今村騎手は昨夏、初めて函館での滞在競馬に臨みました。
デビュー初年度に51勝を挙げて一世を風靡していたので、ゆっくりと取材する機会があれば、と考えていたところにチャンスが転がってきた感。“ここぞ”とばかりに騎乗馬について何度か伺いました。
結果、あれほどの勝ち鞍を量産したことに納得がいきました。ジャッジや見通しを深く洞察した上で、わかりやすい言葉でスラスラと教えてくれたからです。
ただその後、調教中のケガで戦線を離脱。「もう函館には来ないかも」との言葉を残して栗東へ戻っていったので、“もう話を聞けることはないだろうな”と残念に思っていました。
ところが、4月初旬。朝イチの馬場で函館で見かけた後ろ姿を見つけて声をかけると今村騎手。“どの馬に乗りに来たんですか”と問うと、「いえ、福島、新潟の間は美浦で調教も乗ろうと思って来たんです」とのアンサー。勇気を持って環境を変えた効果はテキメンでした。美浦滞在スタート週にソーニャシュニクで勝ち星を挙げると毎週のように勝利を重ねていきました。
そして迎えた美浦滞在の最終週。今週のオススメを聞くと「(土曜新潟9R・はやぶさ賞の)カウンターセブンですね」と即答してくれました。
「攻め馬に初めてまたがった時から非常に乗りやすい馬だなって思っていたんですよ。未勝利戦にも乗せてもらう予定だったんですが、急きょ連闘をすることになって乗れなかったんです。結果、勝ってくれたのは良かったんですけどね(笑)。その流れもあって今度は乗せてもらえることに。今週の追い切りの感触では“一本調子ではなく距離の融通が利きそう”というイメージを持てました。だから、千直にも対応してくれると期待してるんです」
相変わらず流れるように答えてくれました。
最後に“秋も美浦に?”の問いには、「ええ。いい流れに乗れましたしね。今週もしっかり結果を出してまた来たいと思っています」とキッパリ。
復活のきっかけを掴んだ彼女が、ここもきっちり決めてくれると信じて◎を打ちます。
「ベガはベガでもホクトベガ!」
93年エリザベス女王杯でホクトベガが①着でゴールに飛び込んだ瞬間の実況です。当時、浪人生でフラフラしていた自分にとっては衝撃的であり、今でも予想の根底に根付いています。
ベガはバリバリの良血馬で鞍上が武豊。牝馬3冠にリーチをかけていました。対して、ホクトベガは父がダート血統でベテランの加藤和を配したいぶし銀のコンビ。春2冠でベガに大きく後塵を拝したホクトベガに勝ち目はなさそうでしたが、見事にリベンジ。この“逆転劇”こそが競馬の醍醐味ではないでしょうか。
かつて作家の寺山修司氏は「競馬が人生の比喩なのではない、人生が競馬の比喩なのである」と評したそう。馬も人も生きている間はいつかの大逆転を狙っています。雑草でもエリートを超えるチャンスはあるはずと、きょうもトレセンを奔走しています。