9月12日。私は人生初の園田競馬場にいました。お目当ての馬が出走するという大義名分があり、そして個人的にはもうひとつ大きな理由があっての遠征です。
その日の園田はこの夏最後の暑さを絞り出すような熱気で、陽の当たる場所を歩くにはかなりの勇気が必要なほど。一生懸命走る馬や騎手には頭が上がらないような、なんとなく申し訳ない気持ちのまま、クーラーがガンガン効いた室内で馬券を楽しみました。
さて、そのもうひとつの理由というのはこの方に会うため。今年冬に一度このコーナーにもご登場いただいた井関隼さんです。
あれから約半年。またすぐに取材させてもらったのは井関さんの肩書きが増えたから。井関さんといえば、フリーの産婦人科医という立場でありながら、実況オタク、そしてスターターオタクでもあり、こと実況に関しては小さい頃から実況アナウンサーになることを夢見て、いまだに練習を続けているという方です。
家ではテレビの前で。競馬場では一般のスタンドで。もしかしたら見たことがあるという方もいるかもしれません。そして時には白い目で見られながらも実況の練習は続きました。一緒に行った子どもからも引かれるほど。
今回再登場をお願いしたのはこのレース名に表れています。9月30日ばんえい競馬の第2レース。協賛レースとしてのタイトルは「井関アナ・園田実況頑張れ記念」。
話は22年12月に遡ります。東京・新橋で井関さんはもともと親交のある三宅きみひとさんと一緒にいました。三宅さんは有限会社ダート・プロダクション(以下ダート・プロ)の取締役社長です。
ダート・プロとは兵庫県競馬(園田、姫路)の実況を担当するプロダクション。そして三宅さんは現役の実況アナウンサーでもあります。そこでこんな話が出たそうです。「一緒に仕事しない?」と。井関さんは「競馬の仕事のフォローアップとか何かお手伝いできることあればやりますよ」と返答。すると三宅さんは「いや、実況だよ。実況に決まってるじゃない」。不意を突かれて思わず涙してしまった井関さん。
実は前回登場いただいた時もこのような話は伺っており、しかしまだはっきりしたわけではないこと、もしこれが実現したらまたぜひ取材させてほしいなと思ってはいたのです。
この7月、井関さんからメールが届きました。
(続きは10月2日に更新)
競馬キャスター
テレビ東京の「土曜競馬中継」などでリポーターを務め、競馬サークルに幅広い人脈をもつ。YouTubeの「日刊ゲンダイ競馬予想」で武田、大谷記者とともに出演。また、毎週水曜には「目黒貴子のアツアツ交遊録」を連載中。