600キロを超える巨漢から400キロを切る小粒まで、競走馬の体重レンジはかなり広くなっています。
それぞれ仕上げの難しさがあるようですが、中山10R幕張Sに担当馬ピックアチェリーを送り出す持ち乗りの町田調教助手は、小さな馬をしっかり整える技術にはかなりのモノを持っているのではないかと個人的に感じています。
21年ダービー卿CT、21、22年とクイーンSを連覇し、重賞3勝と活躍したテルツェットも手がけていましたが、デビュー時は422キロと小さくて可愛らしさを感じられる牝馬。線の細さもあって使い込めないところもありましたが、町田さんの献身的な世話もあって最終的には438キロまで成長しました。
ピックアチェリーも新馬戦は400キロとかなりのミニサイズ。ですが、そこからが小型馬を育てる達人・町田さんの真骨頂。グングンと体を増やして前走は440キロで差し切りV。
“おめでとう”と同時に「ミニを仕上げるの得意だもんね」と冗談めかして言うと「もうミドルですけどね」と笑いながら返してくれるほどたくましくなりました。
中間は放牧に出てリフレッシュした効果もあってか、さらにボリューム感を増して帰厩。
今週水曜の追い切りには自らが手綱を取って最終調整。ウッドで単走ながら6F81秒2―38秒3、1F11秒9とグッと首を下げて小気味いいフットワークで駆け抜けました。
「気分良く無理させず走らせました。しまいも軽く仕掛けた程度でいい反応でしたよ」
ここも末脚一閃、先頭でゴールを切って一気にオープン入りを果たすとみました。
「ベガはベガでもホクトベガ!」
93年エリザベス女王杯でホクトベガが①着でゴールに飛び込んだ瞬間の実況です。当時、浪人生でフラフラしていた自分にとっては衝撃的であり、今でも予想の根底に根付いています。
ベガはバリバリの良血馬で鞍上が武豊。牝馬3冠にリーチをかけていました。対して、ホクトベガは父がダート血統でベテランの加藤和を配したいぶし銀のコンビ。春2冠でベガに大きく後塵を拝したホクトベガに勝ち目はなさそうでしたが、見事にリベンジ。この“逆転劇”こそが競馬の醍醐味ではないでしょうか。
かつて作家の寺山修司氏は「競馬が人生の比喩なのではない、人生が競馬の比喩なのである」と評したそう。馬も人も生きている間はいつかの大逆転を狙っています。雑草でもエリートを超えるチャンスはあるはずと、きょうもトレセンを奔走しています。