3年ぶりとなる淀での天皇賞・春。昔から言われる“人馬の呼吸”が最重要点となってくる。
いかにロスなく運び、最後の直線を迎えるか。言葉では簡単だが、難易度は高い。騎手自身の重心のわずかな前後も、鞍下のスタミナを消耗させる。高低差4メートルの淀の坂を2度越すから、なおさらだろう。
淀の長丁場GⅠはこの天皇賞に菊花賞と2つ。改装前の10年で上位に位置する顔ぶれで特徴が分かる。
3位は福永(現技術調教師)で〈24110〉。“盾男”の武豊は2位。〈3139〉で、ともに③着内率は4割を超す。柔らかく乗る代表だ。
この2人の上にいるのがルメールで、〈4125〉。16年菊花賞のサトノダイヤモンドに、フィエールマンでは18年の菊花賞に19、20年の天皇賞・春と3度も淀の長丁場を制した。
ルメール騎乗のジャスティンパレスが◎。
ルメールは多才だ。前記フィエールマンでは、3戦いずれも違う勝ち方だった。特に春天連覇。4角先頭からグローリーヴェイズを首差しのいだのが19年で、翌年はハナのキセキから最後方メロディーレーンまで約3秒という縦長隊列。それを前方から約1秒9に位置する8番手。それでも、3角で他馬の進出にあわてず、ひと呼吸、ふた呼吸と待って追い出し、きっちりと差し切った。淀外回りでの力の引き出し方を熟知している。
「ジャスティンパレスはスタミナがあり、最後までいいペースを維持することができる。リラックスでき、最後にいい瞬発力を使ったら勝てると思います」
自信のコメントは自ら手綱を取った最終追いの後。雨の重いCウッドを馬なりで11秒7―12秒0のフィニッシュ。好感触を得ての発言だ。
前走の阪神大賞典での満点回答もいいイメージにつながっているか。2歳秋以来のコンビも課題の発馬を決めて3番手のイン。難なく呼吸を合わせて折り合った。残り300メートルで押し込められずに追えていれば、0秒3差以上に着差が開いた競馬。完勝だった。
前走は440~450キロ台の3歳時とは違う472キロ。明らかに肩から胸前、さらには腰回りとひと回りパワーアップし、「今はそれを攻めても維持できる。充実しています」と杉山晴師だ。明け4歳の勢いは十分。この人馬を信頼する。
1974年、愛知県で生を受ける。名前の通りのザ・長男。
大阪での学生時代、暇な週末は競馬場に通い、アルバイトをきっかけに日刊ゲンダイへ。栗東トレセンデビューは忘れもしない99年3月24日。毎日杯の週で、初めて取材した馬は連勝中だったテイエムオペラオー。以降、同馬に魅せられ、1勝の難しさ、負けに不思議の負けなしと、学ばせてもらったことは実に多い。
グリーンチャンネルでパドック解説をさせていただいているが、パドック党であり、大の馬体好き。返し馬をワンセットで見たい派。現場、TV観戦でもパドックが見られなかったレースの馬券は買わないと決めている。
余談だが、HTB「水曜どうでしょう」の大ファン。こんこんと湧き出る清水のように名言を連発する大泉洋氏を尊敬してやまない。もちろん、“藩士”ゆえにDVD全30巻を所持。