東西トレセンを駆け回るゲンダイの現場記者たちは、それぞれ担当厩舎を抱えている。長年、取材を続ける中、記録だけでなく記憶に残る名馬との出会いも。厩舎関係者とともに、その懐かしい足跡をたどってみる。第5回は美浦・外山記者の忘れられないあの馬――。
新潟外回り二千の予想をするたび思い出す
新潟競馬場は01年に大改装。右回りから左回りになり、直線千メートルが新設。外回りではJRA最長の直線658・7メートルと、それ以前とは大きく様相が変わり、“スピード”が売りのコースへ変貌しました。
そこで、平地芝のレコードタイムを調べてみると、基準タイムの距離がまだ2つ残っています。
いずれも外回りで、千八サイレントセイバー(佐藤全厩舎)=1分44秒6、二千ツジノワンダー(清水美厩舎)=1分56秒4です。
中でも衝撃的だったのが二千のツジノワンダー。7月14日、こけら落としの初日10R。準オープンのNiLS21Sでマークされた快記録でした。
それまでの日本レコードが97年京都、オーストラリアTでゼネラリスト(シンザン記念馬)がマークした1分57秒5。これを1秒1も更新したのだから、「新潟競馬場、恐るべし」と驚嘆したのをよく覚えています。
そのツジノワンダーを担当していたのは、現在、和田正一郎厩舎であのオジュウチョウサンを担当している長沼厩務員。
「新装初日だけに本馬場入場で芝を歩いた時に“硬いな”って思ったね。レースは大逃げ(前半5F57秒6)のロードブレーブを早めに捕まえに動いて競り落としたんだ。それにしてもステイヤーのメジロマックイーン産駒があんな時計で勝つんだから面白いもんだよ」
ちなみに②着ロードブレーブは目黒記念⑤着の実績馬。また、④着ウインマーベラスにいたってはその後、障害重賞4勝、中山大障害でも②着の名ジャンパーとなりました。
超高速決着でスタミナタイプの馬が活躍したのは何とも興味深いところ。スピードの持続力はスタミナがあればこそ、ということなんでしょうね。
今でもこの条件を予想するたび、レコード欄を見ては、まずその手の馬を探してしまう自分がいます。
さて、今夏、外回り二千はGⅢ新潟記念を含め7鞍組まれてます。そのレコード欄は18年ぶりに書き換えられるのか。
「そうは破られないと思うぞ」とは長沼さんですが、果たして……。
(美浦・外山勲/日刊ゲンダイ)