亀井記者の血統ロックオン

マイルCSはタイレコードの高速決着で東京適性の高い馬が上位

公開日:2025年11月25日 07:00 更新日:2025年11月25日 07:00

 マイルCSは1番人気のジャンタルマンタルがV。2歳時の朝日杯FS、3歳のNHKマイルC、そして今年は春秋マイルGⅠ制覇と、牡馬が出走できる芝のマイルGⅠ完全制覇を達成した。

 終わってみれば文句のつけようのない完勝だったのだが、戦前は十分に付け入るスキはあると思っていた。それは、近年のマイルCSは時計が掛かる傾向にあるいうこと。

 ジャンタルマンタルは父がミスプロ系のパレスマリス。母インディアマントゥアナがエーピーインディ系×ストームキャット系。ジャンタル自身がミスプロの4×5×7にボールドルーラーの血脈も多く持っており非常に米国色の強い配合。これまで東京マイルGⅠで2勝しているように、高速決着のマイルに向くタイプ。時計が掛かり欧州系の好走が目立つマイルCSでは東京ほどの信用は置けないと思ったのだ。

 それがレースではマイル初挑戦となるスプリンターのトウシンマカオが飛ばして千㍍通過57秒7とペースは流れた。それを3番手で追走したのがジャンタルだ。勝ち時計の1分31秒3はタイレコード。マイルCSが1分31秒台の決着となったのは14年のダノンシャークがの1分31秒5以来だ。それでいてレースの前後半の3F34秒2=33秒6。時計が出て、かつ上がりの速いのは東京のマイル戦に近い流れ。ジャンタルの得意とするレースとなったことで能力をフルに発揮できた。

 今年のマイルCSが東京マイル寄りだったのは②着以下を見ても明らかだ。②着ガイアフォースは母の父が東京マイルに強いデピュティミニスター系のクロフネ。今年の安田記念②着馬で、前走は東京マイルの富士S勝ち馬。

 ③着ウォーターリヒトもデピュティミニスター内包馬で3勝クラスからGⅢ東京新聞杯までは東京マイルで3連勝を決めたほどの舞台巧者だ。

 ④着オフトレイルは祖母がスピード勝負に豪州で千百㍍の重賞勝ち馬。父ファーも欧州でマイルGⅠ馬を出しており、前走のスワンSをレコードで制したようにスピード勝負に強いマイラーだ。

 ちなみに昨年の勝ち馬ソウルラッシュは⑥着。今春は千八のドバイターフでロマンチックウォリアーを破ったように、ルーラーシップ産駒でマイラーでも中距離寄り。実際、これまで東京マイルでは7戦して⑬②⑨③②③③着と勝てておらず、時計の速いマイル戦はやや割り引きのタイプだった。

4連勝で重賞Vのニシノティアモは曾祖母ニシノフラワーの優秀な牝系

 土曜に福島で行われた福島記念はニシノティアモが1勝クラス勝ちから4連勝で重賞初制覇を決めた。

 曾祖母にニシノフラワーがいる血筋。ニシノフラワー自身は千二~千六で活躍したが、アグネスタキオン産駒の祖母ニシノマナムスメは千六~千八で4勝。さらに英セントレジャー馬のコンデュイットを父に持つ母ニシノアモーレは千八~二千で3勝と、中・長距離型の血を重ねたことで、母系は徐々に距離がもつようになってきている。

 ティアモも父がドゥラメンテだから中距離型の配合。前走の東京千八、甲斐路S4角10番手から上がり33秒1で差し切り。サンデーの3×4にヘイローの4×5のクロスを持っており配合的には瞬発力勝負に強いイメージ。それだけに小回りの福島二千で2番手から勝ち切った今回は価値あり。4連勝は本物でかなり力をつけてきている。また、母系は繁殖としてもなかなか優秀な血筋。今後はもちろん、引退後に肌馬としてどんな仔を出すのかも楽しみな馬だ。

 1番人気のエコロヴァルツは中団から脚を伸ばして②着。トップハンデを背負っていたし、GⅠ好走馬として力は示したものの、ブラックタイド×キンカメで先行してしぶとさを生かすタイプ。千㍍1分1秒1のスローペースならもう少し前で競馬をしてほしかったところはある。

東京スポーツ杯2歳Sで上がり32秒台の①~③着馬は来年のクラシックでも要注目

 今年も好メンバーがそろった月曜の東京スポーツ杯2歳Sはキズナ産駒のパントルナイーフが未勝利勝ちから連勝。全兄は昨年のダービー卿CT勝ち馬のパラレルヴィジョン。母の半弟に中日新聞杯を制したメートルダールがいる血筋だ。勝ち時計の1分46秒0は過去10年でも3番目に速い時計。昨年のクロワデュノールよりも0秒2速いから優秀な時計だ。

 もうひとつ強調できるのは上がり3F32秒9での差し切りだったいうこと。これは21年勝ち馬のイクイノックスと並んで前10年の勝ち馬では最速タイだ。血統的にマイル~中距離のイメージで二千四百㍍のダービーはやや長いかもしれないが、皐月賞では有力候補となってきそう。

 ②着ゾロアストロは勝ち馬を上回る上がり3F32秒7。前走のサウジアラビアRCからの距離延長で良さが出た。祖母が独オークス勝ち馬のナイトマジックで、母系を遡れば3代母の父にモンズーンがいるドイツ系。ナイトマジックの父がショロコフとサドラーズウェルズ系で、ゾロアストロ自身がサドラーズの4×4のクロスをもつ欧州色の濃い配合。もっと距離があってもいい。晩成型の血も多く持っており、ここからもっと力をつけてきそうなイメージ。

 ③着ライヒスアドラーも上がり3F32秒9。勝負どころでポジションを下げたことが痛かったが、ラストはよく伸びていいる。トニービン持ちでやはり東京の大箱コースは合うのだろう。この上がり32秒台をマークした上位3頭は来年のクラシックでも中心となっていきそうだ。

亀井辰之介

 競馬好きの父親の影響もあり、子供のころから競馬中継を一緒に観戦。最初は父親が馬券を当てるともらえる臨時の小遣いが目当てだったが(ただし、父は穴党だったため、あまり的中した記憶はない……)、ある日、シンボリルドルフといういかにも強そうな名前の馬が、強く勝つ姿に魅入られたのが競馬ファンになったはじまり。
 その後はテレビゲームの競馬ソフトにどっぷりハマり、今までに遊んできた競馬ゲームは数知れず。その時に競走馬の配合の奥深さを知り、血統に興味を持ったのが今の予想スタイルの根幹か。現在でもたまにゲームをたしなみ、好きだった競走馬の産駒を活躍させることが小さな喜び。
 予想スタイルはもちろん“血統”。各馬の血統を分析。得手、不得手を見極め得意条件に出走する時に狙い撃ち! 好配当を目指します。

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