目黒貴子のアツアツ交遊録

〈112〉新天地で奮闘する Mr.PINKこと内田利雄さん(4)

公開日:2025年6月18日 14:00 更新日:2025年6月20日 10:52

(6月11日分から続く)

 さて、訓練の中には前述した競走実習というものがあります。「一度の実習で生徒たちはガラッと変わるんです。バリバリ引っかかられて持っていかれそうになっても、ちゃんと抑えることができるようになったり、馬に対する責任感が出てきたように思います。引っかかられてしまうとその馬が実習に使えないってなりますからね。」。この子たちがどう成長していくのか。楽しみ半分、大変そうとも思うのも半分。

「今日もね教官に怒られて泣いてる子いましたけどね。それをみるとこっちも涙が出そうになっちゃう」。そんなふうに生徒に寄り添いながら、温かく見守る存在でもあります。「無事に途中脱落することなく、しっかり自己管理をしてみんな揃って卒業してもらいたいですね」

 またこんなことも話してくれました。競馬がずっと続くことがないかもしれない。そういう心持ちは必要だということです。これは実際に自分が所属していた宇都宮競馬が閉鎖され、「明日からどうしよう?」と絶望感に襲われた自分の経験によるものです。

 明日が見えない。そんな中、さすらいジョッキーの道を拓いたのが内田さんであり、足利の森泰斗騎手は船橋へ、高崎の矢野貴之騎手は大井へと所属を変えました。2人とも南関東ではトップと言える成績を残しています。「誇りですよ、本当に。北関東のジョッキーがこうやって頑張ってくれてるんだからね」。

 「今はね、競馬はすごく盛り返して景気良くなっていて、それに安心することなくいろいろな努力をしていると思いますけど、これからまたそういう時代がくるかもしれないので、それに対する準備をしておいてほしいと思いますね。僕たちは潰れた競馬場を経験してますから」。やはり重みがあります。

「結局はみなさんが承諾して受け入れてくれたから、僕は騎手を続けられました。断られたらダメですからね」。そうですよね。

「技術はもちろんですけど、内田さんが受け入れられたのは人柄ですか?」と聞くと「えー、そうですねー」。あぁやっぱり面白い。しかし本当にそんな時のために、知識や人脈は備えておくべきだと。自身を振り返っての言葉は響きますね。

 するとすぐに表情を柔らかくして……。
(続きは6月25日に更新)

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