【日本ダービー】青葉賞から史上初のダービー馬は出るのか スキルヴィングと木村師の大きな挑戦

公開日:2023年5月24日 14:00 更新日:2023年5月24日 14:11

 スキルヴィングにとって最大の問題は、これまで青葉賞の勝ち馬からダービー馬が一頭も出ていないことだろう。

 のちにGⅠをいっぱい勝つような02年シンボリクリスエス、03年ゼンノロブロイや、12年フェノーメノはいずれも青葉賞①着→ダービー②着。本番では涙をのんできた。

 中3週と疲れを完全に取るには微妙な間隔なうえに、ダービーに出ることを最優先に考えた時、まずは青葉賞できっちり仕上げて①②着しなければならない。

 また、本番に出られても短期間にタフ、過酷と言われる東京二千四百メートルを3歳春に2度も走らなければならないのだ。この両レースを制するのは想像以上に難しいのではないか。

 青葉賞は「ダービーを勝つためのレースではなく、出るためのレース」とも言える。

 特にスキルヴィングの場合、青葉賞の前走はゆりかもめ賞。ダービーを前に、すでにコースを2回走っている。ゆりかもめ賞から青葉賞まで間があいたのも、このコースの過酷さゆえか。

 1932年に目黒競馬場で東京優駿大競走として始まった日本ダービー。戦前には東京二千三百メートルを経験しているダービー馬もいるが、84年にグレード制が導入されて以降は二千二百メートル経験馬ですら5頭だけ。85年シリウスシンボリ(前走が中山の若葉賞)、96年フサイチコンコルド(前走が阪神のすみれS)、00年アグネスフライト(前々走が阪神の若草S)、04年キングカメハメハ(3走前がすみれS)、13年キズナ(前走が京都新聞杯)がそう。

 07年ウオッカや21年シャフリヤールのように千八までしか経験がないダービー馬がいる一方、二千四百メートルを経験しているダービー馬はいない。

 以前にも二千四百メートルを連勝し、ダービーで人気の一角になったり、伏兵視された馬がいた。

 15年から17年は阪神のアザレア賞、青葉賞を制した馬が出走。15年レーヴミストラルは本番で4番人気ながら⑨着、16年ヴァンキッシュランは6番人気で⑬着、17年アドミラブルは1番人気になったが③着だった。

 昨年のプラダリアは二千四百メートルの未勝利戦を制して青葉賞で連勝を決めたが、ダービーは5番人気で⑤着である。

 スキルヴィングはゆりかもめ賞が2分24秒8。これは3歳2月までにおける史上最速タイム。青葉賞の2分23秒9もレース史上3位の好時計だ。

 能力、距離、コース適性の高さは折り紙付き。しかし、それだけで勝てないのがダービーでもある。

 これまでにない、まさに異例のローテーションでの挑戦。だが、ジンクスや記録は破られるためにあるともいえる。

 木村師は「ゆりかもめ賞を勝った後に、皐月賞を使わず、すぐに青葉賞からダービーというのを思い描きました。自分の中では“青葉賞とダービーは1つ”として捉えて、準備してきています」とこのローテーションを説明。今年も含めて青葉賞は2勝しているが、ダービーは昨年のイクイノックスですら②着だった。

「自分が至らなくて、結果的に青葉賞で終わってしまったり、手いっぱいになったりした過去があります。もちろん、これまで多くのホースマンがチャレンジして、トライ&エラーを繰り返してきたのも理解しています。いろいろと失敗などを積み重ねてきたもの。過去からの脱却というわけではありませんが、新しい扉を開けていきたい。ポジティブな挑戦だと思っています」

 果たして、青葉賞馬から初めてダービー馬は出るのか。まさにスキルヴィングの評価、取捨が今年の最大のキーポイントといえよう。

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