【京都記念】 間もなく引退する調教師である父へ〝感謝〟の仕上げ スカーフェイスの橋田宜長調教助手
公開日:2023年2月8日 14:00 更新日:2023年3月10日 11:43
橋田厩舎は660回目の重賞挑戦
6日(火)、23年度の新規免許試験合格者が発表があった。河原田菜々さん、小林美駒さんの女性2人を含む、6名が晴れてJRA騎手としてデビューする。
また、2月末で引退する騎手、調教師の告知もされた。騎手はもちろん、福永祐一。調教師では五十嵐、池添兼、大江原、橋田、南井の東西5名。実質的には26日の日曜競馬がラスト。名門の看板を下ろすことになる。寂しくなる時期だ。
トレーナーの中で、最も重賞を制しているのが橋田満師で63勝。パッシングショットで制した90年マイルCSを皮切りに、コジーン、ベガ、グルーヴ、マックスのアドマイヤ勢。マンボ、フェニックスにサイレンスのスズカ勢でGⅠは11も制した。ウマ娘の大ヒットもあり、競馬ファン以外でもサイレンススズカを知る方は多いだろう。
勝ちも勝ったりの偉大な戦績だが、開業38年目での通算660回目となる重賞チャレンジは、この京都記念。スカーフェイスで挑む。
同馬は、橋田宜長(よしたけ)助手が担当する。苗字でお気づきの通り、師のご子息。長男である。父であり、師でもある厩舎のラスト重賞ともなりうる一戦に、自身のてがける馬を出走させるから、ちょっと縁深い。
「生まれた時から厩舎は開業していたので、父はすでに先生。小さい頃はよく厩舎へ遊びに行きましたよ。スタッフの皆さん、穏やかでたくさんのレースを勝たれていました。憧れていましたし、同じ職場で一緒に働かせて貰えたことは財産です。あと数週で橋田厩舎がなくなることはちょっと想像がつきません」
宜長助手はこう振り返る。
また、堪能な語学力を買われ、ディアドラの1年8カ月ものが海外転戦や、スズカデヴィアスの豪州遠征にも帯同した。海外メディアのインタビューに流暢な英語で応対する青年をテレビで見た方も多いだろう。そして、ディアドラでは英GⅠナッソーSで悲願のV。結果も出した。
「いえ、先生には、海外遠征という不相応で特別な、かけがえのない経験をさせていただきました。先生をはじめ、関わっていただいた全ての方々に感謝しかありません」
だからこそ、重賞の今回なのだ。
そのスカーフェイスは、昨夏の新潟記念からディセンバーS、中山金杯と出走して⑪⑩⑪着。着順こそふるわないが、2走前は内の窮屈なところから上がり35秒5。前走は最後方から大外回しから6頭をかわし、上がり35秒1。ともにメンバー最速を記録した。振り返れば、昨年の大阪杯では0秒5差の⑥着。エフフォーリアは負かしている。復調の兆しをチラリと見せた。
「(7歳の)年齢的に落ち着きが出て、掛かるところがなくなった反面、競馬も落ち着き過ぎている感じですね。今なら二千二百㍍へ延びるのはいい方に出そうです。様々な方に支えてもらいながら試行錯誤してきました。この1週間でグッときそうな感じがあるんですよ」
ホースマンにとって最高の仕事とは、現状の100%が出せる状態に愛馬を仕上げること。ここに尽きる。同時に、これは今できる最高の親孝行ともなってくる。実際に、最終追い切りは坂路4F51―12秒1。自己ベストに迫る好時計が出た。
憧れた背中を追うように。師でもあり、父でもある橋田満師への思いの丈。今回のスカーフェイスは間違いなく「感謝」のふた文字が詰まった出走となっている。