秋のGⅠシリーズ開幕戦は大波乱の決着。勝ったウインカーネリアンは8歳にしてGⅠ初制覇となった。
中山6F戦はスタートから下るコース形態。そのため序盤からスピードに乗って前傾ラップになりやすい。前10年のスプリンターズSでも前半3Fが後半の3Fより遅かったのは15、17年の2度だけ。それでも17年が34秒1=34秒0、15年は33秒9=33秒7とほぼイーブンに近い。それを思えば今年の33秒7=33秒2と上がりが0秒5も速いのはまさにレアケースだった。
この流れを存分に生かしたのが①②着馬だ。①着ウインカーネリアンが母の父ミスプロ系、②着ジューンブレアが父ミスプロ系とスピードの持続力勝負に強い血を持っていた。ジューンブレアが道中ハナなら、ウインカーネリアンは2番手からの追走。中山の短い直線で勝ち馬に番手から上がり3F33秒0を使われては、さすがに後続は手も足も出ない。スプリンターズSは内枠有利とも言われるがスッと先行できるからであって、今回は行きたい馬がおらず、外枠からスムーズに前のポジションを取れたことも勝負の分かれ目となった。
ウインカーネリアンはスクリーンヒーロー産駒。もともとは関屋記念、東京新聞杯とマイル重賞で2勝を挙げていたが、母の父がマイネルラヴで母が6F戦で4勝のコスモクリスタル。年齢を重ねて徐々に距離レンジが短くなってきてる印象だ。スプリント戦を使い出してから今回が初勝利だが、④②③②⑤着と一度も掲示板を外していない。年齢が年齢だけに今後どうするかは分からないが、個人的に見てみたいのは年末の香港スプリント。シャティンは洋芝で北海道の馬場に近いイメージ。ロベルト系モーリス産駒の同馬は向きそうなイメージがある。
②着ジューンブレアは父が米国3冠馬のアメリカンファラオで産駒はダート向きの産駒が多いのだが、この馬は母ラップオブラグジュアリーがガリレオ産駒。全姉のアップはアイルランドで重賞を2勝。半兄ダッチアートも欧州で6FGⅠ2勝と母系の影響が強く出る配合だ。自身も6F芝は7戦して4勝②着2回の好成績。ただ、母のきょうだいは早熟タイプが多かっただけに、今後は成長できるかがカギとなる。
ナムラクレアが3年連続での③着。父ミッキーアイルがディープインパクト直子で、同馬も瞬発力勝負のタイプ。今回の展開でもメンバー最速の上がリ32秒7をマークしたのはさすがだと言える。ただ、3年連続②着で直線の長い中京、高松宮記念の方がレースがしやすいタイプなのは間違いない。
1番人気サトノレーヴ④着で気になるロードカナロア産駒の適性
1番人気のサトノレーヴが④着。昨年のこのレースは1番人気で⑦着だったが、当時は前半3F32秒1のハイラップに戸惑った感じもあった。それだけに今年のペースならもう少し走れるかと思ったのだが、この馬の持ち時計だけは走っており1分6秒台の決着はやや時計が速すぎたか。あともう気になるのはロードカナロア産駒の不振。はこれまでスプリンターズSは〈01113〉で勝ち鞍なし。中山6F芝の重賞でも〈12127〉と結果が出てない。今回の内容を見てもこの舞台は得意ではないのかもしれない。
もう1頭、思ったほど走れなかったのが⑥着(同着)のママコチャ。一昨年の勝ち馬でクロフネ×キングカメハメハと勝ち馬と同じ持続力型のスプリンター。本来なら今回のようなペースを前目につけて抜け出すレースは得意とするタイプだ。実際、今春に同舞台で行われたオーシャンSでは前後半の3F33秒7=33秒4の流れを3番手から抜け出している。枠順も2枠4番と前のポジションをを取りやすいところだったのだが……。
土曜に阪神で行われたシリウスSも波乱の決着。勝ったのは8番人気のホウオウルーレット。父がヘイロー系のロージズインメイでダートの中距離型。母オメガフレグランスは千八で3勝。ルーレットの半兄には中距離のダート路線で活躍したオメガパフュームもいる。
金曜発行の自身のコラムにも書いたのだが、直線の急坂を2度登る阪神二千ダートは見た目以上にスタミナを要するコース。スタミナ向きの配合が舞台にマッチしたのだろう。配合的にもパワー型のダート馬で地方交流でも力を発揮できそうなイメージあり、今後の活躍が期待できそう。
2連勝中で1番人気に推されたテーオーパスワードは好位追走からいつもほどの伸びは見られず⑦着。こちらは父がダートのマイル~中距離で活躍したコパノリッキーなのだが、祖母ナイキフェイバーが6F戦で3勝、母テーオーレイチェルも千二~千四で3勝と母系は短距離型。パスワード自身がミスプロの5×4のクロスも持っている分、スタミナ面でやや見劣る。加えて、ハンデ戦で57・5㌔の斤量を背負った分もあったか。同じ二千でも地方の平坦コースなら克服は可能だと思うが、今回に関しては条件が合わなかったと考えていいだろう。