【有馬記念】今年はジャックドール、ソングラインがGⅠ勝ち 今、海外帰りは“買い”
公開日:2023年12月20日 14:00 更新日:2023年12月20日 14:00
輸送や調教技術が向上し、ハンディどころか経験値の上昇に
ドバイ、香港ばかりか、近年はアメリカまで。ここにきて日本馬の海外遠征は以前にも増して活発になってきた。
1990年代半ばくらいまでは海外帰りは“消し”の時代。輸送での消耗が大きく、体調を崩すケースがほとんど。しかし、そもそも海外遠征は決して日本のホースマンにとって身近なことでもなかった。
それを覆したのは昨年2月いっぱいで惜しまれつつ調教師を引退した藤沢和雄師である。
98年に管理馬タイキシャトルが安田記念を勝ったあとに渡仏。見事にジャックルマロワ賞を制してみせた。そして帰国後、3カ月ぶりの出走となるマイルCSを単勝1・3倍の支持に応えて連勝。海外帰りのハンディを克服した。
このレースに出走していたもう一頭の人気馬がシーキングザパール。同じ頃に渡仏し、モーリスドゲスト賞を勝ち、日本調教馬として初の海外GI制覇を成し遂げた牝馬である。
こちらはムーランドロンシャン賞⑤着を経て帰国、マイルCSは⑧着だったが、スプリンターズS(当時は12月)で②着し、その後、渡米。サンタモニカH④着のあと、帰国初戦の高松宮記念(当時は5月)で②着。2回目の“帰国初戦”で結果を出してみせた。
そして2000年代になると、海外遠征も帰国初戦での好走も当たり前になってくる。
02年には前走が香港カップ①着のアグネスデジタルがフェブラリーS勝ち。同年、仏GⅡドラール賞③着からおよそ1カ月半後、ジャパンCダートに出走したのはイーグルカフェ。見事、先頭でゴールを駆け抜けた。これまで帰国初戦は2、3カ月ほどあいていたケースばかりだが、この馬は大幅に短縮してみせた。
今では2カ月ほど間隔があいていれば、十分に出走態勢が整う――。それだけ輸送、調教技術、馬のケアといった部分が格段の進歩を遂げたということか。
今年も大阪杯を逃げ切ったジャックドールが、前走・香港カップ⑦着からの巻き返し。ヴィクトリアマイルをサウジ帰りのソングラインが前走⑩着からの一変で勝利と、もう海外帰りはむしろハンディというより、経験値を上げることにつながっている。
有馬記念では13年オルフェーヴルが凱旋門賞②着から、ここで8馬身差の圧勝劇。19年は10月に豪州GⅠコックスプレート勝ちのリスグラシューが、2カ月弱の間隔で有馬記念を5馬身差圧勝。また、21年には凱旋門賞でシンガリ⑭着のディープボンドがここで②着と巻き返した。
今年の有馬記念で前走が海外だったのはウインマリリン、シャフリヤール、そしてスルーセブンシーズ。中でもスルーセブンは凱旋門賞で見せ場たっぷりの④着。宝塚記念ではイクイノックスの②着に続いている。
1月の中山で条件戦を卒業したこの馬が、暮れの中山で頂点に立つか。
父は09年の勝ち馬ドリームジャーニー。その鞍上を務め、オルフェーヴルの主戦でもあった池添が騎乗するのも心強い。勝てば、前記の09年、オルフェーヴルの11、13年、ブラストワンピースの18年に続き、実に5度目の有馬記念制覇となる。
スルーセブンシーズ 帰国後の状態、中山二千五百について尾関師に聞く
――凱旋門賞を振り返ってください。
尾関調教師 レース前に“フランスならこの馬でもスタートは速い方になるんじゃないか”とジョッキー(ルメール騎手)とかみんなとも話して、いいポジションを取れそうと。ただ、久々の分なのか後手を踏んでしまったし、そのあたりは誤算でしたね。
――それでも見せ場をつくりました。
尾関師 もう1列前で運べれば、結果はもう少し変わってたかも。直線もスムーズに出して長く脚を使いたいところで①③着馬に外からガードされる厳しい状況。それに、脚色や勢いを全体的に見ると、久しぶりに二千四百メートルを使った影響が最後の最後に出たかもしれません。
――その後は。
尾関師 向こうに行ってからはいつも以上にカイバを食べてたので、パンプアップされてすごくいい感じでした。さすがに細くなったけど、ノーザンファーム天栄に戻して思った以上に早く回復してくれたことで有馬記念へ。先週の時点で470キロあります。
――1週前はウッドで6F81秒2―35秒9、1F11秒4。
尾関師 中山のコース形態、コーナリングも考慮してそんなに外を回らず馬場の真ん中くらいを走らせて。(5Fで)63~64秒(実際に64秒1)は出るだろうと思ってしっかりめに追ってイメージ通りですね。二千五百メートルが初めてなので、そこも意識してゴールを過ぎても流しました。
――評価は。
尾関師 スムーズに折り合いもついてしっかり動けてたし、時計も含めて良かったですね。現状で言うことはなく、順調にきてますよ。
――舞台について。
尾関師 こればっかりはやってみないと分からないですね。宝塚記念もゴール板を2回通過して変則的だったけど、距離が延びてどれくらいコントロールできるか。そこらへんはグランプリに強いジョッキー(池添騎手)にお任せ。前回(宝塚記念②着)もテン乗りで好結果を出してくれましたから。