路盤から改修した〝新〟京都競馬場のコース、その特徴を探る

公開日:2023年4月19日 14:00 更新日:2023年4月19日 19:58

902日ぶりの京都開催は良好な芝

 今週土曜、京都競馬場が「センテニアル・パーク京都競馬場」としてグランドオープンする。
 
 2022年11月1日の開催最終日から902日ぶり。新スタンド、新パドックは既報のとおりだが、今回は約2年5カ月間と長期の休止期間を利用して、芝、ダートの両コースともに路盤から敷き直す大規模な馬場改造工事も行われた。ここではコースにスポットを当ててみる。

 まず、前記したように芝、ダートともに最下層の古い路盤を撤去した。これは、1994年以来、30年ぶり。大リニューアル工事となった。

 やはり、注目は芝コース。先日の騎手の試走会、マスコミ用の内覧会でも映像、写真と発表されたが、まさに緑の絨毯だ。

 ベースとなる路床。まずこれを造り、上に岩石を砕いた砕石からなる下層路盤。さらに、下は山砂、上は芝が根を張るための2層の上層路盤をつくって、再上層に芝を張る形だ。芝は場所により2回、少なくとも1度は夏を越す期間で定着させている。根付きは非常に良好だ。

 また、全11万平方メートルのうち、約5万平方メートルをJRA開発の野芝「エクイターフ」を使用する。この野芝は地上と平行、横に根を伸ばして育成範囲を広げるランナーと呼ばれる匍匐茎(ほふくけい)の層が厚くなる。他場でも使われるが、新京都ではその面積が増えた。「馬の蹄による馬場の傷みが減り、馬の安全も向上する」(京都競馬場馬場造園課・東課長)ことが期待されている。ここに洋芝のイタリアンライグラスをオーバーシードした芝となっている。

「生育する期間があり、脚掛かりのいい、走りやすい馬場」と同課長で、実際に、先日の騎手による走行会でも「クッション性がいい」とジョッキー達には好評だった。

芝コースは排水性も大幅向上

 その芝コースは、排水性も向上にも取り組んだ。透水性の管を地下へ埋設。地上、土中の水を集水して排水路へと導通させる暗渠排水管をコースに対して斜め45度の角度、魚の骨のように設置した。

「まだ重、不良の状態にならない。それだけ、水はけがいい」(東課長)から、雨水が抜けるスピードが増したと思われる。

 86年以降、不良馬場で行われた京都芝GⅠは3度。シンコウラブリイが勝った93年マイルCSに、エピファネイアの13年菊花賞。そして、17年キセキの菊花賞。いずれも秋だが、馬場改良が進み、年々、芝不良での開催日は減少傾向(前10年で8開催日)にあった。さらに改善された新京都では〝水煙を上げながらの追い合い〟は古い表現となる可能性も。とにかく、絶好のコンディションでオープニングを迎えるのは間違いない。

鍵は向正面~3角~4角の4㍍坂

 同時に、ウマ娘などのヒットにより、改修期間の2年間で競馬ファンとなった方も多い。

 あらためて、京都競馬場のコースの形状を説明したい。京都の特徴のひとつが、コース中央にある池。甲子園球場の1・5倍の大きさの池を囲むように、内から障害、ダート、芝の3コースからなり、時計回りの右回りだ。

 芝は阪神同様に、内周り、外回りとコースが分かれる。内回りは1周1782・8㍍(Aコース)で直線は328・4㍍。千二、千四、千六に秋華賞が舞台の二千。千四、千六の内回りは2歳戦で使用される設定だ。3角からその外周にある外回りコースは、1894㍍で直線403・7㍍。

 ともに直線はほぼフラットだが、京都コースにも大きな坂がある。

〝名物〟の3角の坂だ。外回りでいえば、その高低差は4㍍。向正面の残り1200㍍地点からの2Fで4㍍上がり、3角の頂点から右コーナーを曲がりつつ、4角までの1F弱で一気に約4㍍も下る高低差レイアウト。下った地点でゴールまで残り600㍍強だから、力む馬には難所となる。

 この外回りを「面白いコース」と話すのが、京都芝で273勝を挙げ、96年エリザベス女王杯(ダンスパートナー)、07年菊花賞(アサクサキングス)、09年秋華賞(レッドディザイア)でGⅠ3勝、京都記念、日経新春杯等のGⅡ9勝の元ジョッキー・四位師。

「3角頂点の勝負どころで馬がちょうど、スピードに乗っているところに下りがある。勢いをつけて下るか、我慢しながら下るか馬の特徴によって使い分けなければいけない」と解説する。

 この坂を2度走るのが芝三千二百㍍の天皇賞・春であり、「1周目はゆっくり上って、ゆっくり下る」が定石とされる。

 対して、内回りコースは直線がフラットで短いために〝前残り〟が多い。いい位置で運べるかが鍵となる。

武豊は〝ザ・京都〟の血統馬で開幕戦Vを狙う

 86年のデータ以降、京都芝コースで最も勝っているのが武豊。676勝で重賞勝ちは86を数える。

 うち、GⅠは23勝で88年菊花賞のスーパークリークに始まり、メジロマックイーン、ダンスインザダーク、スペシャルウィーク、アドマヤグルーヴにディープインパクト。そして、キタサンブラック。数々の馬を名馬へと導いた。

 現役では川田(269勝)、岩田康(234勝)、池添(219勝)、幸(203勝)と続く。

 仕掛けどころを知るベテラン勢に対し、改装中にデビューした若手は京都を知らない。関西でいえば、37期生の・小沢、角田和、永島、古川奈、松本に、38期生の今村、大久保、川端、角田河、鷲頭。もちろん、今年デビューの河原田、田口も同じ。どう誘導するかが見どころとなる。

 グランドオープンの京都1Rにも芝レースが組まれた。1Rは内回りの芝二千㍍だ。最も京都で勝つ〝名手〟武豊は、友道厩舎スイープアワーズの手綱を取る。同馬の父は淀で無敗3冠を決めたディープインパクトで、母も京都の秋華賞、エリザベス女王杯を制したスイープトウショウ。〝ザ・京都〟の血統でオープニングVを狙っている。

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