーロ、山田敬が──。
記憶に新しいのが、昨年の9月24日。台風15号がもたらした豪雨の影響により、M・デムーロは土曜中山へ向かう前日に乗り込んだ新幹線が止まり、車中泊。翌日の運転再開の見込みがなく、騎乗を取りやめた。
山田敬士も同じ。こちらは、中京へ向かう前日の新幹線が静岡駅手前で停車。何とか、静岡市内に移動し、翌日にタクシーで中京競馬場に向かったものの、1Rの前検量の時刻に間に合わずに乗り替わりとなった。そのフェルヴェンテは川田で①着となっている。移動時間は約20時間に、タクシー代約10万円と疲れのたまる一日を過ごしている。
昔から売れっ子ジョッキーの節内移動(土、日曜日で異なる競馬場に移動)は常だが、年々、前年を超す異常気象となっており、思わぬ外的要因で乗り替わりが増える可能性をはらんでいる。今後、不遇な騎手が出ない事を願いたい。