【BCクラシック】ゴールデンテンポでケンタッキーダービーを制したシェリー・ドゥヴォー師ロングインタビュー

公開日:2026年10月30日 14:00 更新日:2026年10月30日 14:00

 日本のフォーエバーヤングが大本命として連覇を狙う今年のBCクラシック。現地の3歳馬で注目されるのがケンタッキーダービー、ベルモントSの2冠を制したゴールデンテンポだ。

 管理するのはケンタッキーダービー史上、初の優勝女性調教師となったシェリー・ドゥヴォー師。BCクラシックに挑むにあたり、ゴールデンテンポのこと、今回の手応えを聞いた。 (取材協力・森航大)

――初めてゴールデンテンポを見た時の印象はいかがでしたか。
 ドゥヴォー調教師 まさに成長途中の馬でした。身体的に成熟するまでにまだかなりの時間を要する、いわゆる“奥手”なタイプだったのです。ただ、精神面に関しては常にプロフェッショナルそのものでした。決して悪さをすることもなく、調教に関しても素直で扱いやすい、実にかっこいい馬でした。

――デビューは2歳12月と一般的な馬に比べて少し遅めでしたが、その理由は何だったのでしょうか?
 ドゥヴォー師 単純に体が大きくなり、競走馬としてのフレームが整うまでに長い時間を要したからです。

――デビュー戦は6F(千二)でした。現在の長距離での活躍を考えると短く感じられますが、どのような意図があったのでしょうか?
 ドゥヴォー師 アメリカではダート馬をまずは短い距離から始動させることがよくあります。まずはレース経験を積ませ、コンディションを整えながら、今後のより長い距離に向けた土台をつくっていくという狙いです。

――デビュー勝ちの後、すぐに重賞へとステップアップしました。早い段階から彼の非凡な才能を確信していたからこその強気な選択だったのでしょうか?
 ドゥヴォー師 重賞へ直行する自信を与えてくれた理由のひとつは、彼にとって適性距離とは言えない距離のデビュー戦を勝利で飾ったという事実です。これはまさに、彼が持っている天性の素質だけで成し遂げたものでした。また、精神的にも非常にプロフェッショナルであり、その精神力の高さは最高峰の競走馬を目指す上で、他のどんな要素とも同等に重要なポイントでした。

――その初期の段階で、ホセ・オルティス騎手とはどのような話をされていましたか? 当時からすでにケンタッキーダービーなどのクラシック路線を意識していたのでしょうか?
 ドゥヴォー師 ダービーへ向けた前哨戦のプロセスを通じて、私たちは密に連携を取っていました。ホセ(オルティス騎手)は朝の追い切りや実際のレースの中で、ゴールデンテンポがどれほど成長や進歩しているかについて、多くの貴重な手応えや感触を与えてくれました。

――ルイジアナダービーで③着となった際、日本のファンには「距離が延びればさらに威力を発揮するのではないか」という印象を与えました。調教師ご自身は、長距離でのパフォーマンスと可能性をどのように捉えていましたか?
 ドゥヴォー師 それはまさに、チーム内でかわしていた会話そのものでした。ダービーに向かう中で彼がステップアップを続けている限り、距離をきっと気に入るはずだと確信して、ケンタッキーダービーに挑戦するつもりでいました。

――調教師の視点から見て、ゴールデンテンポの一番の強みや武器は何だと考えていますか?
 ドゥヴォー師 あらためて言いますが、彼の持つ気性と精神的なタフさ、メンタルの強さです。優れた才能を持ちながらも精神面が追いつかず、パドックの混雑で落ち着けない、本馬場入場で物見をしてしまう、などの要因でレース展開が思惑通りにいかないなど、アクシデントによって力を発揮できない馬はたくさんいます。しかし、あの大狂乱のケンタッキーダービーの雰囲気に置かれても、彼は一切動じることがありませんでした。

――ケンタッキーダービーやベルモントSで見せた強烈な差し脚は、もともと思い描いていた勝利の方程式(狙い通りの展開)だったのでしょうか?
 ドゥヴォー師 彼の最大の武器である揺るぎない精神力があったからこそ、どのような展開やポジションになってもあわてることなく、レース終盤で鋭い脚を伸ばすあのパフォーマンスを再現することができました。あらゆるプレッシャーや大舞台の混乱の中でも、自分の走りに集中できるメンタルこそが、彼のあの勝負強さを支えています。

――3歳春のクラシック戦線の中で、最も著しい成長や馬体の変化を感じた部分はどこですか?
 ドゥヴォー師 馬体が本格的に開花しました。前哨戦の時期は全体的にかなり重苦しい体つきをしていたのですが、ダービーに向けて素晴らしい馬体へと変わり始め、ベルモントSに向かう頃にはこれまでで最高の仕上がりになっていました。

――プリークネスSを回避し、ベルモントS一本に絞った最大の理由は何ですか? 当時は「馬の健康と将来を最優先した」とおっしゃっていましたが。
 ドゥヴォー師 ゴールデンテンポはごく短い期間の間に非常に多くのことをこなしてきた馬です。単にクラシックのタイトルだけでなく、彼の1年間のシーズン全体を見据えた時、中1週で再びレースに挑むことは決してプラスにはならないと判断しました。

――夏はトラヴァーズSを選ばれましたが、レースに向けた状態や体調はいかがでしたか?
 ドゥヴォー師 状態自体は素晴らしかったです。軽度の肺炎にかかってしまい、トレーニングが一時中断するトラブルはありましたが、そこから素早く持ち直し、レースに向けて非常に良い状態で臨むことができました。

――ブリーダーズCクラシックでは、初めて古馬の一線級と対戦することになります。この戦いに向けた手応えや見通しをお聞かせください。
 ドゥヴォー師 ゴールデンテンポはさらにパフォーマンスを引き上げる必要がありますが、それは彼のキャリア全体を通じて常に求められてきたことです。現在の調教の動きを見る限り、彼にはもう一段階大きな成長を果たす力があると感じさせてくれています。

――ライバルとなる日本のフォーエバーヤングをどのように評価していますか?
 ドゥヴォー師 フォーエバーヤングは打ち負かすべき本命であり、世界最高峰の競走馬の一頭として心からリスペクトしています。

――今年のブリーダーズCの舞台はキーンランドです。このコースの特徴や求められる要素をどう捉えていますか?
 ドゥヴォー師 キーンランドは非常にフェアなコースです。私たちにとって幸運なのは、ここ(キーンランド)を年間通じた拠点にしているということです。ここはダービーやベルモントSへ向けた調整を行ってきた場所でもあり、何より輸送を挟まず、自分の馬房からそのままレースに出走できるアドバンテージに勝るものはありません。

――キーンランドのコースや馬場に対する適性は?
 ドゥヴォー師 実戦ではこのコースを走ったことこそありませんが、ここで何度も追い切りを重ねており、馬場への対処も完璧にこなしています。

――今年は競馬界において女性の目覚ましい躍進と成果が目立ちました。競馬産業における女性の活躍の重要性についてのご意見と、女性ファンへのメッセージをお願いします。
 ドゥヴォー師 ダイバーシティー&インクルージョン(多様な人がいることと、その一人一人が尊重され活躍できること)の観点から非常に重要なことです。競馬においては馬たちがアスリートであり、私たちは彼らのコーチであると考えています。そこに性別による差を生む要素は何ひとつないはずです。私がひとつの実例となることで、より多くの女性が自身の調教活動への挑戦や、一見ハードルに見える課題に対して勇気を持って一歩を踏み出すきっかけになれればと願っています。

――最後に日本の競馬ファンへメッセージをお願いします。
 ドゥヴォー師 温かい応援に心から感謝申し上げます。日本の皆さんが示してくださる熱狂と興奮を目にすることができ、本当にうれしく思っています。アメリカのファンも、日本の皆さんのような情熱を見習ってほしいと思うほどです!

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