「これからも応援し続けます」 JRACMばりにウインマイティーを見守った元担当者達のマーメイドS

公開日:2023年6月20日 15:00 更新日:2023年6月20日 15:15

マーメイドSはアニメーションCMのトレセン版に

 競馬ファンならJRAのCMは、よくご存知だろう。

 芸能人を起用した豪華CMは、今や定番となっている。現在では、昨年より続く「HERO IS COMING.」がそう。

 過去、最高傑作の語り草となっているのは、スローモーションで武豊騎手が芦毛シルバーウルフと人馬一体となり駆ける「最後の10完歩」だろう。また、JRAの本気と言われた渋い「20th Century Boy」や、過去の名馬が一堂に会す「夢の第11レース」。しびれるCMは多かった。

 現在、ブランドCMとして流れるアニメーションもファンの心を掴んでいる。

「今日、わたしの物語が走ります。」

 こんなタイトルがついている。「きょう、あの○○が走ります」から始まり、その○○には、泣き虫、やんちゃ、人見知り、頑固者、親友が入る。それぞれ、生産者、獣医師、育成牧場、装蹄師、担当者。GⅠ舞台に向かう一頭の競走馬に、各々の思いを乗せて見守る関係者たちの目線で描いたものだ。〝泣かす〟CMとして、フルバージョンは競馬ファンの中では、すでに名作の声も高い。

 このサラブレッドと関わった人々との絆を感じさせるアニメCMに似る状況が、一頭の芦毛馬を巡り、栗東トレセンという競馬の最前線であった。馬は、先週のマーメイドSで②着したウインマイティーだ。

 ここでお分かりの方もいるだろう。同馬は、五十嵐忠男厩舎の所属だったが、師の定年により、2月末で厩舎は解散。馬は新天地の西園正厩舎へ。普段から調教をつけていた調教助手、さらに担当者と、それぞれ違う厩舎へ籍を移したことにより、かつての愛馬を近くから見守る形となっていたからだ。まさに、CMのトレセン版──。

「思い入れもあるし、これからもマイティーを応援し続けますよ」(柴田、五十嵐調教助手)

 スランプの苦難を乗り越え、試行錯誤の末に掴んだのが昨年のマーメイドS勝ち。深い愛情で接していた担当者、調教担当者でもあったから、どんな心中だったのだろう。ちょっと聞いてみた。

 2月まで苦楽をともにした元担当の柴田助手(現斉藤崇厩舎)はこう話してくれた。

「競馬を見るとマイティーが走っている。いつも競馬でついていたので不思議な感覚でしたね。一緒に見ていたウチの子供は〝マスク(メンコ)が変わってる〟なんて言っていましたよ。マイティーの頑張っている姿が好きなんですよ。見て泣いてもいました。僕自身も中間、気にならなかったといえば嘘になりますし、攻めて②着と結果が出た。これまでがよかったのだろうか。自分のやり方と自問自答しましたね」

 調教を手がけてきた五十嵐助手は現在、小林厩舎の所属となっている。

「レースはもちろん。自宅で見ていましたよ。直線は〝差せぇー!〟と叫んでいました。やっぱり、力がありますね。走って嬉しい反面、レース後のジョッキーのコメントで〝乗りやすくなっている〟は一番ショックでした(苦笑い)。あれだけ、ハードに乗ってそれは凄いこと。複雑な心境にはなりましたね」

 今回は、人も馬装もカイバも調教パターンも、すべて一新した一戦でもあった。その中で一瞬、連覇に手が届く②着。走っても悩み、走らなくても悩む。あらためて、ホースマンとしての競馬へのアプローチの難しさ、奥深さを知る形にもなったという。

 ただし、最後にある質問をすると、柴田、五十嵐両助手ともに同じ返答があった。

「あらためて、凄い馬だと思います。思い入れがあるし、もちろん、これからもマイティーを応援し続けますよ」

 やはり、愛馬は離れても愛馬なのだ。深い絆を感じる火曜朝の取材となった。

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