JRA史上初の調教助手から障害騎手へ転身 坂口智康助手を直撃
公開日:2024年2月20日 14:00 更新日:2024年2月20日 14:00
2月6日午前10時に発表された新規騎手試験の合格者。競馬学校の騎手候補生とともに現役の調教助手の名前があった。
坂口智康(さかぐち・ともやす)。美浦の尾形和厩舎に所属している33歳。トレセンで働く、現役助手からの転身は史上初のこと。3月から新たなチャレンジに挑むオールドルーキーにその経緯、心境を聞いてみた――。
「障害の騎手不足を少しでも補いたい。障害を盛り上げて、売り上げやJRAに貢献したい」
――合格おめでとうございます。
「ありがとうございます。無事に結果が出て、ホッとしています」
――簡単な挑戦ではなかったと思います。その経緯を教えてください。
「中学の時に騎手を目指したのですが、目が悪く、受験資格を満たすことができませんでした。その後、高校から馬に乗り、大学を卒業する際にJRAの総合職の試験にも挑みました。競馬学校の教官になりたかったのですが、残念ながらその夢は断たれてしまいました」
――専修大学を卒業後は牧場に勤めたんですよね。
「ええ、坂東牧場に3年ほどお世話になりました。生産から育成まで幅広く経験させてもらいました。そして、16年1月に競馬学校の厩務員課程に入学して、9月から美浦で働き始めました。攻め専門の調教助手として、ここまでやってきました」
――そこから、騎手試験を受けようとなったのはどうしてでしょうか。
「22年に小牧加矢太騎手が合格したことで、受験要綱が大幅に改定していることを初めて知りました。早速、その年に受験をしましたが、さすがに準備不足で一次試験で落ちてしまいました。2度目の挑戦となる今回、合格となりました」
――試験に挑むにあたり、いろいろと大変だったと思います。
「まず肉体のトレーニングとして、パーソナルトレーナーの江崎雅人さんに週1度見てもらい、ジムには週3日通いました。乗る技術は美浦の乗馬苑に週3日、通っていました。そして、一番、大変だったのが筆記試験です。覚えることが本当に難しくて難しくて……」
――騎手としてのスタートラインに立ちました。免許が障害専門ですね。
「障害の騎手不足を少しでも補いたい。障害を盛り上げて、売り上げやJRAに貢献したいと思っています。5年騎乗すれば、平地の受験資格が得られるようですが、そこまでは考えてません」
「1鞍1鞍を大事にして、信頼を築いていきたい」
――他の障害騎手とは?
「挨拶はさせてもらいました。石神さんや五十嵐さんの馬のサポートをしています。自厩舎の障害馬も障害を飛ばしたりして調整しています。伴さんには試験前の段階からいろいろと相談に乗ってもらってます。小倉最終週でデビューできれば」
――初騎乗が近づいてます。
「障害を飛ぶ怖さはないのですが、競馬のスピードで走ってない点には不安があります。助手は追い切りを指示された時計、綺麗な時計を刻むのが仕事ですが、騎手は駆け引きもあります。コースも芝やダートが混合なので、時計感覚が崩れそうですよね。いろいろと迷惑はかけないようにしたいです」
――最後に抱負を。
「トレセンの中で仕事をしていただけに、1勝することの大変さは身に染みています。それだけに、1鞍1鞍を大事にして、信頼を築いていきたいと思います。合格したことで関西の助手からも〝受験内容を教えてほしい〟と連絡をもらいました。レースはもちろん、いろいろな厩舎の調教も乗って、勉強していきたいと思います。騎手で終わるのではなく、後々は調教師となり、世界を目指したいと考えています。応援、よろしくお願い致します。