田辺、高野の競馬学校18期生が生んだ四半世紀を超える新潟での〝奇跡的な初勝利〟──。
公開日:2026年8月18日 15:50 更新日:2026年8月18日 15:55
オークス、宝塚記念に夏競馬もドラマチック競馬
筋書きのないドラマ──。競馬はこう例えられるが、やはり人々を魅了する。
今年の春も多くあった。オークスでは、今村聖奈がJRA女性騎手としてクラシック初騎乗初制覇の快挙を達成した。ジョッキーカメラが拾った馬上での「やっとジョッキーになれた」は多くの心を揺さぶった。
また、宝塚記念では〝天の采配〟が明暗を分けた。レース発走10数分前のゲリラ豪雨で一気に良から重馬場へ。ここでゴールドシップ産駒のメイショウタバルが連覇を決め、武豊は「天国から松本会長が降らせてくれたのかな」と感謝し、天候急変も含めてのちに語られるGⅠレースとなっている。
夏競馬も続く。CBC賞ではデビュー15年目の中井裕二がフロムダスクで初重賞V。苦しかった胸の内や感謝を感情溢れる勝利インタビューで明かし、競馬ファンをウルッとさせた。
先週、中京のこんな一例もドラマだろう。話題となった「競走取りやめ」「競走分割」。本来、行われる予定であった2歳未勝利戦が5頭の出走頭数に満たず、競走とりやめに。多頭数の3歳未勝利戦が分割競走として分割B、分割Aのふた鞍へと増えたことで、通常のフルゲートなら自ブロック制度で除外となったはずの関東馬ヤマニンアレシスが出走でき、勝利を収めている。
2002年にデビューした2人の同期ジョッキー
先週は、新潟に場所を移せばNST賞でもレース後のウイナーズサークルで歓喜の姿《写真》があった。
前川厩舎ワイワイレジェンドが勝利を挙げた一戦だが、その鞍上は田辺裕信。片や、同馬を担当していたのが調教助手の高野容輔だった。「こうの」の読みでピンと来る方も多いだろう。
元JRAジョッキーであり、08年マーメイドS(トーホウシャイン)、10年中山グランドJ(メルシーモンサン)の勝利を含む平地36勝、障害14勝を挙げている。10年に騎手を引退。調教助手としてレースに馬を送り出す側へと回っている。
実は、2人は同じ競馬学校18期性。2002年に騎手としてデビューし、活躍した間柄でもあった。
それだけではなく、高野は騎手を引退して調教助手へと転向。長く務めた調教専門の〝攻め専〟から、前川厩舎で自身が馬の世話をする〝一頭持ち乗り〟へ。直に担当する愛馬のJRA初めての1勝が同期・田辺でもあったのだ。知り合ってから四半世紀以上もたつ、〝奇跡的な初勝利〟だから驚く。
「自分の馬に同期が乗るということがまず凄くて。同期の中で平場で乗っているのは田辺だけ(五十嵐雄、黒岩は障害)ですからね。勝ったから、やはり嬉しかったですよ」
こう高野は、2日前の勝利を振り返る。
〝ジョッキー田辺〟を知る1勝に「だから、競馬は面白い」(高野調教助手)
「競馬学校の時の知っている田辺と、ジョッキー田辺と全然違って。実はジョッキー時代に一緒に乗ることが少なく、その印象があまりないんですよ。調教助手になってからも競馬場で会話する程度。競馬学校時のお調子者の田辺しか知らなくて(笑い)。
でも、レース前の馬上から〝ハナを切れなくても、馬のリズムを崩さなかったらいけると思う。無理矢理、ハナに行っても苦しくなってもやめているから。ポジション重視でなく、馬のリズム、気持ち優先で乗ろうかな〟と言ってくれて。VTRを見て、初めて乗る少し難しさもあるワイワイを随分と下調べしてくれていました。さすが、数もGⅠも勝っているな、と〝ジョッキー田辺〟を感じましたね。勝ってホッとしましたし、凄く嬉しかったです」
レースは逃げたジョーローリット(③着)を見る2列目の外。4角を回って早めに交わしに行く、持ち味を生かす鮮やかな先行抜け出し。騎手歴25年目、ベテランの域に達した田辺の妙技。そこから生まれた2人の笑顔でもあった。
「だから、競馬は面白い」
高野が最近、好きな言葉だという。
競馬に携わる立場が違えば、様々な面白さがある。これが好きなんだと話す。実際に、1勝を求め、日々、努力し続けたことが、今回のような奇跡的な巡り合わせを生んだのかもしれない。
夏競馬も残り2週となったが、まだまだ、このような話が生まれてくるはずだ。人馬の懸命な姿から紡がれる名シーン、ドラマに期待したい。

























