亀井記者の血統ロックオン

カムニャックの血のドラマの話は他に任せて、雨馬場のオークスで気になった血と平安Sを勝った希少な種牡馬の話をしよう

公開日:2025年5月27日 07:00 更新日:2025年5月27日 07:00

 オークスを制したカムニャックは祖母がダンスパートナーで95年のオークス馬。この血のドラマについては本紙、月曜発行の紙面や他でも散々書かれているので(笑)、ここではちょっと違った視点から回顧してみたい。

 今年の決着時計は2分25秒7。過去10年では最も遅い時計だった。今年の東京は稍重でもレコード決着があったように、かなり時計が出やすいコンディション。それを思えば良馬場でも雨の影響が残りかなりタフな馬場になっていたと言える。

 カムニャックはブラックタイド産駒。同産駒としてはキタサンブラック以来のGⅠ馬となった。この2頭はともに母の父サクラバクシンオーだから、この配合が相性がいいのだろう。なにより、キタサンブラックは不良の天皇賞・秋を勝ち切っている。父はディープインパクトの全兄だが、ディープよりスタミナとパワーに寄ったタイプだ。

 カムニャックはこの血に加え、祖母の父がエルコンドルパサーで凱旋門賞②着馬。さらにその先にはサドラーズウェルズの血も持っている。この欧州寄りの血が今回の力のいる馬場にマッチしたということ。個人的には適性はあると思っていたが、乗り難しい面があり本紙上の印では▲にした。シュタルケが騎乗してからは3戦3勝。完璧に手の内に入れていたことも大きかった。ともあれ、配合を考えれば晩成型のイメージで秋以降の飛躍が楽しみになる一戦だった。

 桜花賞①②着のエンブロイダリー、アルマヴェローチェは⑨②着。今年もダイワメジャーの血を持つ馬は勝てなかった。頭差②着のアルマは父がハービンジャーと欧州型でこの馬場を苦にしなかったことと、最内枠で好位の内をコースロスなく進めた分、何とか距離はこなした。だが、やはり本質的に二千四百㍍は長いのだと思う。父の産駒は秋華賞との相性も良く、春の悔しさを秋に晴らしたいところ。

 エンブロイダリーは道中で掛かって伸び切れず。鞍上のルメールも「短い距離の方がいいのかも」とレース後に話していたが、やはりダイワメジャーの血を引くマーズ産駒も距離が延びるのは良くないのかもしれない。加えて、マーズ産駒は芝で21勝のうち良馬場で20勝、稍重で1勝。今回のようなタフな馬場も不向きだったのだろう。

 大健闘だったのは10番人気で③着のタガノアビー。父アニマルキングダムにドイツ系のアカテナンゴが入っており、その辺がタフな馬場にマッチしたのか。ただ、アニマルキングダムはケンタッキーダービー、ドバイワールドカップの勝ち馬。母の父がアイルハヴアナザーだからダート寄りの配合で、予想上は完全に無印。きっちり印を回して3連単を的中させた田中記者はお見事だった。

 自身の◎リンクスティップは⑤着。14番手から道中は早めに動いたものの、この馬場ではタフな馬場だけにラストは厳しくなったか。それでも掲示板は確保したわけだから、やはり距離はこのぐらいがいい。キタサンブラック産駒で成長力もあるから、秋での反撃を期待したい。

 今週は同じ舞台でダービーが行われるが、週末も空模様が怪しい。オークス同様の雨の影響が残りそうなら、欧州型の血を持つ馬を中心に狙うのも手かもしれない。

 土曜に京都で行われた平安Sはアウトレンジが昨年の浦和記念に続いて重賞2勝目。JRA重賞は初制覇だ。半兄に昨年のこのレースで②着だったハピがおり兄の雪辱を果たした格好。アウトレンジのひとつ下の弟には3戦3勝のリトルハピもおり、母クイーンパイレーツは非常に仔だしがいい。

 なにより注目すべきはその父。レガーロの産駒は数が少なく、アウトレンジが現在は唯一の現役馬。レガーロはバーナーディニの直子でエーピーインディ系。レガーロ自身がボールドルーラ系を多く持っており、アウトレンジの母クインパイレーツも同馬の血が入っている。配合的にシアトルスルーの4+5×5のインブリードが持っているボールドルーラー系マシマシの配合だ。

 ボールドルーラー系と言えばスピード勝負に強い配合。思えば浦和記念を制した時も稍重だったが、今回も同じく雨の稍重。脚抜きのいい馬場で能力をフルに発揮できたというところか。

 状態に問題がなけば次走は帝王賞とのこと。帝王賞は時期的にも雨での施行も多く、馬場が渋れば面白い存在となってくるか。希少な種牡馬の快進撃はどこまで続くのか。ちなみにレガーロは種付け料20万円(受胎条件) 、30万円(出生条件)。アウトレンジの活躍で種付け頭数が増えてくるのか。カムニャックのようなメジャ―な馬の血のドラマもいいが、レガーロのようなマイナー種牡馬の一発逆転劇もまた興味深い血のドラマだといえる。

亀井辰之介

 競馬好きの父親の影響もあり、子供のころから競馬中継を一緒に観戦。最初は父親が馬券を当てるともらえる臨時の小遣いが目当てだったが(ただし、父は穴党だったため、あまり的中した記憶はない……)、ある日、シンボリルドルフといういかにも強そうな名前の馬が、強く勝つ姿に魅入られたのが競馬ファンになったはじまり。
 その後はテレビゲームの競馬ソフトにどっぷりハマり、今までに遊んできた競馬ゲームは数知れず。その時に競走馬の配合の奥深さを知り、血統に興味を持ったのが今の予想スタイルの根幹か。現在でもたまにゲームをたしなみ、好きだった競走馬の産駒を活躍させることが小さな喜び。
 予想スタイルはもちろん“血統”。各馬の血統を分析。得手、不得手を見極め得意条件に出走する時に狙い撃ち! 好配当を目指します。

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