あの馬は今こうしている

2015年宝塚記念制覇ラブリーデイ

公開日:2025年6月13日 17:00 更新日:2025年6月13日 17:00

十勝軽種馬農協種馬所で繋養

昨年11月に種牡馬を引退。今年2月に移動

2015年の宝塚記念は、前年の覇者で天皇賞春を勝って駒を進めたゴールドシップが単勝1・9倍と圧倒的な人気を集めたが、ゲートで立ち遅れて嫌なムードでレースが進む。5F通過62秒5のスローな流れの中、2番手と絶好のポジションから抜け出したのがラブリーデイだ。うれしいGⅠ初勝利を上半期のグランプリで決めた。いまどうしているのか。

 2010年1月30日、父キングカメハメハ、母ポップコーンジャズ(父ダンスインザダーク)の間に生まれたラブリーデイは、競馬ファンにおなじみの金子真人ホールディングスの持ち馬。デビューから2連勝し、GⅡ京王杯2歳Sで②着に入り、GⅠ路線を歩むことになるが、その後は重賞だと勝てずに掲示板が精いっぱいだった。

 パッとした成績を残せず迎えた5歳初戦、GⅢ中山金杯で待望の重賞初勝利を飾ると、続くGⅡ京都記念も連勝する。不向きな長距離2戦は落とすも、適距離のGⅢ鳴尾記念をしっかりモノにすると、勇躍GⅠ宝塚記念に向かった。6番人気の低評価を覆すGⅠ初制覇は、デニムアンドルビーを引き連れ、同じ勝負服のワンツーフィニッシュだった。

「アブが出始めたので放牧は朝と夕方の1日2回です」

 この勝利をキッカケに素質を開花させると、秋にはGⅠ天皇賞も制するなど、この年はGⅠ2勝を含む重賞6勝。最優秀4歳以上牡馬のタイトルも獲得し、2017年からブリーダーズ・スタリオン・ステーション(日高町)で種牡馬入りした。初年度は138頭に種付けしたが、その後は右肩下がり。昨年は17頭に減少し、11月に種牡馬を引退していた。

 続報がない中、その後の行方を探すと、同じく北海道幕別町にある十勝軽種馬農協種馬所で繋養されていることが分かった。今年2月に移動したようだ。担当者に話を聞いた。

「今年15歳ですが、馬は元気いっぱいです。去勢後も体調を崩すことがなく、とても落ち着いていてのんびり過ごしていますよ」

 新天地の生活にも慣れて元気なのは何よりだ。現役時代のような調教もなく、種牡馬ならではの種付けもない今、どうやって毎日を過ごしているのか。

「北海道も気温が上がって暑くなってきたので、放牧は気温が低い朝と夕方の1日2回です。気持ちよさそうに走ったり、歩いたりとのんびりしながら、青草をはんでいます。厩舎に戻ると、馬体をチェックして異常がないか調べて、カイバを食べますよ。えぇ、とっても扱いやすい馬です」

 放牧で日中を避けるのは、暑さだけが理由ではないという。

「アブが出るんです。馬がアブに刺されると、噛まれた部位が腫れたり、かゆくなったりします。馬はかゆみを和らげようと、こすったり、噛んだりするため、脱毛や皮膚の肥厚、2次的に細菌感染を引き起こすこともあるのです。アブは黒い色に集まりやすく、黒鹿毛のラブリーデイにはよくありません。厄介なアブの活動時間帯が昼なので、昼を避けて放牧するのです」

 アブは北海道から沖縄まで広く分布するが、幼虫は水中で育つため、川や湖、沼などの水域が重要な生息地になる。成虫になると、長いと数キロも移動して吸血源を探す。そうやってターゲットを見つけると、自身体重の最大2倍もの血を吸い込む過程で、馬には唾液などが体に入ってアレルギー症状を起こすほか、馬伝染性貧血という病気のウイルスに感染することもある。

 この感染症は急な発熱に加えて、最悪の場合、命を落とす。怖い病気だけに、馬産地にとって暑い時季のアブ対策は不可欠なのだ。

 今年は、ほかにも頭を悩ませることがあったという。

「北海道では4月からゴールデンウイークごろにかけて馬インフルエンザが確認され、ようやく落ち着いたところです。帯広のばんえい競馬は1カ月近く中止され、生産や育成などの牧場もとてもナーバスになっていました。どこの牧場もファンをはじめ一般の見学は中止でしたから。今は再開したところが多く、ウチも見学再開しています」

 関係者の絶え間ない努力のおかげで競馬が成り立っていることは、気に留めておいた方がいいだろう。見学希望者は、2日前までに予約を。当日の天気や馬の体調によっては、予約済みでも中止になることもある。

 ラブリーデイのほかには、どんな馬が?

「フサイチソニックも繋養しています。厩舎は隣ですが、放牧地は別。こちらは28歳と高齢ですが、元気ですよ」

 アブにも負けず、暑さにも負けず、2頭ともまだまだ元気でね!

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