亀井記者の血統ロックオン

予想以上の後傾ラップでミスプロ系のスピードの持続力が生きたスプリンターズS

公開日:2025年9月30日 07:00 更新日:2025年9月30日 07:00

 秋のGⅠシリーズ開幕戦は大波乱の決着。勝ったウインカーネリアンは8歳にしてGⅠ初制覇となった。

 中山6F戦はスタートから下るコース形態。そのため序盤からスピードに乗って前傾ラップになりやすい。前10年のスプリンターズSでも前半3Fが後半の3Fより遅かったのは15、17年の2度だけ。それでも17年が34秒1=34秒0、15年は33秒9=33秒7とほぼイーブンに近い。それを思えば今年の33秒7=33秒2と上がりが0秒5も速いのはまさにレアケースだった。

 この流れを存分に生かしたのが①②着馬だ。①着ウインカーネリアンが母の父ミスプロ系、②着ジューンブレアが父ミスプロ系とスピードの持続力勝負に強い血を持っていた。ジューンブレアが道中ハナなら、ウインカーネリアンは2番手からの追走。中山の短い直線で勝ち馬に番手から上がり3F33秒0を使われては、さすがに後続は手も足も出ない。スプリンターズSは内枠有利とも言われるがスッと先行できるからであって、今回は行きたい馬がおらず、外枠からスムーズに前のポジションを取れたことも勝負の分かれ目となった。

 ウインカーネリアンはスクリーンヒーロー産駒。もともとは関屋記念、東京新聞杯とマイル重賞で2勝を挙げていたが、母の父がマイネルラヴで母が6F戦で4勝のコスモクリスタル。年齢を重ねて徐々に距離レンジが短くなってきてる印象だ。スプリント戦を使い出してから今回が初勝利だが、④②③②⑤着と一度も掲示板を外していない。年齢が年齢だけに今後どうするかは分からないが、個人的に見てみたいのは年末の香港スプリント。シャティンは洋芝で北海道の馬場に近いイメージ。ロベルト系モーリス産駒の同馬は向きそうなイメージがある。

 ②着ジューンブレアは父が米国3冠馬のアメリカンファラオで産駒はダート向きの産駒が多いのだが、この馬は母ラップオブラグジュアリーがガリレオ産駒。全姉のアップはアイルランドで重賞を2勝。半兄ダッチアートも欧州で6FGⅠ2勝と母系の影響が強く出る配合だ。自身も6F芝は7戦して4勝②着2回の好成績。ただ、母のきょうだいは早熟タイプが多かっただけに、今後は成長できるかがカギとなる。

 ナムラクレアが3年連続での③着。父ミッキーアイルがディープインパクト直子で、同馬も瞬発力勝負のタイプ。今回の展開でもメンバー最速の上がリ32秒7をマークしたのはさすがだと言える。ただ、3年連続②着で直線の長い中京、高松宮記念の方がレースがしやすいタイプなのは間違いない。

1番人気サトノレーヴ④着で気になるロードカナロア産駒の適性

 1番人気のサトノレーヴが④着。昨年のこのレースは1番人気で⑦着だったが、当時は前半3F32秒1のハイラップに戸惑った感じもあった。それだけに今年のペースならもう少し走れるかと思ったのだが、この馬の持ち時計だけは走っており1分6秒台の決着はやや時計が速すぎたか。あともう気になるのはロードカナロア産駒の不振。はこれまでスプリンターズSは〈01113〉で勝ち鞍なし。中山6F芝の重賞でも〈12127〉と結果が出てない。今回の内容を見てもこの舞台は得意ではないのかもしれない。

 もう1頭、思ったほど走れなかったのが⑥着(同着)のママコチャ。一昨年の勝ち馬でクロフネ×キングカメハメハと勝ち馬と同じ持続力型のスプリンター。本来なら今回のようなペースを前目につけて抜け出すレースは得意とするタイプだ。実際、今春に同舞台で行われたオーシャンSでは前後半の3F33秒7=33秒4の流れを3番手から抜け出している。枠順も2枠4番と前のポジションをを取りやすいところだったのだが……。

 土曜に阪神で行われたシリウスSも波乱の決着。勝ったのは8番人気のホウオウルーレット。父がヘイロー系のロージズインメイでダートの中距離型。母オメガフレグランスは千八で3勝。ルーレットの半兄には中距離のダート路線で活躍したオメガパフュームもいる。

 金曜発行の自身のコラムにも書いたのだが、直線の急坂を2度登る阪神二千ダートは見た目以上にスタミナを要するコース。スタミナ向きの配合が舞台にマッチしたのだろう。配合的にもパワー型のダート馬で地方交流でも力を発揮できそうなイメージあり、今後の活躍が期待できそう。

 2連勝中で1番人気に推されたテーオーパスワードは好位追走からいつもほどの伸びは見られず⑦着。こちらは父がダートのマイル~中距離で活躍したコパノリッキーなのだが、祖母ナイキフェイバーが6F戦で3勝、母テーオーレイチェルも千二~千四で3勝と母系は短距離型。パスワード自身がミスプロの5×4のクロスも持っている分、スタミナ面でやや見劣る。加えて、ハンデ戦で57・5㌔の斤量を背負った分もあったか。同じ二千でも地方の平坦コースなら克服は可能だと思うが、今回に関しては条件が合わなかったと考えていいだろう。

亀井辰之介

 競馬好きの父親の影響もあり、子供のころから競馬中継を一緒に観戦。最初は父親が馬券を当てるともらえる臨時の小遣いが目当てだったが(ただし、父は穴党だったため、あまり的中した記憶はない……)、ある日、シンボリルドルフといういかにも強そうな名前の馬が、強く勝つ姿に魅入られたのが競馬ファンになったはじまり。
 その後はテレビゲームの競馬ソフトにどっぷりハマり、今までに遊んできた競馬ゲームは数知れず。その時に競走馬の配合の奥深さを知り、血統に興味を持ったのが今の予想スタイルの根幹か。現在でもたまにゲームをたしなみ、好きだった競走馬の産駒を活躍させることが小さな喜び。
 予想スタイルはもちろん“血統”。各馬の血統を分析。得手、不得手を見極め得意条件に出走する時に狙い撃ち! 好配当を目指します。

著者詳細、記事一覧へ

最新記事一覧

  • アクセスランキング
  • 週間