先週6頭で中山金杯ではエミューも発症──。冬場に増える競走馬の鼻出血

公開日:2024年1月11日 14:00 更新日:2024年1月11日 14:00

3日間競馬で6頭が発症

 2024年のJRA初週は、3日競馬でスタート。東西72鞍が行われた。

 目立ったのがレース中の鼻出血発症だった。JRA発表「開催競馬場・今日の出来事」にも記されているが、6日土曜は中山1Rツクバアプローズに11Rエミュー。京都は8Rテイエムフェロー。日曜は幸いにもいなかったが、月曜には中山で8Rトモジャリア、12Rアーレンダール。京都は6Rショウナンガチ。6頭の発症が確認された。

 競馬ファンならご存知だろう。競走馬の鼻出血は人間の鼻血とは異なる。何かにぶつけ、外的要因での発症は「外傷性鼻出血」で、これが人のそれに近いもの。ただし、レースで発症する鼻出血の大半が「運動性肺出血」と呼ばれるもの。

 字のごとく、肺からの出血で、肺や気管支の血管が破綻。血液が気道をさかのぼり鼻孔から出るもの。明確な発症要因が分からない疾病のひとつでもあるが、運動による急激な血圧の上昇で血管の破綻が起こると考えられている。肺を張り巡る毛細血管は酸素を取り入れ、出る炭酸ガスを排出する機能を持つ。馬は口呼吸ができないため、レース、調教中に発症すれば、極度の酸素不足となり運動機能の低下につながる。失速するのもこのためだ。

 先週も6頭の発症がみられたが、冬場は特に増えると言われ、低気温からの運動での血圧上昇、空気の乾燥による気管粘膜の硬化等があるのではないかと考えられている。ちなみに、レースでの鼻出血が認められた馬は、直後に内視鏡での検査を受け、外傷性か、肺出血によるものかを判別。止血剤を投与し、要安静となる。

 レースで初めて発症した馬は「1カ月間の出走制限」が設けられる。壊れた肺組織を回復させるための期間なのだが、前記テイエムフェローは2度目で「2カ月間の出走制限」となった。

オルフェーヴルは肺出血からのフォワ賞、有馬記念V

 調教師、担当者の毎日のケア、チェックで体調管理されているとはいえ、サラブレッドの鼻出血を前もって防ぐことは難しいとされる。もちろん、呼吸器系や血液循環を良くする効果があるJRA認可済みのサプリメントなどを使用してもだ。

 当然、鼻出血の再発は現役生活を短くする。発症経験のある馬は、「前運動の時間を長くする」「慎重に調教を重ねる」「カロリー過多で太らせないようにする」等々、現場では様々な工夫を凝らしている。あのウオッカも2度の鼻出血があり、ターフを去った。

 また、発症馬が走れないわけではない。第一線で活躍できることを証明したのは、あのオルフェーヴル。連覇を目指した13年宝塚記念の直前に違和感から検査。肺出血を認められて出走を断念したが、3カ月後の仏遠征ではフォワ賞を勝利して凱旋門賞では②着。引退レースの有馬記念では8馬身差で千切るハイパフォーマンスを見せている。

 無事是名馬──。これに尽きるのだが、我々ファンには願うことしかできないのが辛いところだ。

最新記事一覧

  • アクセスランキング
  • 週間