「脩さんで勝つことができて、本当によかった」 JBCスプリントで大願成就──。石橋脩、タガノビューティーを信じ続けた5年間
公開日:2024年11月6日 14:00 更新日:2024年11月8日 11:05
中央重賞12戦、地方重賞は7戦目での悲願のV
「脩さんで勝つことができて、本当によかった」
火曜朝、前日のJBCスプリントを制したタガノビューティーは栗東トレセンの馬房にいた。佐賀から東へ約540㌔。長旅を終え、くつろぐ同馬の前で担当の桜井助手から漏れた心の声であった。
7歳秋の悲願は遅くもあったが、嬉しい初タイトルとなった。デビューは今から5年前の2歳夏。8月新潟千八ダートの新馬戦を勝ち、続く、プラタナス賞も制して2連勝。3戦目は芝の朝日杯FSへと挑戦して④着と掲示板に載った。秘めた能力は間違いなく高く、西園正厩舎内でも早期の重賞勝ちを嘱望された一頭でもあった。
ただし、後方から直線に賭けるその競馬スタイルからか、激しい気性からか、オープン特別こそ3勝したが、重賞タイトルにはなかなか手が届かずにいた。かしわ記念での2年連続②着や、武蔵野S連対。強豪相手に上位に食い込む実力はあるのにだ。
月日はたち、中央重賞を12戦、地方重賞は10月の南部杯で6戦目。チャレンジを続けた。
「脩さんで負けたら仕方ないと思っていた」(桜井調教助手)
自身の38戦目が月曜日のJBCスプリント。向正面でまくり気味に進出すると、直線は内チカッパとの一騎打ちを鼻差制し、デビューから5年と55日で大願成就となった。
コンビを組んで29戦。一昨年3月のポラリスS(④着)から19戦連続して手綱を取ってきた主戦の石橋脩にも、悲願の1勝となった。
「うまく乗っていれば、タイトルも取れていたんでしょう。ずっと西園先生、オーナーの理解があって、乗せ続けてくれて、ずっと励ましてくれて、毎日、お世話してくれる(担当の)桜井さんも一生懸命やってくれて、(調教助手の)山本さんも一生懸命に乗ってくれて。すべて感謝しかない。何より、きょうも一生懸命に走ってくれたタガノビューティーにありがとうと思っています。思い残すことがないくらい嬉しいですよ」
1万2千人以上の大観衆を前にしたお立ち台で、主戦は少し時間のかかった重賞勝ちを悔いつつ、少しはにかみながら回顧し、喜びを表した。
桜井助手はこんな話を教えてくれた。
「脩さん(石橋騎手)は毎レース後、〝ああ乗ればよかったかな〟〝うまくなかった〟とか連絡をくれるんですよ。本当に考えてビューティーを引き出そうとしてくれる。先生も毎回、〝脩の好きに乗って来い〟と送り出しますし、ボクもレースはすべて〝脩さんで負けたら仕方ない〟と思っていましたから。本当に嬉しかったですね」
鞍上へのゆるぎない信頼が冒頭のひと言でもあった。長くかかった分、喜びも倍増した涙、涙の1勝ともなった。
今年のGⅠで多い〝コンビ力〟の勝利
現代の競馬において、乗り続けることは難しくもある。ただし、コンビを組み続けたことで成果となって表れることは、今年のGⅠレースで多くみられる。
大阪杯のベラジオオペラ=横山和がそうで、天皇賞・春のテーオーロイヤルと菱田のコンビは人馬の初GⅠ勝ちとなった。ヴィクトリアMのテンハッピーローズも津村は5戦連続での手綱で、日本ダービーはダノンデサイルとベテラン・横山典が大舞台で鮮やかな挽回劇をみせてくれた。
翌週の安田記念、ロマンチックウォリアーとJ・マクドナルドもコンビ6連勝目であった。宝塚記念のブローザホーンと菅原明に、復権なった天皇賞・秋での武豊ドウデュースも同じだろう。コンビを組み、負けて癖、特徴を知りつくしているからこそ、大一番で最大限の力を発揮。魅せる競馬で勝っている。これらの素晴らしい勝利は感動をも呼んだ。
乗り替わりも多い今週のエリザベス女王杯で言えば、シンリョクカと木幡初のコンビがそうであり、レガレイラ=ルメールも同じ。果たして〝コンビ力〟で結果を出すことができるか。
話は戻り、激戦を制したタガノビューティーは本日、放牧へと出た。
次戦をどこに定めるのだろうか。重賞勝ち馬となったビューティーと石橋脩がどんな競馬を見せるか、心待ちにしたい。
(※次戦は来年の根岸S。フェブラリーSへ進む予定となりました)