「事故のため」出走を取り消した関西馬3頭 ファンに知ってほしい当時の状況と今後

公開日:2022年8月11日 15:00 更新日:2022年8月11日 16:26

 先週、土曜の新潟競馬。関西馬3頭の出走取り消しがあったのはご存知だろう。

 2Rシナモンベアー、4Rドンシャーク、7Rヴラマンク。いずれも理由は「事故のため」だった。

 今回の〝事故〟というのが、5日朝、北陸地方で起きたもの。国道8号(福井県南越前町)での土砂崩れが原因で、前記3頭が同乗する1台の馬運車がその土砂崩れで立ち往生。当日中の新潟競馬場への到着は困難と判断され、出走取り消しとなった。

 状況を説明すると、既報のとおり福井県では前日からの記録的な大雨が続いていた。

 実際にJR北陸本線では5日、午前5時6分に敦賀~金沢間の運転見合わせが発表されている(冠水、土砂流入などで敦賀~武生間は10日まで運転取り止め)。

 栗東組の馬運車の出発は2便あり、前半の午前6時発が被害にあった。出発後に、予定していた北陸自動車道の敦賀~今庄IC間が通行止めとなり、その迂回路として選択せざるを得なかったのが国道8号であった。

 前方で土砂崩れが起き、動けずにいる状況で後方でも土砂崩れ。他の車、トラックとともに数十台が進路を断たれ、孤立する状態となった。幸い、先方の他の馬運車は難を逃れ、後続組もUターンから迂回。時間を要したが無事に新潟へ向かえて出走の運びとなっている。唯一、この3頭が乗る馬運車1台のみが災害に巻き込まれる形となったのだ。

 トレセンへの帰路も楽ではなかった。

 県内各所で災害が相次いだことも重なり、復旧には時間を要した。やっと馬運車が動いたのが12時間後。県内の交通網は大変な状況で、一度、富山県へ移動。東海北陸道経由でトレセンへ戻ってきたのが翌朝3時頃だから計21時間。これは栗東から函館へ輸送する時間に匹敵する大変な一日となった。

 早い判断があれば──。そんな声も出るかもしれない。ただし、JRA、競走馬を輸送する各運送会社は逐一、天候、交通状況は把握して、常に最適なルートを選び、輸送している。それほど、急であり想定外の大雨でもあったのだ。

 厩舎スタッフ、運送会社に前記の3頭がいずれも無事だったのが何よりだが、この3頭はすべて3歳未勝利馬だったから痛い。未勝利戦は夏いっぱいで終わる。〝崖っぷち〟間際のアクシデントとなったわけだ。

 また、今回の〝事故〟は1台の馬運車のみ。特例はなく、節間、いわゆる前走からのレース間隔が延びるだけとなった。シナモンベアー、ヴラマンクはひと呼吸おいて小倉へ使うことが決まったが、そのうち、ドンシャークは7月17日の小倉で②着。⑤着以内で得る優先出走権の行使は4節以内で、今週いっぱいなのだ。次週まで待てば、使える保証はなくなる。

「文句を言っても仕方のないこと。幸い、大きな疲れはなかったですからね。今週の小倉で頑張ってもらいます」とは今野師。前走②着と同じ小倉千七ダートに出走する。

 この3頭がアクシデントを乗り越え、限られた時間の中で中央初勝利を掴むことを願うばかりだ。

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