【特別寄稿】目黒貴子のスイス・サンモリッツ競馬場ルポ(前編)
公開日:2024年2月22日 14:00 更新日:2024年3月6日 09:50
幻想的な世界に魅せられた
「言ってみるもんだな」
こんなふうに思ったことありませんか? まさか実現するなんて。ひょんなことからスイス行きが決まり、その日程が狙っているイベントとなんとピッタリ。でも、まさか……。滞在先からけっこう距離もあるし……。しかし、思いきって口にしてみたところ、「せっかくなんだし、目黒さんが行きたいんであれば」とすんなり快諾。ということで行ってまいりました。スイス、サンモリッツの氷上競馬。
今年の開催は2月4、11、18日の3日間。そのうちの最初の4日の開催に行くことが決定。
サンモリッツ駅からすぐ下に広がるサンモリッツ湖が冬場は氷の世界へと姿を変え、そこで競馬が開催されるのです。心配なのは本当に開催されるかどうか。だって“とっても寒いから覚悟していけ”と言われていたスイス自体が暖かい。
はて? サンモリッツ湖が凍らないなんてこともあるんだろうか? 自然が相手だけに安定して開催にこぎつけるのは大変だろうな。直前まで中止になるというニュースはないか……ネットで随分確認しました。
開催前日の2月3日。不安と期待が交錯しながらサンモリッツ駅に降り立ち、そこから湖を眺めると、真っ白の湖面にはたくさんのテントが立っていて、準備が着々と進んでいるようで不安は一気に解消。予定通り開催されるようです。
当日。空は青く燦々と太陽の光が降り注ぎ、しかし空気はピリッと冷たい朝。開門の10時30分を前にゲートにはすでに大勢の人が並んでいます。その人々を見ると、ロングの毛皮のコートを着たご婦人、見たことのないような奇麗なブルーのブーツを履いた紳士。多くの人が教育された(全く吠えない)犬を連れて一緒に開門を待つ姿は、ここだけでしか見ることができない光景。多くのセレブたちが集うことでも有名な開催です。
そして「ホワイトターフ」と銘打った、世界でここだけの競馬が始まります。
真っ青な空と真っ白な雪面に太陽の光が反射して、とても眩しい。レースが始まる頃にはダウンジャケットを脱いでも平気なくらいの暖かさ。そんな中、第1レースはTRABRENNENという繋駕速歩競走(ハーネス)。騎手が乗る2輪車の車輪のところが細いスキー板のようなものになっています。せっかくだからと最前列で観戦。馬が走ると舞い上がる雪煙が火照った顔に当たって気持ちいい。氷上競馬とは言っても、凍った湖に15センチの雪が圧雪されているので、滑ってしまうんじゃないかという心配も杞憂に終わりました。それにしても白いターフを駆け抜ける馬たちの姿はまさに幻想的です。
第2レース以降のお話はまた来週に。