牝馬3冠は7勝も挙げている国枝厩舎だが、牡馬クラシックに関しては残念ながら〈00320〉で勝ち鞍はない。前3年は出走すらかなわなかった。68歳を迎えた名伯楽も定年まで残りわずか……。
◎バードウォッチャーは久々にクラシック出走を目指せる逸材だ。
新馬戦は後半5Fが加速していくラップ。最後の3Fは11秒6―11秒5―11秒3の中を4角9番手からの差し切りV。エンジンのかかりは遅かったが、点火してからはバネの利いた飛んでいるようなフットワークで、着差以上の強さを見せつけた。
やはり、そのあたりは血統的なものが大きいか。母アパパネは国枝厩舎でGⅠ5勝。産駒は牝馬アカイトリノムスメこそGⅠを勝ったが、兄3頭は計13勝を挙げるものの、重賞勝ちはゼロ。期待値は高いが、気性的な難しさが出世を妨げていた。
その母が14歳の時に出産したのがこのバードウォッチャー。年を重ねて性格が穏やかになったこともあり、この馬は気性的な弱点を感じさせない。
「雰囲気があるよ。GⅠを勝ったお姉ちゃんに似ている。それより上かもしれない。乗っても背中がいいし、バランスも含めて、兄姉と比べて一番かも」とは鈴木助手だ。
前走から中8週。在厩調整になるが、薄く感じた馬体は少し幅が出て、トモにも丸みを帯びてきた。馬体は10キロ増と数字にも見た目にも着実な成長を感じる。
「きゃしゃさがなくなり、ゴツくなった。そして何より、馬からみなぎるパワーや勢いがある。有り余るエネルギーが出ていて、今にもそれが爆発しそう。勝ってもらうのは当然としても、その先、クラシックでやれそうな感触があるからね」
昨年は同じ1戦1勝のソールオリエンスがここを勝って、皐月賞制覇につなげた。今年もここからクラシックを狙う。
馬とは関係のない家庭環境で育った。ただ、母親がゲンダイの愛読者で馬柱は身近な存在に。ナリタブライアンの3冠から本格的にのめり込み、学生時代は競馬場、牧場巡りをしていたら、いつしか本職となっていました。
現場デビューは2000年。若駒の時は取材相手に「おまえが来ると負けるから帰れ!」と怒られながら、勝負の世界でもまれてきました。
途中、半ば強制的に放牧に出され、05年プロ野球の巨人、06年サッカードイツW杯を現地で取材。07年に再入厩してきました。
国枝、木村厩舎などを担当。気が付けば、もう中堅の域で、レースなら4角手前くらいでしょうか。その分、少しずつ人の輪も広がってきたのを実感します。
「馬を見て、関係者に聞いてレースを振り返る」をモットーに最後の直線で見せ場をつくり、いいモノをお届けできればと思います。