ホースマン直撃

【木津の土曜競馬コラム・ニセコ特別】

公開日:2025年8月22日 17:00 更新日:2025年8月23日 11:01

 東西トレセンのウッドチップコース、坂路は自動計測ですが、各競馬場のタイムはいまだにストップウオッチによる手動計測です。

 手作業なので機械と比べると、どうしても乗り手の体感時計との誤差が出てしまうことがあり、取材の際も「時計が違う」と対象者と噛み合わないケースは避けられません。

 そんな状況でもこれまで一回も時計の乱れを感じさせないのが、土曜札幌12Rに担当馬ハミルトンを出走させる小川調教助手です。

 時計を出す日が多い水曜や土曜の前日に、「最初は15―15で行って、しまい伸ばす予定なのでお願いします」とのオーダー。当日、双眼鏡片手にストップウオッチを押すと道中のラップは前言通り、ほぼ15秒。記憶をたどっても0秒5以上の誤差は今年の夏もありませんでした。

 調教を見学していてしみじみ思うのは、速く走らせるよりも、遅くなだめる方が難しいのではないか、ということ。

 速い時計はフィジカル面や前進気勢が強ければ、おのずと出ることがあります。ですが、本来走りたい動物である馬をゆっくり動かすのは鞍上との信頼関係が下地になければできないように思えるからです。

 担当馬のコンディションを的確に把握して、応じた指示を出すからこそできる技。ゆえに伝えてくれるコメントも的を射ています。

「今回のハミルトンはいいですよ。函館の頃はまだ本調子ではなかったのですが、徐々に良化。札幌へ移動して弾むような走りに戻りました。今度は3走前、勝った時のようなパフォーマンスを見せられそうです。週末の崩れる天気予報も味方になるはずです」

 強気な言葉がポンポン出るのは珍しいこと。ここは達人のオススメに素直に乗って◎です。

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8月23日(土)札幌競馬場

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木津信之

「ベガはベガでもホクトベガ!」
 93年エリザベス女王杯でホクトベガが①着でゴールに飛び込んだ瞬間の実況です。当時、浪人生でフラフラしていた自分にとっては衝撃的であり、今でも予想の根底に根付いています。
 ベガはバリバリの良血馬で鞍上が武豊。牝馬3冠にリーチをかけていました。対して、ホクトベガは父がダート血統でベテランの加藤和を配したいぶし銀のコンビ。春2冠でベガに大きく後塵を拝したホクトベガに勝ち目はなさそうでしたが、見事にリベンジ。この“逆転劇”こそが競馬の醍醐味ではないでしょうか。
 かつて作家の寺山修司氏は「競馬が人生の比喩なのではない、人生が競馬の比喩なのである」と評したそう。馬も人も生きている間はいつかの大逆転を狙っています。雑草でもエリートを超えるチャンスはあるはずと、きょうもトレセンを奔走しています。

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