あの馬は今こうしている

2008&2010年帝王賞制覇 フリオーソ

公開日:2025年6月27日 17:00 更新日:2025年6月28日 06:30

CRステーブルで余生

 地方競馬は上半期の総決算・帝王賞が7月2日に迫る。大井のダート2000メートルで行われる名物レースを2008年と10年に制したこの馬は、8歳まで長く現役を続ける中、GⅠ級の勝ち星を6つ重ね、生涯獲得賞金は地方所属馬として最高の8億4544万円。NARグランプリで2歳から8歳まで7年連続で表彰されたのも史上最多で史上初だ。歴史に名を刻む地方のエースは、13年から種牡馬となったが、昨年で種牡馬も引退した。いまどうしているのか。

「ダーレーから移動前に去勢したけど、それでも繁殖牝馬を見ると、元気になるんだ」

 地方のレジェンドは昨年12月10日、ダーレー・ジャパンでの種牡馬生活を終えて、余生はCRステーブルで過ごすことが発表されていた。そこでCRステーブルに連絡。代表のクリス・モルさんに取材のお願いをすると、「いいよー」と快諾してくれ、話を聞いた。

「21歳で背中は下がってきたけど、気持ちは若くてめっちゃ元気。競走馬と同じようにキレイに手入れしているから毛ヅヤもいい。カイバもしっかり食べる。フリオーソもハッピーだと思うよ。めっちゃかわいい」

 クリスさんはニュージーランド出身で、15歳で騎手デビューすると、ケガをキッカケに豪州で調教師となり、初年度で重賞を制覇するなど実績を積む。15年目に引退すると、今度は米国の競走馬専門の獣医学校で知識を深め、1995年に来日した。北海道の牧場で腕を磨くと、フリオーソを管理していた船橋の名門・川島正行厩舎の厩務員となり、現役時代のフリオーソを担当していたのだ。

「担当していたのはフリオーソが4歳まで。当時からめっちゃ力持ちで、1人だと持っていかれちゃうくらい強かった。フリオーソの前に担当したシーチャリオットも強かったけど、それ以上。いまも年齢のわりにパワーがあるし、めっちゃ元気だよ。ウチは育成のほか生産もやっていて、繁殖牝馬もいる。ダーレーから移動する前に去勢したんだけど、それでも繁殖牝馬を見ると、元気になるんだよ。衰えは全然ないよ」

 クリスさんは川島厩舎の厩務員を卒業すると、北海道に牧場を開場。時間をみつけては、フリオーソの好きなバナナを持ってダーレーに会いに出向いたそうだ。

「ダーレーにいた23年はトモをケガしていたこともあり、24年は種付けを控えていたんです。でもいまはしっかりとケアして、痛いところはどこにもない。内臓も元気。とっても順調だよ」

 元気で食欲旺盛なのは健康の証しだが、旺盛すぎる食欲は問題のようで……。

「フリオーソが来てくれたから、専用の放牧地を用意したんだよ。30×10メートルくらいのところだけど、そこで毎日放牧しながら青草を食べている。時間? 短いと2~3時間、長いと5時間くらいだね。それでもちょっと太ってきたから、ウオーキングさせないとダメかなぁ」

 クリスさんの牧場は、新ひだか町にある目名共同トレーニングセンターの隣にある。トレセンにある屋外の1000メートル走路や屋内1000メートル坂路を活用して行う育成牧場からスタートし、後から生産にも乗り出すようになったという。育成で関わった名馬の1頭がカフェファラオだ。21年と22年のフェブラリーSを連覇したほか、盛岡の南部杯もモノにするなど砂の王者としておなじみだろう。

「カフェファラオが日本に来る前、堀先生が米国のトレーニングセールの調教ビデオを送ってくれたんです。すばらしい走りで、筋肉の付き方もいい。すごい馬だと思いました。性格もよくて、ゴー、ストップの指示に対しての反応もよかった。ここで育成したのは7カ月ほどですが、ビデオ映像よりもっとすごい馬でしたね」

 国をまたいで蓄えた幅広い知識は本物で、名伯楽・堀宣行調教師の信頼も厚く、カフェファラオが芝のレースを試した函館記念の後も、ファラオの管理を託されていた。そんな経験に裏打ちされた豊富な知識を求めて、若手調教師をはじめホースマンが馬づくりを学びに訪れることも少なくないという。

「フリオーソは南関東のGⅠ級のレースを次から次へと勝ってくれたすごい馬。ボクにとっては、かけがえのない存在だよ。年齢的にガンコなおじいちゃんかもしれないけど、ボクにとってはかわいい。この馬にとっては、亡くなるまでウチにいるのが幸せで、ハッピーだと思う。ボクもハッピーだよ」

 馬への愛があふれるクリスさん、第2、第3のフリオーソを送り出してくれることを期待してますよ!

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