追悼 松本好雄オーナー ずっと続いてほしい「人がいて、馬がいて、そしてまた、人がいる」の精神
公開日:2025年9月4日 14:00 更新日:2025年9月4日 14:00
「メイショウ」の冠名で知られる馬主、松本好雄氏が、病気のため8月29日に亡くなっていたことが分かった。
代表取締役会長を務めていた㈱きしろが2日に発表。87歳だった。
松本好雄氏が競馬界に残した功績はとてつもなく大きい。
1974年に馬主登録をし、今年で51年。半世紀も続けただけでも凄いのに、8月23日の中京3R・2歳未勝利戦でメイショウハッケイが勝利、個人馬主として初となるJRA通算2000勝を達成したばかり。初出走が75年2月9日、京都6Rのチェリーパス(⑧着)で、当初はまだ冠名は使用していなかった。
近年はノーザンファームを筆頭とした大牧場生産の良血馬がGⅠなどを席巻しているが、松本オーナーは日高を中心とした中小規模の牧場との交流やつながりを重視。決して良血とは言えない馬を数多く購入し、いわば日本の馬産を長年にわたって支えてきた。
また、障害で活躍中のジョッキー、高田は自身のXで「松本好雄会長の愛馬にはJRAのほとんどのジョッキーが一度は騎乗したことがあると思います」と記した。
実際、レースデータが電子化されている86年以降だけでも(2万5792戦1883勝)、JRA、地方、海外所属を合わせて延べ422人ものジョッキーが騎乗している。勝ち鞍のトップは武豊で173勝、以下、幸の78勝、武幸現調教師の77勝と続く。
調教師ではすでに勇退している高橋成忠師が170勝。以下、高橋直元調教師が107勝、南井元調教師が97勝、飯田元調教師が95勝。
また、武豊が追悼のコメントで「親父(武邦彦元騎手、調教師)と天国で競馬談義をしてください」と語ったように、親子でメイショウと関わりを持ったケースも多数。昭和から令和の競馬史に残る数少ない方である。
現在もメイショウタバル、メイショウハリオといったGⅠ馬を所有。現役馬だけでも114頭もいる大所帯だ。
個人馬主の相続は馬主が死亡した場合、死後1カ月までは競走馬の所有名義は有効となる。しかし、これだけの頭数を相続するだけでも大変な作業である。
松本好雄氏の座右の銘は「人がいて、馬がいて、そしてまた、人がいる」。
メイショウサムソンで数多くのGⅠを制した石橋師が管理し、武豊が鞍上だったメイショウタバルの宝塚記念勝ちはまさにそれを思わせた。願わくば末永く、メイショウの冠と、この言葉が表すようなドラマのある競馬が続いてほしいものだ。