9冠牝馬アーモンドアイの真実

【新連載】9冠牝馬アーモンドアイの真実〈1〉(ネットオリジナル)

公開日:2023年1月31日 14:00 更新日:2023年1月31日 21:22

 国内外でGⅠ9勝、獲得賞金19億1526万3900円はともにJRAの記録を更新。牝馬3冠を達成し、年度代表馬は2度も受賞――。
 数々の金字塔を打ち立てて20年に引退した女傑アーモンドアイ。その競走生活に密着取材を続けてきた新居記者が、当時のノートや関係者の証言とともに、輝かしい競走生活の表と裏を紐解いていく。


   ◇   ◇   ◇


「美人とされる顔の目の形」とは馬名の由来だが、ターフの上では涼しい顔で勝利を重ね、わずか3年4カ月の競走生活で日本中のみならず世界中を虜にした。

 愛らしい顔からは想像つかない圧倒的な強さを誇り、牝馬という枠を飛び出し、牡馬をなで斬り、そして世界制覇まで――。走る度に人々を惹きつけ、後輩三冠馬2頭の挑戦を跳ね返した引退レースまで底を見せない、青天井で駆け抜けた。

 美浦トレセンを最後に退厩した際、動画を「日刊ゲンダイ・競馬公式ツイッター」にアップすると、瞬く間に拡散。「ワールドホースレーシング」を介して世界中に配信され、コメントされた。人々に影響を与える、競走馬としては極めて稀有な存在となっていた。

 戦歴だけではない。中89日で桜花賞を勝ったのを筆頭に、従来のトライアルレースという概念を蹴散らし、GⅠだけを12連戦。固定観念を打ち破り、新しい風を吹き込んだパイオニアでもあった。

 管理する国枝調教師は「最初の15-15からモノが違うと感じた」とその素質を見抜き、牧場関係者もまだGⅠを勝つ前の段階で「あの馬は天からの授かりものですから」「今すぐに引退させたいくらい」「繁殖として向こう20年30年、枝葉を広げたい馬」と語るほど特別だった。

 とはいえ、爽やかな旋風を巻き起こした彼女だったが、必ずしも連戦連勝の順風満帆な道を歩んだわけではない。幾度となく、危機が訪れ、陣営の苦労を目の当たりにしていた。取材ノートは膨大な量となり、担当記者として◎を打つのか、非常に悩まされたのを思い出す。

新居哲

新居哲

 馬とは関係のない家庭環境で育った。ただ、母親がゲンダイの愛読者で馬柱は身近な存在に。ナリタブライアンの3冠から本格的にのめり込み、学生時代は競馬場、牧場巡りをしていたら、いつしか本職となっていました。
 現場デビューは2000年。若駒の時は取材相手に「おまえが来ると負けるから帰れ!」と怒られながら、勝負の世界でもまれてきました。
 途中、半ば強制的に放牧に出され、05年プロ野球の巨人、06年サッカードイツW杯を現地で取材。07年に再入厩してきました。
 国枝、木村厩舎などを担当。気が付けば、もう中堅の域で、レースなら4角手前くらいでしょうか。その分、少しずつ人の輪も広がってきたのを実感します。
「馬を見て、関係者に聞いてレースを振り返る」をモットーに最後の直線で見せ場をつくり、いいモノをお届けできればと思います。

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