亀井記者の血統ロックオン

東京の3歳牡牝トライアルで今後も覚えておきたいこの血を内包する馬

公開日:2025年4月29日 07:00 更新日:2025年4月29日 07:06

 東京では3歳牡牝のトライアルが行われた。

 土曜の青葉賞は本番と同じ二千四百㍍芝が舞台。東京といえば、昔からトニービンの血を持つ馬がよく走るのだが、このレースもそう。昨年はドゥラメンテ産駒のシュガークンが制して、今年も同産駒のエネルジコ、ファイアンクランツがワン・ツーという決着。

 勝ったエネルジコは千八で2連勝。今回は一気に600㍍距離が延びたが難なく対応してきた。血統的には母エノラが独オークスの勝ち馬。母の半兄にも独二千二百㍍のGⅡ勝ち馬エジャートンなど、母系はスタミナ勝負に定評のあるドイツ系。ドゥラメンテにドイツ血統といえば、スターズオンアースのように距離延長は全く問題ない配合だ。父と同じセントポーリア賞勝ち馬でもあり本番への期待も高まる。

 ファイアンクランツは今回は勝ち馬に終始マークされた分もあっての②着。ただ、母の父がハーツクライとトニービンの4×4のクロス持ちらしく、東京向きの長くいい脚を使っており、舞台適性はみせた。

 ドゥラメンテは早逝しており、現3歳世代がラストクロップ。産駒はGⅠ13勝を挙げているが、ダービーでは勝ち馬はおろか、いまだ掲示板にも載れていない。ラストチャンスとなる今年、父子ダービー制覇に向けて適性の高い2頭が出てきたのではないだろうか。

 ③着ゲルチュタールは母が7Fで4勝のキラービューティだが、母の半兄がホープフルS勝ちのキラーアビリティ。ブリックスアンドモルタル産駒が距離をこなすこともあって、これぐらいが合っているのだろう。父自身が米国の芝で決め手を生かす競馬を得意としていたように、産駒も直線の長いコース向き。この先も注意はしておきたい一頭

 フローラSは同世代の牝馬重賞で初となる二千㍍戦。結果、①着カムニャック、②着ヴァルキリーバースと、二千㍍で勝ち鞍のある馬がワン・ツーと距離実績が生きた。

 勝ったカムニャックは月曜発行の紙面にもあったように、3代母にオークス馬のダンスパートナーがいるいる血筋。半兄のキープカルムが4勝を挙げているように、やはり質の高い牝系なのだろう。デビュー戦は新潟二千芝で上がり33秒6での差し切り。前2走はマイルで敗れたが、血統的にも中距離以上の広いコースでの末脚勝負が向く。本番でも流れ次第でチャンスはありそう。

 ②着ヴァルキリーバースは未勝利、フリージア賞と二千芝で連勝。エピファネイア×ハーツクライの配合はエフフォーリアを同じだから、こちらも距離が延びていい配合だ。母系は3代母がフェアリードールで近親にはトゥザヴィクトリーやトゥザグローリー、デニムアンドルビーがいる血筋だけに、本格化はこれからとなりそうだが、トニービンの血を持っていることからも東京の中距離戦では要注目の一頭となってくる。

 18番人気で③着と好走したタイセイプランセス。母の父はサドラーズウェルズ系のオーストラリアで、英。愛ダービーの勝ち馬。祖母の父も凱旋門賞などを勝ったディラントーマスで母系は欧州のスタミナ型だ。メンバー最速の上がり33秒0には正直驚いたが、父が東京巧者で産駒も東京で最も勝っているリアルスティールだからその血が騒いだか。

 ちなみに①~④着馬は全てサドラーズウェルズの血を持っており、この距離で同系自慢のスタミナが生きたのだろう。青葉賞のトニービン、フローラSのサドラーズ内包馬は今後も要注目だ。

 京都で行われたマイラーズCはロングランが小倉大賞典に続き重賞連勝を果たした。母の父がグレイソヴリン系のケンダルジャンで長くいい脚を使えるタイプ。初のマイル挑戦だったが、前後半の3Fが35秒0=33秒9とスローなったことで道中に追走に苦しまず、持ち前の決め手を発揮できた。とはいえ、ヴィクトワールピサ産駒は小回り向きのイメージ。産駒の重賞勝ちも9勝のうち千八4勝、二千二百1勝と非根幹距離向きだ。小倉大賞典のような小回りの非根幹距離がベストなのは間違いないだろう。

 最後に香港で行われたクイーンエリザベス2世Cを制したのはタスティエーラ。父サトノクラウンは16年の香港ヴァーズ勝ち馬で父子での香港GⅠ制覇となった。父はトライマイベスト系と非主流系の種牡馬だけに、ダービー、海外GⅠを制した産駒が出たのは価値が高い。

 ちなみに、タスティエーラは母の父マンハッタンカフェだが、ドバイターフでロマンチックウォリアーを破って海外GⅠVを決めたソウルラッシュも母の父マンハッタンカフェ。実はマンハッタンカフェはブルードメアサイアーランキングで23、24年と連続でディープ、キンカメの二大巨頭に続いて3位。出走頭数がディープ、キンカメに比べ半分ぐらいということを考えれば、かなり優秀な数字だということが分かる。

 国内のGⅠ勝利をみてもタスティエーラ=ダービー、ソウルラッシュ=マイルCS、テーオーロイヤル=天皇賞・春、テーオーケインズ=チャンピオンズC、ペプチドナイル=フェブラリーSと芝、ダート、距離を問わずに活躍しており、種牡馬のポテンシャルを引き上げるタイプなのだろう。今週の天皇賞・春には母の父マンハッタンカフェのサンライズアースが出走する。

亀井辰之介

 競馬好きの父親の影響もあり、子供のころから競馬中継を一緒に観戦。最初は父親が馬券を当てるともらえる臨時の小遣いが目当てだったが(ただし、父は穴党だったため、あまり的中した記憶はない……)、ある日、シンボリルドルフといういかにも強そうな名前の馬が、強く勝つ姿に魅入られたのが競馬ファンになったはじまり。
 その後はテレビゲームの競馬ソフトにどっぷりハマり、今までに遊んできた競馬ゲームは数知れず。その時に競走馬の配合の奥深さを知り、血統に興味を持ったのが今の予想スタイルの根幹か。現在でもたまにゲームをたしなみ、好きだった競走馬の産駒を活躍させることが小さな喜び。
 予想スタイルはもちろん“血統”。各馬の血統を分析。得手、不得手を見極め得意条件に出走する時に狙い撃ち! 好配当を目指します。

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