天皇賞は①着マスカレードボール、②着ミュージアムマイルと3歳馬のワン・ツー。宝塚記念を前半千㍍59秒1で逃げたメイショウタバルが出走していたため、まさか前半の千㍍が1分2秒0のスローになるとは思っていなかったが、逆に上がりの勝負になった分、56㌔と斤量のが軽かったことも有利に働いたか。
血統面でこの2頭の共通点はトニービンの血をもっていること。言わずと知れた東京巧者の血で天皇賞・秋は5年連続でトニービン内包馬での勝利となった。
トニービンを持つ馬は一瞬の切れというより長くいい脚を使う馬が多い。そのため直線の長いコースで持ち味を発揮する。実際、今回のレース後に「長くいい脚を使うことは分かっていましただ、切れを発揮できるかどうか分からなかった」(ルメール)、「切れるというよりはジワジワよ加速するのに時間がかかるタイプ」(C・デムーロ)と両馬のジョッキーは似たようなコメントを残している。道中で一気に加速できるタイプではないから、結果的にスローで楽に中団のポジションを取れたこともいい方向に出たのだろう。
加えて、勝ったマスカレードは母の父がディープインパクトでサンデーサイレンスの3×3のクロス持ち。ミュージアムもサンデーの4×3とともに瞬発力を増幅させるクロスを持っていた。
11番人気で⑤着と唯一2ケタ人気で掲示板を確保したアーバンシックも父スワーヴリチャードがSS系のハーツクライでトニービン内包馬。祖母の父がダンスインザダークでサンデーの3×4のクロス持っていた。この配合の馬は出走した3頭がすべて上位に来ていただけに、東京向きのトニービン+SSクロスの決め手が生きたということ。ちなみに、同じトニービン持ちで昨年③着のホウオウビスケッツは⑪着。こちらは父がマインドユアビスケットでサンデーのクロスを持っていない。前記3頭よりも持続力型の傾向が強い配合。スロー上がり勝負になった分、瞬発力が物足りなかったということだろう。
マスカレードボールは今後はもちろん、引退後も楽しみな血統
①着マスカレードボールはドゥラメンテ産駒。先週のエネルジコに続くGⅠ制覇となった。祖母に重賞3勝のビハインドザマスクがいる良血馬。過去ドゥラメンテ産駒の牡馬でGⅠを制した馬は6頭いたが、ディープインパクトの血を引くのは同馬が初めて。父が持つキンカメ、サンデー、トニービン、ノーザンテーストのにディープの血も入ったまさに日本競馬を象徴するような配合だ。
ここまでドゥラメンテ産駒の牡馬は菊花賞馬3頭に、NHKマイルC、スプリンターズC勝ち馬がいるが、王道の古馬中距離路線でのGⅠ勝ちというのも魅力。自身がサンデーの3×3、ミスプロの4×4、ヘイローの4×4のクロスを持っているため配合相手は選ぶだろうが、後継種牡馬という観点から見れば価値は高い。母系が晩成傾向のある血筋だけに、今後の活躍はもちろん、引退したその先も楽しみになるGⅠ初制覇となった。
②着ミュージアムマイルは勝ち馬と同じトニービン+サンデーのクロス持ちでも、母系を遡るとハイペリオンの血を多く持っており、勝ち馬よりは小回り向きの配合。ここまで4勝のうち中山2勝、阪神内回りで1勝なのもその影響が出ているのだろう。それでいて勝ち馬と0秒1差なら負けて強しの内容といっていい。
③着は前2年②④着のジャスティンパレス。ディープ産駒で瞬発力勝負に向く配合。近走は流れも合わずに力を出し切れなかったが、今回は展開もこの馬に向いた。まだまだ力に衰えは感じられないので、流れ次第ではやれていい。
シランケドがメンバー最速の上がり31秒7で④着。晩成型デクラレーションオブウォー産駒で母の父がディープインパクト。今回の流れで4角14番手では厳しかった。この脚質だけに今後も展開に左右される面は否めないが、遅咲きの切れ者が完全に軌道の乗ってきた。条件がさえはまればGⅠでもまとめて差し切れるだけの力はあると見ている。
今年も米国快速血統が穴メーカーになったファンタジーS
土曜京都では2歳重賞ののファンタジーSが行われた。2歳重賞でも前週に行われたアルテミスSは東京マイルで瞬発力向きの馬が強いのに対し、こちらは7F戦でスピード勝負に強い米国型が活躍する傾向にある。とくにストームキャットやミスタープロスペクターの血を持つ馬は要注意のレースだ。
勝ったフェスティバルヒルは父サートゥルナーリアがロードカナロアの直子ででミスプロとストームキャットの血をともにもっている。ただ、カナロアの血を引く割には産駒はやや中距離寄り。前2走のマイルからの距離短縮がどうかと思ったが、ラストは33秒1での差し切り。かえってこの距離がいい方に出たか。ミュージアムマイルの半妹だが中距離型の兄よりはやや距離レンジは短くマイル前後を中心に活躍しそう。
②着ショウナンカリスは10番人気と人気はなかったが、父リアルスティールがストームキャット持ち。母ロシアンサモワールがミスプロ系同士の配合で母の父もストームキャット内包馬。血統的にこのレースにドンピシャの配合だっただけにこの好走にも納得がいく。もともと波乱の傾向があるレ―スでもあり、今後このレースではストームキャット、ミスプロの内包馬は人気薄でも狙っていきたい。



























