あの馬は今こうしている

2010年セントライト記念覇者クォークスター

公開日:2025年9月12日 17:00 更新日:2025年9月12日 18:26

ホーストラスト北海道で繋養

「グランデッツァと一緒に仲良く昼夜放牧しています」

 2010年のセントライト記念は、ダービー④着ゲシュタルトが1番人気だったが、単勝オッズは4倍。大混戦の中、最後方からメンバー最速の上がり3F34秒0の末脚で、逃げるヤマニンエルブを首差とらえ、菊花賞への切符をつかんだのがクォークスターだ。本番は⑨着に敗れ、その後、脚元の不安で12年4月に引退した。今どうしているのか。

 引退後は、北海道札幌市の「モモセライディングファーム」で乗馬に。第二の馬生を歩み始めると、23年11月22日に「ホーストラスト北海道」に移動していたことが分かった。酒井政明さんに話を聞いた。

「モモセさんのところでは、グランデッツァと仲良しだったこともあり、一緒にこちらに移動してきました。今でもとっても仲良く放牧地で遊んでいますよ」

 グランデッツァは2歳下の牡馬で、重賞タイトルは札幌2歳SとスプリングS、七夕賞の3つ。2頭とも社台ファームの生産で、競走馬時代の馬主は社台レースホースだった。仲良しの2頭が一緒に余生を過ごせるのは何よりだろう。ほかにどんな馬たちと暮らしているのか。

「03年のGⅢフェアリーSを勝ったマルターズヒート(牝)や種牡馬だったロードアルティマなど10頭です。ウチには、引退した繁殖牝馬もいて、牡馬は原則として受け入れていないので、アルティマは去勢してから移動してきました。今はセン馬です。ウチの施設全体としては60頭ほど繋養していますよ」

 ロードアルティマ(父シーキングザゴールド)は、名種牡馬ゴーンウェスト(父ミスタープロスペクター)の半弟という良血で、重賞未勝利ながら09年からケイアイファーム、13年からイーストスタッドで種牡馬として供用され、初年度10頭でスタートした種付け頭数は産駒の勝ち上がり率のよさから13年には63頭に激増した。

 一日の流れは?

「馬は本来、群れで生活する動物なので、ウチは馬が自然の中で暮らすのと同じように完全昼夜放牧が原則です。そうやって生活すると、馬は社会性を身につけ、とても生き生きとした表情を見せてくれます。毎朝、集牧したときに麦やミネラルなどの添加飼料を与えるときに、検温や馬体チェックを行います。そこで問題がなければ、放牧です。クォークスターもグランデッツァも2頭とも元気で、健康面の問題はありません」

10ヘクタール10頭を1ユニットとして管理

 放牧地はどれくらい広いのか。

「過放牧にならないように広さと頭数を保つため10ヘクタールで10頭を1ユニットとしています。草地や樹林、竹林、水場、砂場があって、シェルター(退避小屋)を備えていますが、シェルターにいることはほとんどなく、多くは草地を走り回ったり、草を食べたり、砂遊びしたり、木陰で休んだりしています。元気な馬なら、馬の気分に任せ、自由に自然の中で過ごすのがウチのスタイルです」

 北海道は、冬の寒さが厳しく、青草が生えないが……。

「そうなんです。冬は放牧地に乾燥牧草を用意しておき、いつでも食べられるようにしています。ですから、エサの心配はありません。馬は寒さに強く、暑さに弱いので、これから寒くなる方が元気です。夏にもっさりしていた馬も、シャキッとします」

 もちろん、ケガや病気、体調を崩した馬、あるいは年老いた馬などは、昼夜放牧から外れて管理するという。

「病気などの馬は、一頭一頭の状態や症状によって対応が変わり、状態の悪さに応じて、ケアパドック→追込厩舎付パドック→厩舎に移ります。ケアパドックは事務所の周りにある5ヘクタールほどのパドックで、治療や特別食、馬服を着せるなどのケアが必要な馬が入り、追込厩舎付はより重症な馬を個別に管理し、厩舎はさらに問題のある馬です」

 馬にとって自由な生活を送れる一方、問題があればきめ細かいケアが受けられることが分かるだろう。馬の養老牧場としては、理想的かもしれない。その充実ぶりが馬主に理解され、数多くの馬が預けられている。

 前述した2頭とは別の放牧地などには、エイシンキャメロン(1998年GⅡデイリー杯3歳Sなど重賞2勝)、ヤマニンキングリー(09年GⅡ札幌記念など重賞3勝)、セイコーライコウ(14年GⅢアイビスSD)、ナカヤマナイト(13年中山記念など重賞3勝)なども繋養され、今年5月に亡くなったダノンシャンティも種牡馬引退後はここで余生を過ごしたそうで、夏休みにはクォークスターやグランデッツァを含めてこれらの馬のファンが数多く訪れたという。

「ウチには3種類の馬がいて、JRAの重賞を勝ったことがある功労馬が1つで、馬主さんから預託料を頂いて預かる自馬が2つ目で、3つ目が馬の里親制度であるスポンサーホース(1口月額3000円)です。クォークスターとグランデッツァはスポンサー功労馬で2頭とも満口ですが、パッションダンス(16年GⅢ新潟大賞典など重賞3勝)やメジロロンザン(04年JGⅡ東京ハイジャンプなど重賞2勝)など満口になっていない馬もいますから、ファンの方はぜひご支援ください」

 まずは牧場を訪ねてみますか?

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