【日本ダービー】シックスペンスすべての面で成長

公開日:2024年5月22日 14:00 更新日:2024年5月22日 14:00

 デビューからの3連勝を決めたスプリングS後は放牧を挟んで、クラシック1冠目の皐月賞をパス。世代の頂点を狙うこの日本ダービー一本に絞ってきた。

 2歳9月のデビューから12月、3歳3月と適度に間隔をあけて、成長を妨げるような無理遣いをしなかった効果が今回も表れている。

 5月1日に帰厩して、翌日から登坂。体高、胴が伸びて、スラリと洗練された馬体になってきた。

 初時計は5日のウッドで4F56秒7―40秒7、1F12秒4。そして、本格的な追い切りは2週前の5F64秒6―35秒6。ラスト2Fは11秒3―11秒5と先行馬を瞬時に追い抜いて、鞍上が手綱を緩めたほど。前走時に見受けられた反応の鈍さ、モタモタするところは解消され、確かな成長を見せていた。

 それは1週前も同じ。5F63秒8―35秒0と前週よりも時計を詰め、最後の2Fも11秒2―11秒3と、雨の降る重い馬場をはねのける快走。この時点で仕上がっているとの判断だ。

 最終追いは坂路で息を整えるのと、初コンビを組む川田に感触を掴んでもらうのが狙い。

 前2頭を追い掛け、楽な形で4F52秒2―12秒1をマーク。最終的には併走馬に併入、1馬身先着した。素軽く、パワフルな走りは着実にすべての面で前走時より一段階上がってきた。

 馬体は丸みを帯び、筋肉が盛り上がり、それでいてテンションも変に高ぶることはない。

 大一番に向けて、最高潮の仕上がりだ。

「ポテンシャルの高さを感じます」(川田騎手)

〇…「さすが川田君だったな。馬を手の内に入れて、キチッと走れていた」とは国枝調教師だ。内容についても「前2週でやっていたので、坂路でやりすぎず、軽すぎず、というもの。スッと動けていたし、1F12秒1ならちょうどいいね」と笑顔を見せた。また騎乗した川田も「ポテンシャルの高さを感じます。先生、国枝厩舎にダービーの称号を届けたいです」と。

国枝師悲願のダービー制覇へ

 今年のダービー出走馬の中には3戦無敗馬が2頭いる。一頭は皐月賞馬ジャスティンミラノ。もう一頭がスプリングS馬シックスペンスだ。

 管理するのは国枝師。JRAで通算1075勝を挙げて、現役トレーナーの中で唯一の1000勝超えを果たしている。

 そんな名伯楽の異名は“牝馬の国枝”。10年にアパパネ、18年にはアーモンドアイで牝馬3冠を達成。他にも近年ではカレンブーケドールや、アカイトリノムスメなど。また、今年の桜花賞を制したステレンボッシュも師の管理馬だ。

 実際、牝馬でのGⅠ勝利数は17(JRAのみ)にもなる。面白いのは牝馬でのGⅢ勝ちはわずかに8、GⅡにいたっては1勝のみ。GⅡ、GⅢの勝利数の合計の倍近く、GⅠを制しているのだ。

 では、牡馬はどうか。GⅢ18勝、GⅡ16勝で、GⅠは5勝。GⅠ勝ちも決して少なくはないが、牝馬に比べるとどうしても少なく感じてしまう。

 その5つのタイトルは順に99年スプリンターズS、01年安田記念=ブラックホーク、07年有馬記念=マツリダゴッホ、09年天皇賞・春=マイネルキッツ、14年朝日杯フューチュリティS=ダノンプラチナ。不思議と牡馬では3歳クラシックに縁がない。

 皐月賞は6頭が出走して13年カミノタサハラの④着、菊花賞は7頭で20年サトノフラッグの③着が最高着順。

 そしてダービーも過去9頭の出走で、18年コズミックフォースの③着が最高着順となっている。

 だが、あらためて振り返ると皐月賞、ダービー、菊花賞で1番人気だったケースはゼロ。2番人気も20年皐月賞=サトノフラッグ、21年ダービー=サトノレイナスの2頭だけ(ともに⑤着)。前記のサトノレイナスは牝馬で、牡馬でクラシックを意識できる馬は意外なほど少なかったのだ。

 だが、今年のシックスペンスは違う。GⅡ勝ちを含めて3戦無敗という成績。まだ底を見せていない魅力がある。

 1955年4月生まれの国枝師は現在、69歳。もう、クラシックは来年が最後だから、是が非でも残された少ないチャンスをモノにしたいところだろう。

 近年、同じく名伯楽と呼ばれながら、ダービーにはなかなか手が届かなかった方が2人いる。

 橋口弘次郎師はダンスインザダーク、ハーツクライなどで惜敗。なかなか届かなかったタイトルを14年にワンアンドオンリーでかなえた。師が68歳の時である。

 また、国枝師と仲がいいあの藤沢和雄師がダービートレーナーとなったのも65歳の時。17年のレイデオロである。

 ならば、国枝師も……。「まだ来年もある」とは言っていられない。今回の大きなチャンスをモノにしたいに違いない。

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