衝撃の勝ちっぷりだった。みやこSのダブルハートボンドだ。
日曜の京都は朝からの雨で芝、ダートともに稍重でのスタート。5Rで重馬場になると、9Rからダートは不良と徐々に馬場状態は悪化していた。ダートは雨で馬場が渋ると脚抜きが良くなり、スピードが出やすくなる。そのため、基本的に前の馬が有利になるのだが、あまり時計が速いと今度は前を意識しすぎるためか差しが決まるようになる。この日の京都も同じ千八ダートだった6Rが4角10=7番手、8Rも6=2番手。千二の10Rも7=4番手だから、差し有利の傾向になっていた。
みやこSも前半の千㍍通過が59秒3とレースは流れた。それを2番手追走から押し切ったのがダブルハートボンド。しかも1分47秒5のレコードでのVだから、力が違った内容だった。
血統を見ると祖母ヘヴンリープライズが米国でGⅠ8勝を挙げた名牝。母パーシステントリーも米GⅠ勝ち馬だ。母系は母の父がミスプロ系で祖母の父デピュティミニスター。父キズナがストームキャットを持っておりスピード勝負に強い配合ではあるのだが、ここまでの強さをみせるとは。
ちなみに、キズナ産駒のダートの馬場状態別の勝率を見ると
良 ・107
稍重・094
重 ・104
不良・134
と不良が一番高い。
もともと芝で走っていた種牡馬はスピード能力が高いため、パサパサで力のいるダートより、渋って時計が速い方が狙いとしては面白い傾向はあるのだが、キズナ産駒も渋った方が強いのだろう。思えば昨年、同産駒でこのレースを制したサンライズジパングも重馬場でのものだった。
②着サイモンザナドゥはアジアエクスプレス産駒で、③着ロードクロンヌはリオンディーズ産駒とともに父が芝GⅠ勝ち馬だ。サイモンは母トゥルーロマンスがアグネスデジタル×ティンバーカントリーとミスプロ系同士の配合で母は7Fの勝ち馬。こちらもスピード勝負に強い配合で。ロードクロンヌは母リラコサージュが芝のオープン勝ち馬だ。
逆に1番人気で⑦着だったアウトレンジは父がダートで2勝、全日本2歳優駿②着のレガーロ。エーピーインディ系の血を多く持っており、雨馬場は得意なタイプなのだが、道中は9→8→9番手といつもより追走に苦労していた。確かに昨年は重馬場で②着だったとはいえ勝ち時計は2秒近くも遅い。自身も昨年の走破時計(1分49秒8)を上回る1分49秒3で走っているから、生粋のダート配合では単純に時計に対応できなかったということ。結果論ではあるがレコード勝負の馬場で芝向きの軽い血を持つ馬のスピードが生きたレースだった。
同じ東京二千五百の重賞でも覚えておきたいアルゼンチン共和国杯と目黒記念の違い
東京のアルゼンチン共和国杯はミステリーウェイが逃げ切り。みやこSと同様に前に行った馬が勝ったが、こちらは後続を離しての逃げ。道中で後続を引き付け、最後は二枚腰を使って後続を振り切った。ラップを見ると最初の100㍍が7秒7、そこから5Fを11秒台で飛ばすと中盤は12秒台を4つとペースダウン。ここで脚をためてラスト3Fを11秒台で決めている。長くいい脚を使ったというよりも意外と上がり3Fの瞬発力勝負なのだ。
ちなみに前走の札幌二千六百㍍の丹頂Sもテンの2F目から5Fまで12秒台前半を並べて中盤は13秒2―13秒3―13秒3―13秒1―12秒9とペースを落とし、ラスト3F12秒4―12秒0―12秒0の上がり勝負。今回とほぼ同じ内容だから完勝だった前走を再現できている。
父が持つハーツクライと母の父がサドラーズウェルズ直子のハイシャパラルから、スタミナを受け継いでいるのはもちろんとして、父がジャスタウェイで東京巧者のトニービン持ち。父の産駒は東京で最多の67勝とその瞬発力も見逃せない。ただし、ここ2戦はハンデ戦。別定や定量戦になって同じレースができるかが今後の課題となる。
スティンガーグラスは春の目黒記念⑪着から同舞台で巻き返しての②着。血統的には阪神JF勝ち馬で7F重賞でも2勝したダノンファンタジーの半弟。ディープインパクトからキズナに父が替わったが本質的には中距離で決め手を生かすタイプだ。目黒記念は後半5Fが全て11秒台とタフな流れが向かなかったが、今回のような上がり3Fの勝負なら決め手が発揮できる。とはいえ、血統的にはもう少し距離が短い方がいいタイプだと思う。
逆に目黒記念で②着だったホーエリートは⑥着。こちらはルーラシップ×ステイゴールドとよりスタミナ勝負に強い配合。スティンガーグラスとは逆にスピードの持続力勝負に強く今回の流れは向かなかった。今回に限らず目黒記念はスタミナ勝負、アルゼンチン共和国杯は瞬発力勝負となりやすく同じ舞台の重賞でも活躍する血の傾向が替わることが多いことは覚えておきたい。
ダイヤモンドノット快勝も課題は成長力?
土曜の2歳重賞、京王杯2歳Sは東京らしい決め手勝負。母の父ディープインパクトのダイヤモンドノットが上がり33秒6で2番手から抜け出し、②着に3馬身差の快勝だった。
父ブリックスアンドモルタルも米国型ながら芝向きの瞬発力があるタイプ。同じブリックス×ディープの配合には東京マイルのサウジアラビアRCを上がり33秒5で差し切ったゴンバデカーブースがおり、東京が合う配合だ。ただし、ゴンバデもそうだが、ブリックス産駒は現状やや早熟傾向。父自身は5歳時に6連勝しており、成長力はありそうなタイプなのだが……。ダイヤモンドノットも今後どこまで成長できるかがカギとなる。




























