【凱旋門賞】日本のファン注目の2頭 ともに満たしている勝つ条件

公開日:2024年10月3日 14:00 更新日:2024年10月4日 11:08

矢作厩舎 シンエンペラー

 凱旋門賞の発走が刻一刻と近づいている。果たして、日本のホースマンによる快挙は成し遂げられるのか。

 まずは馬。

 過去に最も勝利が期待されたのはやはり06年のディープインパクトだ。しかし、日本ではスタートがあまり良くないとされるこの馬でも現地の馬よりは速く、まさかの2番手からの競馬に。結果は3位入線も、のちに禁止薬物が出た関係で失格の処分となった。

 最も惜しかったのは言うまでもなく12年のオルフェーヴルだ。後方4番手あたりでフォルスストレートから直線へ。馬群の外を持ったままで上がってきた。そして先頭へ。あとは栄光のゴールにまっしぐら――のはずだったが、最後に内にモタれ、懸命にスミヨンが右ムチを振るったが、わずかに差されて②着に。着差は「首」だった。

 翌年もオルフェーヴルは②着だったが、この時は5馬身差。勝ったのはここまで無敗だった怪物の3歳牝馬トレヴ。翌年も凱旋門賞を制したように、相手が悪かった。

 昨年は稍重だったとはいえ、勝ち時計は2分25秒50と、欧州としては非常に速かった。日本から単騎で挑んだ牝馬スルーセブンシーズは④着。着差はおよそ3馬身ほどで、「いい馬場なら十分に戦える」と再度、思わせたものだった。

 だが、惜しいことはあっても、先頭ゴールが果たせないこのレース。今年は3歳馬シンエンペラーが挑む。

 凱旋門賞はよく3歳馬が有利といわれる。それは古馬との斤量差だ。

 古馬は59・5キロを背負うのに対して、3歳は3キロ差の56・5キロ(牝馬はさらに各1・5キロ減)。日本では2キロ差だから、この違いは大きい。

 ただ、シンエンペラーの重賞勝ちは昨年のGⅢ京都2歳Sのみ。GⅠタイトルはない。

 実は凱旋門賞が初のビッグタイトルというケースは前記の12年までさかのぼる。勝ったのはソレミア。それまでは前走のヴェルメイユ賞③着がGⅠ最高着順だった。

 近年、王道とされる愛チャンピオンS③着から挑むシンエンペラー。凱旋門賞馬ソットサスの全弟という血統は最大の魅力だが、海外経験が豊富な坂井も、このレースは初騎乗。超えなければいけない壁は決して小さくはない。

 しかし、そこは矢作厩舎だ。日本馬には難関だった〝ブリーダーズカップ〟を21年にラヴズオンリーユー、マルシュロレーヌで2勝。「芝だけでなく、ダートでも日本馬はやれる」と思わせた功績は非常に大きい。春のケンタッキーダービーはフォーエバーヤングで僅差の③着。矢作厩舎なら……とも思わせる。

武豊 アルリファー

 そしてジョッキーはやはり武豊。今回が実に11回目の挑戦となる。

 一昨年は同年のダービー馬ドウデュースで挑んだが、道悪が影響して⑲着と大敗した。今回は同じ「キーファーズ」の勝負服を着ての参戦だ。

 騎乗するアルリファーはアイルランドのジョセフ・オブライエン師が管理。あのエイダン・オブライエン師の息子で、前走の独GⅠベルリン大賞では初の二千四百メートルを難なく克服。5馬身差の圧勝を演じて、こちらもシンエンペラーと同様に評価が上がってきている。

 父ウートンバセットは7Fが最も長い勝ち鞍だが、産駒は長距離でも活躍。16年の仏ダービー馬アルマンゾル、20年の米GⅠBCフィリー&メアターフ馬のアウダーリャ(この年は9・5F)など、産駒は長めの距離もこなしている。

 1週前追い切りに騎乗するため、武豊はアイルランドへ。上々の感触を掴んでいる。

 凱旋門賞はとにかくガリレオの血が強いレースだ。16年の勝ち馬ファウンドの父はガリレオで、17、18年連覇のエネイブルの父はガリレオ産駒のナサニエル、19年ヴァルトガイストの父はガリレオ、そして20年のソットサスは母の父がそう。

 22年のアルピニスタは父の父、昨年のエースインパクトは3代父がガリレオである。

 シンエンペラーは前記の通り、ソットサスの全弟で、アルリファーは母の父がガリレオ。なら、ともに勝つ資格は十分にあるといえる。いよいよ機は熟したか。

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