雨中の決戦となった菊花賞。制したのはドゥラメンテ産駒のエネルジコだった。
春は無傷の3連勝で青葉賞を制したものの、体調が整わずにダービーをパス。結果、ここで無理をしなかったことがラスト1冠へとつながったのだろう。
この勝利をみてあらためて残念だと思ったのがドゥラメンテの早逝だ。エネルジコらが最終世代で、20年のデビューからわずか5世代ながらGⅠ馬8頭で計14勝。特に菊花賞は21年タイトルホルダー、23年ドゥレッツァに続く3勝目だ。菊花賞には産駒は8頭しか参戦していないのだから驚異的な数字といえる。父子ダービー制覇達成こそならなかったが、この3頭に加え、NHKマイルC勝ち馬シャンパンカラーにスプリンターズSを制したルガルと、中・長距離、マイル、スプリントの各分野でGⅠ馬を出したことも種牡馬としてのポテンシャルの高さを証しだろう。
血統的にも祖母エアグルーヴで父がキングカメハメハ。母の父サンデーサイレンンス、祖母の父トニービン、曾祖母の父ノーザンテーストと日本の競馬界を中心を担ってきた馬が凝縮された配合もロマンあふれるもの。なんとかこの優秀な血を後世に残す後継種牡馬が出てきてほしいものだ。
エネルジコに話を戻そう。母エノラが独オークス勝ち馬で、ドイツ牝系。タフな馬場に強く成長力に富む血なのだが、母の父ノヴェルは英マイルGⅠサセックスSの勝ち馬。その半兄には2歳時に欧州で6F~8FのGⅠを3勝、米国でもBCジュヴェナイルを制しの欧州、米国の両方で最優秀2歳牡馬に輝いたアラジがいる。母の父がスピード型で、結局は父が中、長距離型で母系にスピード型に近く近年の菊花賞のトレンドに近い配合だった。加えて、母系にニジンスキーを持つ点は前記ドゥレッツァと同じ。初距離、初の右回りを克服しての戴冠はやはり適性の高さに他ならないだろう。
ただ、母の父はスピード型とはいえ、全体的に見れば欧州色の強い配合でスピードの持続力で勝負するタイプ。今回は稍重に加え、スローでレースが流れたこともこの馬にはレースがしやすかった。実際、ここまでハイペースの競馬を経験したことはなく、今後は時計の速いレースへの対応がカギとなってくる。
キズナ産駒が菊花賞初連対 父の父ディープに続くか、それとも…
②着はキズナ産駒のエリキング。菊花賞で強さを見せるドゥラメンテ産駒とは対照的にキズナ産駒は<01011>。今回が初の馬券圏だった。ただ、キズナ産駒で過去の三千超のレースを勝ったのは阪神大賞典を連覇したディープボンドだけ。GⅠ勝ちもマイルで3勝、二千で1勝だから距離が延びて積極的に買いたい種牡馬ではないのは確かではある。
とはいえ、もともと父の父ディープインパクトの産駒も最初のころは三千超のGⅠでなかなか勝てず、長距離GⅠは鬼門と言われた時期もある。それが結局、菊花賞では通算5勝、天皇賞・春も4勝を挙げている。この連対をきっかけに今後はディープと同じく長距離でもGⅠ馬を輩出するのか。それともキズナ自身がストームキャットの血を持っており、やはり距離には限界があるのか。今後の同馬の走りに注目したい。
③着はレイデオロ産駒のエキサイトバイオ。同産駒は昨年のアドマヤテラに続き、初年度から2年連続で馬券圏を確保している。このコラムでもたびたびレイデオロ産駒はスタミナ型が多いと書いてきたが、あたらめてそのステイヤー適性を示した形だ。母系にフレンチデピュティを持ち、母がアニメイトバイオは千四のサフラン賞をレコード勝ちと母系にはスピードの裏付けがあった。
父が中・長距離型×母の父スピードタイプで自身の◎だったジョバンニは⑧着。中団の内を追走も勝負どころでは馬群に包まれ、4角では16番手に。外めからスムーズにポジションを上げた①②着とは対照的な競馬。しかもラストは馬場の悪い内を走らされることに。それでいて上がり3Fはエリキングと同じ35秒2とメンバー3位タイである。スムーズなレースだったらと思わせるもの。ただ、距離は全く問題なさそうな内容だったし、今後の巻き返しに期待したい。
人気馬どころでは3番人気のショウヘイが⑭着。こちらは父サートゥルナーリアがロードカナロアの直子。産駒の実績も千八で最多の23勝、続いて千六16勝、二千15勝だからマイル~中距離が適性距離。道中も折り合いに苦労していたし、三千は単純に適性距離ではなかったということ。今回の敗戦はオミットしていい。
東京マイルで瞬発力の有無が明暗を分けたアルテミスS
土曜に東京で行われたアルテミスSはフィロステファニが3番手から抜け出し。東京マイルで瞬発力勝負になりやすいレースなのだが、今回も前後半の3F35秒2=34秒5。エピファネイア産駒はロベルト系でも決め手に優れた馬が多く、フィロステファニもデビュー戦の新潟マイルが上がり3Fはメンバー最速の32秒6。それを素直に信じて正解だった。
9番人気の②着ミツカネベネラは同舞台の富士Sでも好走が目立った東京マイル巧者が多いデピュティミニスター内包馬。③着タイセイボーグは新潟で上がり33秒台を連発とインディチャンプ産駒にして決め手があると思い注目していた馬。◎▲○の3頭での決着で3連単7万円の決着は非常においしかった。
1番人気で⑤着だったマルガはモーリス産駒でシラユキヒメの牝系。スピードの持続力が武器で今回のような瞬発力勝負は苦手とするタイプ。半姉ソダシはこのレースを勝っているが同馬は父がクロフネでデピュティミニスター系。その違いだろう。



























