「あっという間です。もう一昨日かと思うくらい」。
こう語るのは南関東・川崎の山崎裕也調教師。先日、山崎裕厩舎は開業10年目を迎えました。その開業当時を振り返っての一言です。
「いや、さすがにそれは言い過ぎでしょ!」とみんなから突っ込まれていましたが、「ホント、それくらいの感覚」とその思いを噛み締めていました。
競馬関係者との会はいろいろありますが、山崎裕也調教師を含めたこの会も定期的に行われていて、この前の食事会では私の斜め前に座っていた山崎調教師にこのコーナーへの登場を打診し、快諾を得たという形です。
後日、川崎・小向のトレーニングセンターにある厩舎に赴いてお話を聞いてきました。
山崎裕也調教師。父は山崎尋美調教師(元騎手)、弟は山崎誠士騎手。さらに父方の祖父も山崎三郎元調教師、母方の祖父は滝沢久志元調教師。川崎を代表する競馬一家と言っても過言ではありません。
自然と競馬の世界にと考えるのも当然です。取材前に山崎裕也厩舎のホームページを確認し、あらためて山崎裕調教師(以下、裕也師)の経歴をみてみました。
まずは社台ファーム。そして父である山崎尋美厩舎で厩務員。その後はヨーロッパで修行しました。帰国後、山崎尋美厩舎に戻りますが、さらに千葉の下河辺牧場に身を置きます。
競馬の仕事はさまざまなものがあります。父のように騎手から調教師へ。弟のように騎手として。もちろんそのまま厩務員という形もあります。
しかし、裕也師は早々に調教師を目指しました。それはなぜなのか?
「調教師としてやりたいことがあったからですね」と即答してくれました。「父の厩舎で厩務員をしていたんですが、やはり父は経験値が高い。父が指示してみんなが動くというスタイルだったんです。もちろんそれを否定するわけではないんですけど、一番馬に触ってるのって厩務員なんですよね。1人が厩舎の馬を全部把握するのは難しい。だから、毎日馬と携わっている厩務員主体の厩舎を作りたかったんです」。
また「関わっている人みんなが競馬を楽しく感じて参加してほしい。オーナーさんもスタッフも」。例えば馬主さんにとってはなんと言っても勝つことが一番。でも勝てなくても、ちゃんとやってくれているというた満足感を得ることはできます。スタッフにとっては働きやすい環境、そしてひとつの価値を共有することで仕事自体が楽しくなる。当時はそれとはギャップのある環境だったからこそ、その思いを実現したいと思ってのことでした。
しかし……
(続きは10月23日に更新)
競馬キャスター
テレビ東京の「土曜競馬中継」などでリポーターを務め、競馬サークルに幅広い人脈をもつ。YouTubeの「日刊ゲンダイ競馬予想」で武田、大谷記者とともに出演。また、毎週水曜には「目黒貴子のアツアツ交遊録」を連載中。